リュックサック
おばあちゃんが作ってくれた赤いリュックサックが私は大好きだった。
手先が器用なおばあちゃんは、私が小さいことから色々なものを作ってくれた。
バックに洋服、髪留めに帽子。あげたらキリがないくらい。
いつもお父さんやお母さんは家にいなかったから、一緒に遊んでくれたのはおばあちゃんだった。
寂しい夜は一緒に寝てくれて、
日向ぼっこの温もりに包まれて、
沢山の世界を見せてくれた。
でも、そんな日々にも終わりは刻々と近づいていた。
「病気なのよ」「もうだいぶ進行してる」
そんな言葉が聞こえたけど、聞こえないフリをして耳を塞いだ。
おばあちゃんが作ってくれた赤いリュックサック。
遠くにお出かけする時も、
学校に行く時も、
いつも背負ってた。
本当は少し小さくなっていたけれど、離れたくなかった。
ずっと、ずっと一緒だった。
病院に行く時も、
検査をする時も。
今私は病院のベットで眠っている。
隣には大好きなリュックサックに、大好きなおばあちゃんが手を握ってくれている。
お父さんやお母さんはいない。
いつまで待っても帰ってきてくれない。
お父さんとお母さんの血で染まった赤いリュックサック。
車と車のぶつかり合い。
小さい私達の車はぺしゃんこ。
残ったのは私だけ。
リュックサックと一緒にいたら、お父さんとお母さんと一緒にいる気がした。
後ろで、支えてくれている気がした。
私は寂しくないよ
お父さんとお母さんに会えるのだもの。
だからお願い泣かないで。
無機質な音が室内に響き渡ると、私の身体がフワッと浮いた。
大好きなリュックサックを背負って、
おばあちゃんの頬にキスをして、
お空で待っているお父さんとお母さんの元へ駆け出した。