イベントで推しキャラの可愛いコスプレイヤーがいたから声をかけたら隣の席の口うるさいけど美人なクラスメイトだった件について
人は死にそうなときに記憶の中から必死に有用な情報を探そうとするそうだ。それが走馬灯の正体らしい。
「赤坂……何でお前がここにいんの?」
「はっ? さっき一緒にご飯しようって言ったら行くって言ったじゃない。私を馬鹿にしてるのかしら。それとも私をからかったの?」
楽しいイベントが終わり後は今回お近づきになった可愛い女の子と食事をするだけというときに俺は地獄へ落とされた。目の前にいるのは俺を嫌っているであろう赤坂だったのだ。しかも俺の言葉が気に入らなかったのか鬼のような目でこちらをにらんでいる。どうしてこうなった……?
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赤坂と俺の関係はどんな関係かというと相性の悪いクラスメイトというのが正しいだろう。
「そこは私の席なのだけどどいてくれるかしら」
「ああ、ごめん、すぐどくね」
「別にあなたは悪くないわ、悪いのは騒ぎすぎている安心院でしょ」
「げ、俺かよ……その、悪かったよ」
昼休みに友人の中村と俺はゲームの話でもりあがっていたのだが、どうやら相当うるさかったようだ。食事を買ってきたらしく、戻ってきた赤坂凜に注意されてしまった。文句を言うと彼女にぎろりと睨まれた。こわっ!! ちょっと気まずくなったので俺達は廊下に移動する事することにした。
「あ、ちょっと……」
「だから悪かったって、ごめんな」
更に追撃するつもりらしき赤坂に軽く謝りさっさと逃げ出す事にした。彼女はなにやら言いたげだったがあきらめたのか食事をはじめたようだ。
「それにしても安心院は赤坂さんに何かやったのか? お前にだけやたらきつくない?」
「なんだろうな……思い当たる事が多すぎてどれが原因なのかわからんぞ」
そもそも彼女と俺の因縁は高校二年に進級してから始まる。俺の名前は安心院真広といい、彼女の名前は赤坂凜という。最初の席は名前順だったため俺は彼女の後ろだった。
残念ながら俺に女子と積極的に話すコミュ力はないのでせいぜい一日二言か三言話すだけだった。そんなわけで仲が良くも悪くもなるはずはないのだが、何の因果か席替えのたびに彼女が隣になるのだ。本当なんでだよ、2回中2回隣とかどんな確立だよって感じだ。
そして自分で言うのもなんだが俺は授業態度はあまり良くない。ゲームのやりすぎともう一つの趣味のためしょっちょう寝不足のため居眠りをするわ、宿題を忘れたり、教科書を忘れたりと色々とやらかしている。そのたびに赤坂には「いびきがうるさい」と起こされたり、教師の命令で教科書をみせてもらったりなど色々と迷惑をかけているのだ。
「悪いやつじゃないんだけどなぁ……まあ嫌われてんだろうな……」
「それ安心院がくそすぎなだけじゃないか……赤坂さん真面目だもんね……」
まあ、なんだかんだ嫌な顔をしながらも教科書とかみせてくれるからな、根が真面目なんだろう。女子バレー部で副キャプテンをやっているらしいし、しかも人望もあるのか女子の後輩に告白されることもあるらしい。まあ、確かに背も高いし、顔立ちもはっきりしているからかっこいいんだよな。そんな真面目な彼女だからこそ不真面目な俺とは相性が悪いのかもしれない。
「そういや、日曜日はイベント行くの? 面白そうなゲームあったら教えてね」
「ああ、俺はそのために生きている!!」
そう、今週末は待ちに待ったゲームのイベントなのだ。この日のために色々準備をしていた。俺は何を隠そうコスプレイヤーなのである。
コスプレに出会いを求めるのは間違いだろうか? 間違いだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! 今日は一年に一回の様々な最新ゲームを楽しむ事ができるイベントである。そしてゲームのコスプレをするコスプレイヤーの交流の場でもある。
俺は更衣室でさっさと着替えてイベントブースを楽しむ事にした。最新鋭のVRゲームにそれぞれの会社の推しのゲームが無料で試遊できるのだ。それに可愛らしい女性のコスプレイヤーさんやかっこいい男性のコスプレイヤーさんもいるでついついはまっているゲームのキャラを見つけ声をかけて交流するのも中々楽しい。
ブースもあらかた回りつくして最後にもう一度回っていると俺が今はまっていてちょうどコスプレをしているゲームのキャラのコスプレイヤーさんがいた。
長身にすらりとした体系にポニーテールで錬金術が得意な人気キャラである。遠目から見ても似合っている。俺は彼女の列に並ぶことにした。
「ねえ、暇だったらこの後一緒にご飯とか行こうよ」
「すいません、そういうのはちょっと……」
おや、なんか雲行きが怪しいな。これはナンパされているのだろうか? それとも知り合いなのだろうか? 俺が迷っていると少女と目が合った。その目はそれはまるで助けを求めているようで……
「ごめん、待たせたねー。こっちでゲーム内アイテムの配布あるってさ。はやくいこうぜ」
「もう、遅いよー、どれくらい待たせるのさ」
だからか普段やらないことをしてしまった。まるでヒロインを助ける主人公のようにとはいかなかったけれど……まあ、コスプレをしていてテンションがあがっていた事もあるだろう。彼女も俺に会話を合わせてくれたのもあり、この子に絡んでいた男は気まずそうに去っていった。
「ありがとう、助かったよ。さっきの人しつこくってさ」
「いやいや、余計な事じゃなくてよかったぜ。せっかくだから写真撮らせてくれない?」
「いいけど……ウチなんかでいいの? 可愛くないし……」
「何言ってるんだ、無茶苦茶似合ってるじゃん。このキャラ可愛いよね」
あまりコスプレの経験がないのかポージングがぎこちなかったがそれがまた、そのキャラの初々しさを表現できていてむしろ良い。しかもキャラになりきっているのか口調もコスプレをしているキャラのままだ。俺は何枚かスマホで写真を撮らせてもらってお礼をいった。
「写真撮らせてもらってありがとう、同じゲームのコスプレイヤーさんにあえて嬉しかったよ」
「そうだね……ウチも君に会えてよかった。もう帰るの?」
「ああ、もう更衣室しまっちゃうからね、急がないと……」
「そうなんだ……あの、このあと暇だったら一緒にご飯食べない? さっきのお礼もしたいし……」
うお、まじか。こんな事が本当におきるとは……もしかして美人局かもしれないと思ったがさっきからの反応をみるかぎりあまりこういうイベントに慣れていないのだろう。本当に同士の友達が欲しいのかもしれない。それにかわいい子とお近づきになれるのならこちらとしても嬉しい。
「こちらこそ、ぜひ!! じゃあ会場出たところのコンビニで待ち合わせよう」
この時どこかで聞いたことのある声だなぁという違和感を無視しなければこんなことにならなかったかもしれない。そして冒頭へと至る。
「でも、まさか赤坂がこんなところにいるとはなー」
「いたら悪いかしら……? それともあなたの許可がいるものなの?」
「さっきとキャラ違いすぎないか、口調も違うじゃん」
「それは……その……キャラになりきった方がいいかなって思ったのよ」
俺の問いに少し恥ずかしそうに頬を赤らめながら赤坂は答えた。いつもこんな感じならかわいいのになぁと思いつつ、こいつキャラの口調が「--ですぞ」とかだったらそれも真似をするのかな? などと思っているとすっごい目で睨まれた。
「なんか失礼な事考えてない?」
「考えてませんよ……」
こわっ!! 人殺しじゃないかという目でこちらをみてくる。彼女の視線に俺は目をそらすことしかできなかった。
俺が声かけた女の子は実は赤坂だったのだが、そのことに事に気づかなかったのが相当頭に来たのか、少しごたごたしたものの俺達は今イベント会場の近くのファミレスで食事をとっていた。
「大体毎日顔合わせてるのに気づかないってなんなのよ」
「いやーだってウィッグかぶってるし、化粧も普段と全然違うんだからしかたないだろ……口調も違ったしな」
「口調の事は忘れて……」
よほど恥ずかしかったのか彼女は顔を真っ赤にしながら手で顔を覆った。しかし、運動部の赤坂がこんなコスプレしたりゲームやってるとは思わなかった。
さっきまでの元気娘といった感じの顔と今のツンとした顔を見比べる。改めてメイクと髪形で全然変わるものだなぁと思う。
「それにしても赤坂もゲームやるんだな。どれくらい進んでるんだ」
「まだ全然よ……ちょっとみてみる? あんたのも見せてよ」
女子の携帯を触ってもいいかと悩んだがあっちから差し出してるのだ問題はないだろう。え、すっげーやりこんでるじゃん。何が全然だよ。下手したら俺より強いじゃねーか。
「え、お前あのボス倒したのかよ、てかストーリーも最新まで進んでるんだな」
「そういうあなたもそこそこやりこんでるわね、え、このアイテムどうやってゲットしたの? 教えなさい」
そう言って俺達はファミレスで盛り上がった。共通の話題があったとはいえ赤坂と話してこんなに盛り上がるとは意外だった。いざ、話してみると真面目だけど結構冗談も通じるやつで、これまでの学校での感じがウソのように楽しかった。俺達は三時間ほど話し込んでしまった。
「今日はありがとー、赤坂結構話せるじゃんか、明日も学校で話そうぜ。あ、それともこの趣味は黙っていたほうがいい?」
「コスプレは黙っていてほしいけど、ゲームのほうはみんなにもしゃべっているから良いわよ。あ、でもゲームやりすぎて授業中寝ないでよ。いびきうるさいんだから」
「はいはい、いつもすいませんでした」
最後にちょっと真面目モードの赤坂に怒られながら俺達は店を出た。でもこれまでと違いそこまで嫌な気はしない。彼女を知る事ができたからだからだろうか。ミディアムヘアーの赤坂を見て俺はふと思った事をつぶやいた。
「今日のコスプレみて思ったけど赤坂ってポニーテール結構似合うんじゃないか? 絶対可愛いと思うぞ」
「はっ!? いきなり可愛いとかなんなのよ、どうせあんたの趣味でしょ」
「あ、ばれた。ポニテ萌なんだよな。今回のキャラもポニテで可愛いいんだよなー」
「なんであんたの趣味にあわせなきゃいけないのよ……」
そういうと赤坂は顔を真っ赤にしながら俺をにらみつけた。いつもどおり口は悪かったが不思議と可愛いなと思った。それはいままで彼女とちゃんと話していなかったからだろう。おそらくこのきつさは彼女なりの照れ隠しなのだ。現にこちらをにらみながらも距離を置くでもなく俺の隣を歩いている。
「別になんでもないさ。そういえばあれ、やってよ、ポーズつけて『サイカワ!!』って」
「はっ? 殺すぞ」
「すいませんでした」
俺はクラスメイトの意外な一面を知った気がして楽しく帰宅するのであった。明日から学校が少し楽しみになるな。
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今日はたくさん安心院と話せた。あいつが行くと言っていたイベントに行って正解だった。私は小躍りしたい気持ちを必死に押さえつけながら帰路についた。
彼の事を好きになったきっかけは今でも覚えている。私はどうも男性より女性に人気があるタイプらしくよく後輩などにかっこいいですね、などと言われるし、チョコだってもらうことが多い。まあ、そういうキャラなのだろう、そんな私だって可愛らしい服を着てみたいときはあるわけで……こっそり通販で買ったフリフリの可愛らしい恰好をして自撮りをするのが趣味だったりするのだ。
ある日、私が自撮りをみてにやにやしているとうっかりスマホを落としてしまったのだが、その時拾ってくれたのが安心院だったのだ。
「こんな格好して似合わないでしょ?」
「そんなことないだろ、赤坂は可愛い服似合うな」
「そんなこと本当は思ってないくせに……いいから、早くスマホ返してよ」
そのくらいでと人は言うかもしれないが、可愛いなんていわれたのは初めてで……だからかそれ以来彼の事を意識するようになってしまったのだ。でも人を好きになったのははじめてでどう接すればいいかなんてわからなかった私はついつっけんどんな態度をとってしまっては後悔するの繰り返しだった。
なんとか仲良くなろうとする私だったが、昨日まで普通にしゃべれたはずなのに不思議としゃべれなくなってしまった。彼が友人と話しているゲームを始めてみたり、友達に協力してもらって席替えのくじを交換してもらったりなど色々努力はしたのだが、素直にしゃべれないのだから意味はなかった。結果的には安心院がはまっていたゲームに、私もすっかりはまってしまい趣味が一つ増えただけではあった。
だからというわけではないが彼が行くと言っていたイベントで彼もコスプレをするらしいし、共通の話題が増えると思い私もコスプレをする事にしたのだ。元々可愛い衣装には興味があったし、それにキャラになりきれば素直にしゃべれると思って……
結果は大成功だった。変な人に絡まれたときはどうしようと思っていたが助けてくれたのが彼で本当によかった。そのままの勢いで食事に誘えたのもゲームのキャラになりきっていたときの勢いだ。
食事のときはコスプレをしてなかったのでいつものように素直にはなれなかったが、ゲームの話で盛り上がったおかげか、私がいつものようにきつい事をいっても彼は笑いながら流してくれるようになった。これなら学校でも少しは素直になれるかしら……でも、これだけではだめだと思う。だから私ももう一歩がんばってみようと思う。
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「赤坂おはよー」
学校に登校した俺は赤坂に挨拶をする。いつもにはない行動に一瞬クラスがざわっとする。俺と赤坂が仲悪いというのは有名だからな。赤坂も間の抜けた顔でこちらをみていたが、なぜか俺から目をさらして蚊のなくような声で挨拶を返してきた。
「お、おはよー」
昨日あんなに話したのになぁと俺は苦笑した。赤坂はなにかをアピールするかのように頭を振った。すると彼女の後頭部に長さが足りないため、もうしわけない程度に結ばれているポニーテールが震えながら存在をアピールしていた。
「その髪型似合っているぞ、可愛いじゃん」
「べつにあんたのためじゃないんだからね」
「知ってるよ、それよりさ。今日は昼休み一緒にマルチバトルやらない? 中村もさそって三人ならクリアできると思うんだよね」
「いいわよ、私もやりたかったし。でも足をひっぱたら怒るからね」
そういって俺達は談笑を続けた。赤坂の笑顔は可愛いなっていうのが昨日からの発見だ。これまでは口論ばかりだったからな。俺は新しい友人との会話を楽しむことにした。
ツンデレヒロインしかかけないのまずいなと思いちょっとストーカーちっくなヤンデレヒロインの短編を書こうと思ったんですが結局ツンデレになってしまいました。
どうでもいい事ですけど安心院がはまっているゲームはグラブルでグラン君のコスをしてました。ヒロインのコスはクラリスですね。
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他にラブコメと異世界転生ものを書いているので読んでくださると嬉しいです。
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