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002-無人島生活〜生のカニをむしゃむしゃ食べれますか?

水、水、水、まずは、水を見つけないと!


そう息巻いて走っていたのだが、砂浜を歩いていると、山からの湧き水が海へ流れている場所を見つけた。そして、その近くに小川があった。ラッキー!僕って、本当ついてるよね。


靴は海に流されてしまったので裸足だ。裸足でひょこひょこ歩かなければならないので、あまり遠くに行きたくなかったんだ。


綺麗な小川だ。安心して、ごくごく水を飲んだ。美味しい。それで、何度も水をおかわりして飲んだ。


これで、水の心配は消えた。


次は食料だ。昔見た某テレビ番組で、予算が減ってくると、海へ食料調達へ行っていた芸人がいたな。ここ、海の側だから、食料も余裕でしょう。


「海に行けば、なんとかなる。」


僕は、一抹の不安を楽観で抑えつつ、砂浜の方へ向きを変え、岩場に足を踏み入れた。


すると、岩場をチョコチョコと数匹の小さなカニが歩いているのが見えた。


「なんと、カニですよ、奥さん!」


独り言はむなしく響いたのだが、この島には、カニが大量にいることが分かった。これは、この島での生活が楽しみだ。とはいえ、チョコチョコ走っていくカニを捕まえるのは容易ではない。


それから無我夢中でカニを捕まえた。ただし、カニを捕まえて気づいたのだが、これ、どうやって食べたら良いのだろうか。油で揚げたらカリカリして美味しいのだろうに。ここには、火も鍋も油もない。


しばらく、カニを眺めていた。「このカニを生でそのまま食べるの?」・・・うーん、なんだか、これを生でむしゃむしゃ食べる気にはなれないな。


結局、カニを捕まえたものの、脱力して、そのまま、放してしまった。もう少し、生活が落ち着いたら、調理する方法を考えることにしよう。とにかく、カニはいることは分かった。


カニの調理方法が分からず失望したので、今度は、植物を探すことにした。迷子になるとまずいので、小川に沿って上流の方へと歩いて行く。緑豊かだ。


この緑の葉っぱ、全部食べられないかな?・・・歩いているうちにお腹が空いてきたので、何度か葉っぱをちぎって食べてみた。当然のことながら、葉っぱの味がした。苦いというか、とにかく美味しくない。


しかも残念ながら何も食べられそうなものは見当たらなかった。そうこうしているうちに日が暮れて周囲が真っ暗になった。もちろん、お腹は空いたままだ。


それで、ギリギリ周りが見える内に、小川の水をがぶ飲みして空腹を満たした。当然だが、水で満腹になっても満ち足りない気持ちでいっぱいだ。なんだか頭も痛くなってきた。


最初は降って沸いたこのトラブルにドキドキして楽しい気分になっていたのだが、やはり、今後のことを思って不安になった。誰も助けに来てくれなかったらどうしよう。もう、日本に帰ることはできないのだろうか、両親は心配していることだろう。


あー、もう嫌になってきた。寝よう。ふかふかの砂浜にごろり横たわった。幸いなことに、風はあったがそれほど寒くない。とても疲れていたので、すぐに熟睡した。


・・・


眩しい、そして、空腹で目が覚めた。


「無人島生活二日目。」


自分で自分の物語にナレーションを入れる。相変わらず、波の音しかしない。昨日、砂浜に書いたSOSのメッセージは、満ちた波により消されていた。再び、砂浜にメッセージを書く。


『SOS。飛行機事故に逢った鈴木です。空腹です。助けてください。』


一カ所では、見つけてくれないかもしれない。少し離れたところにも、メッセージを残した。


朝から小川の水を飲み、今日の目標を決める。今日も食料が見つからないと困る。いざとなったら、カニを生のまま食べるいしかないか。とにかく、山を巡って食料を確保しよう。


慣れない裸足で山の中を、ひょこひょこと、ひたすら歩き回った。


歩いて、歩いて、歩き回った。


空腹で倒れそうだ。頭痛も酷くなっている。


太陽が真上にあって、汗がいくども頬をしたたり落ちる。


でも、そんなときに、黄色の果物を見つけた!もぎ取ってみると、それは・・・


「なんと、バナナですよ、奥さん!」


独り言は空しく響いたが、バナナを見つけたことに代わりはない。緑色でまだ熟れていない感じがしたが、もぎ取った。剥き終わるのを待つのも、もどかしい。半分皮を剥いたところで一口、パクリ。


「美味い!」


バナナの甘みが体中に染みた。しかも一本だけではない。大量のバナナがそこにある。バナナをもぎ取った僕は、これから三日はバナナだけで食べていけることを確信して上機嫌になった。


上着を脱いで、その中に収穫したバナナを納めたら気持ちが落ち着いた。


「しかし、疲れたな。」


水も食料も手に入れたし、『助け待ち』をメインの作業にしよう。


見晴らしよく、小高い場所を見つけて、海や空を監視する。


・・・


青い空、白い雲、どこまでも続く偉大な海。大自然が眼下に広がる。


「美しい。」


それが素直な感想だ。


よくよく思えば、僕はこれまで旅行らしい旅行には行ったことなかった。しかも、それまでパソコンの画面ばかり見ていた。パソコンの画面で、美しい海の画像を見ることはあったけれど、画面で見るのと、実際この目で見るのでは、まったく違う。


世の中には、こんなに素晴らしい宝『大自然』があったなんて全く気づかなかった。


僕は、ずっと、美しい景色に見とれていた。

青い海、青い空、どこまでも続く、地平線。

本当に、この世界は美しい。


とは言え、いくら海を見ていても、人の子一人見当たらない。救援隊はいつになったら来てくれるのだろうか。


日が落ちたので、諦めて砂浜に戻って昨日と同じ場所で横になった。


・・・


「無人島生活、三日目。今日は雨です。」


早朝、雨に濡れて目が覚めた。木の陰で雨宿りした。木の下に隠れながらも、バナナをかじりながら高台に移動し、海や空を監視する。


「今日こそ、来てよ、救援隊!」


小川の水を飲み、バナナを食べた。

ただただ、海を眺めた。昨日とは違う海がそこにある。波が高く、水は濁っており、恐ろしく風が強い。

すべての物を飲み込む恐ろしい自然の力に、打ち震えるしかなかった。


悪いことしか頭に浮かばない。

救援隊が来てくれたのだが、波に飲み込まれてしまったという最悪の想像だ。

また、飛行機の中で見かけた人々が、あの波の中にまだいて、「助けてくれ!」と叫んでいるような気がした。


そして、そんな恐ろしい海を見ているうちに、暗くなってきた。


・・・


「無人島生活、一週間目。おめでとう、一週間記念!」


一人でつぶやいた。バナナをかじりながら、お気に入りの高台で海と空を見る。


今日は天気が良い。そして、海も空も非常に美しい。もしかすると、今日も、このまま一日が過ぎてしまうのか?


仕事のときは、週の初めに会議をして、前の週を反省したものだ。


読者のみんな「KPT」の振り返り手法、知っている?


・「K」はKeepで、やって良かったので、続けたいこと。

・「P」はProblemで、やって発生した問題。

・「T」はTryで今後試してみたいこと。


先週をKPTで反省してみよう。


「K」(続けたい良いこと)は、飲み水とバナナだ。これからも、バナナを愛して、バナナで腹を満たしていきたい。バナナは偉大だ。若干、飽きてはいるが、まだまだ行ける。


「P」(発生した問題)は、カニだ。せっかくごちそうのカニがたくさんいるのに、調理方法が分からない。生のカニをむしゃむしゃ食べられたら、漂流者生活ももっと充実することだろう。


「T」(今後試したいこと)は・・・。火起こしかな。火があれば、カニも調理できそう。そして、火があれば、より救援者に見つけてもらえそう。とはいえ、火をおこすのは難しいと聞く。試したことないので、分からないが。


このように、一人で、KPTの振り返りをしていると、ふと、眼下に動く人影を見た気がした。


救助隊? それとも、同じ漂流仲間?


救助隊だといいな。救援者なら、日本に帰れるからね。



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