九話 死闘の戦果
「んぅ、ん」
心地よい感触を感じると共に目が覚めてきた。
「アレス起きたのね」
メリアの声が聞こえてきた。
アレスが声がした方を向くとメリアの顔が目の前にあった。
(!!?)
アレスはプチ混乱した。
メリアの均整のとれた顔と銀髪がとても綺麗だなとアレスは思った。
メリアがアレスのことを膝枕していたのだ。
「メリアか、俺どのくらい寝てた?」
跳ね起きたアレスは何とか平静を取り戻しそう聞き返した。
「三十分くらいだよ」
「そうか」
アレスは起き上がり安堵の息を吐いた。
「アレスって戦っている時はかっこいいけど寝顔は可愛いわね」
メリアは少しからかう口調で言った。
「前半は嬉しいけど後半は全然嬉しくない」
アレスは憮然とした顔で言った。
「それにだ、それを言うならメリアの方が可愛いし綺麗だと思うぞ」
アレスは当たり前のように言った。
「な、何言ってのよ!?わ、私が可愛くて綺麗だなんて」
メリアはアレスに褒められて嬉しやら恥ずかしいやらで混乱した。
「自覚無いのか?、メリアはいろいろ抜けてるな」
「誰だって好きな人に言われたらビックリするわよ!」
メリアは大声で衝撃的なことを言った。
「え?」
アレスは今聞こえた言葉が信じられず、固まった。
「あ…」
「メリア、今のは…」
「えーと、その…」
(この際だから思ってること全部言ってやるわ!)
メリアは勇気を振り絞って覚悟を決めた。
「会って数日で変かもしれないけどアレスは私の剣を認めてくれたし、私の魔法も馬鹿にしなかったそんな人今まで誰も居なかったのそれが嬉しくて気付いたら好きになってたのよ」
メリアは顔を真っ赤にして言った。
「別に変じゃない、俺もメリアの事が好きだからな」
スルリと出た本音を告げたアレスはメリアの紅の眼を見つめた。
「ほ、本当に?」
伺うようにメリアはアレスに聞き返した。
「ああ、剣に一生懸命なメリアも光魔法を使って戦うメリアも全部な、正直なこと言うと初めて会った時から気になってた。今メリアの気持ちを聞いて『あ、俺もだ』って思ったよ」
アレスはそう言って笑みを浮かべた。
「やっぱりアレスはずるいわよ」
メリアは拗ねた口調で言った。
(だって今のアレス一番かっこいいもん)
アレスとメリアの二人が恋人になった場所はお世辞にも場所が良いとは言えなかったが、二人はとても幸せな気持ちになるのだった。
◆◆◆◆
「ということはこれから恋人同士ってことか?」
アレスが地面に刺していた龍星を鞘に仕舞いながら言った。
「う、うん、そうだよ」
メリアは自分で言って恥ずかしくなった。
「恋人になっても俺達は変わらないな」
「恋人をなんだと思ってたのよ」
メリアはそんな事を言うアレスに少し呆れた。
「いや、初めてだからよく分かんなくて」
「それはお互い様よだからこれから知っていけばいいじゃない」
「そうだな」
アレスはメリアの言う事に納得するのだった。
会話しながらアレスとメリアは既に半壊状態の穴から脱出した。
「いろいろあって忘れてたけどなんで二回連続で特級危険種に会ったんだよな」
「確かにね、特級危険種なんてそうそう居ないはずなのにね」
「毎回死にそうなるのはごめんだよ」
「でも確かフレアドレイクの皮はいい魔導服になるはずよ」
「そうなのか?」
思わぬ言葉にアレスはメリアに聞き返した。
「重い防具はアレスの戦い方に合わないし性能がいい魔導服が合うと思うわよ」
魔導服とは魔法的な効果をもつ服のことだ。
ものによっては下手な防具よりは頑丈だが作る者の腕次第で性能は大きく変わる。
「その事も含めてギルドマスターに聞いてみましょう」
「そうだなギルドマスターなら良い職人を知ってるかもな」
「あ、それはそうとフレアドレイクを倒した時にアレスが纏ってたあれは何なの?」
「その事は宿に帰ったら話すよ」
メリアはアレスの言葉に少し疑問を抱きつつ納得するのだった。
「おお、あんた達随分ボロボロだけど大丈夫か?」
鉱山の入口に立つ門番が話しかけてきた。
「ええ、想定外のことはあったけど依頼通りはきちんとこなしたわ」
メリアは美しい笑顔で言った。
「そうか助かったよ、ありがとう」
「気にしないでください、依頼ですから」
そんな会話を門番と交わして俺達はギルドに向かった。
◆◆◆◆
「フレアドレイクを倒した!?」
ギルド上階のギルド長室で俺達の話を聞いたギルドマスターが最初に放った言葉だ。
「ええ、まぁ死ぬかと思いましたけど何とか」
「ホントよアレスがいなかったら死んでたわ」
「お前ら何もんだ?」
ギルドマスターは目を光らせて聞いてきた。
「ただの剣士だ」
「だだの剣士よ」
アレスとメリアは二人して全く同じ答えを返した。
「はぁ、答える気ないってことか」
「いや、本当にただの剣士なんだが…」
俺がそう答えると、
「あのな、確かに冒険者になって四日で特級危険種二体に会う奴も聞いた事無いが、それを倒す奴らが普通な訳ないだろうが」
ギルド長は呆れ気味に言った。
(確かにその通りだな)
俺はギルドマスターの言っていることに納得した。
「私達のことはどうでもいいのよフレアドレイクの皮でアレスの魔導服を作ってくれる職人を紹介してくれないかしら?」
「そういやアレスの坊主の方は防具付けてなかったな」
ギルド長は信じ難いものを見る目でアレスを見た。
「それならこのノイスから東の街道を通り二つの村を越えた先にある鍛治都市ファリスに行くといい」
そう言いながら二つの羊紙皮を出した。
「これは?」
「これはファリスの腕の立つ魔導服職人の紹介状とファリスの冒険者ギルド宛の手紙だ」
「紹介状はともかくこっちの手紙はなんの為なの?」
「ああ、これはファリスのギルド長宛の手紙の配達依頼だよ」
「この手紙を届ければいいの?」
「その通りだ」
「そう言う事なら引き受けるわよ」
メリアが返事をした。
「いいでしょアレス?」
「ファリスに行くからそのついでだしな」
「引き受けてくれて助かるよ」
俺達の次の目的地が決まり少し話をした後、俺達はギルドを後にした。
「ついに私達も銀鉄級かー」
宿の俺の部屋でメリアが受付で貰ったその名の通りのミスリルのカードを見て微笑んでいた。
「冒険者になって一週間も経ってないのにな」
アレスは少し苦笑いして言った。
「まぁ特級危険種に二度も倒した影響もあると思うけどね」
「というかそれが全てだろ」
「まぁそうね、それでアレスが使ったあの力の正体を教えてくれるでしょ?」
「ああ、あれは"龍の加護”の力を使ったんだよ」
アレスはそう告白するのだった。




