第二譚
にぎやかに声を立てている子供の声が、何もないのどかな田舎にこだましている。
古いが、つくりの立派な教会には、子供たちが走り回っても十分なほどの広さの庭がある。
子供たちの年齢は、下は5歳くらいから、上は10歳ほどまでで、それ以上の年齢になると、シスターの知人が営む宿舎付きの学校に通うことになっている。
子供たちが一等慕う仲間に、ヨシュアという少年がいる。
面倒見のよく、また賢いこの少年は教会の手伝いにも熱心で、シスターの信頼も大きい。
「~、またか、」
そんな彼が日ごろ頭を抱えるのが、同い年の少年ヤコブである。
彼は物心ついた時から兄弟も同然に育ってきた。
ヤコブが教会の前に捨てられていたのはもうずいぶん昔のことであるが、ヨシュアは彼が来る前から教会に預けられていた。
「おい、ヤコブ!小さい子を泣かすのもいい加減にしろ!」
「うるさいな、こいつが吹っ掛けてきたんだぞ。かまってやるのも年長者の役目じゃないか。」
「それにしたって、やりすぎだ!頬にあざができている!」
ヨシュアとは対照的にヤコブは随分と乱暴である。
「また、シスターに言いつけてやるからな!」
「シスター、シスター、ってお前は自分で何とかしようとする気はないのかよ!
「~、うるさい!!今までさんざん言ってきて一向にやめないのはヤコブのほうだろ!」
騒がしい庭の様子に気が付いたシスターが後ろから近づくのにまだヤコブは気づいていないようだ。
「へん、シスターにでも誰でも言いつけてくれてかまわないさ。シスターなんて-」
「私がどうしたんだい?」
「っ!!シッ、シスター!!!」
「ヤコブ、次また弟たちや妹たちを泣かせるようなことがあれば罰を与えるって言ったこと、おべているだろうね~」
「いっ、いや~、なんだっけかな~~……」
「物置の掃除をおし!!!!!!」
ヤコブもシスターのこの調子に逆らうことはできない。