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⑦前世からのストーキングはお断りなのですよ  作者: 邑 紫貴
緩晴

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【オマケ短編2】帰路


 翌朝、代と智士くんは何事も無かった様に帰ってきた。

ぎこちなかった私と直は、智士くんの悪ふざけで通常に戻る。


夜の事は互いに触れず、休暇の予定を楽しんだ。

そんな時間は呆気なく過ぎて、帰路の車内。

狙ったかのように、智士くんが軽く訊いてくる。


「ね、直。どこまでいったの?」


思わず飲み物を吹きそうになる。

代の隣で、口元と目元を緩ませた笑顔の智士くんに苛立ちが募っていく。

それは直も同じか、それ以上。


話を逸らそうと、私は直に話題を振った。


「ね、……相多君は、県内の幼稚園からエスカレータ式の学校だったと噂で聞いたけど。

何故、この高校に受験したの?

誰にも理由を言っていないみたいだけど、訊いても良い?」


あの夜以降、思わず直と呼んでしまいそうになり、今回も間を誤魔化したつもりで早口になる。

まだ、この二人の前では相多君で通していたい。

相多君は少し不満そうだったけど、この車内の智士くんの様子で納得してくれたかな。


「恥ずかしい話。父が仕事で責任を取らされ降格・転勤……

俺は居辛くなって学校を変えたんだ。」


訊くタイミングを間違った。

謝ろうとした私より先に、代が話を始める。


「あぁ、忘れていた。そんな事、あったわね。

大丈夫よ、直のお父様には悪いけれど囮捜査だったの。

家も私が押さえてあるから、安心して。」


…………。

…………。

「……は?」


代は皆の視線を受けても、悠長に飲み物を口に運んで息を吐く。


「数元?」


動揺の見える直に、代はいつもの微笑み。


「明日には、昇格してもらうけれど……

もう少し内部の現状が知りたいから。ごめんなさい。」


直は怒りで振るえ、立ち上がる。


「お前、まさか!

この前世の為に父と母を巻き込んだのか?」


智士くんが直を取り押さえ、代の答えを待つ時間が私にも苦しく思えた。


「それが一番の目的ね。」


平然と腹黒い事を言う姿は、まんまシロ兄様。


「俺達が、どれだけ……絶対に許さないからな!」


「赦して欲しいなんて思わないわ。」


あれ?この流れって、もしかして?


「代、あの……私の父の転勤も、あなたなの?」


県外から、本社への配属……急な転勤と、今の学校への推薦。


「そうよ。金と権力、全て使える物を駆使した。」


代の後悔などない真っ直ぐな視線に、直は力が抜けるように座り込む。


「本当に……お前だけは……」


小さな声だけど、直の中では感情が処理できたのだろうか。


 私たちの前世。

繰り返されてきた悲恋……出逢わなければ、こんな結末も無かった。

知らずに居れば、何も変わることなく時間は過ぎていただろうか。

分からない。


「ちっ。

これだから金持ちの考える事なんて分からないんだ。」


私立の学校に居た直も、私にすれば同じだけど。


「直、俺は違うよね?」


調子がいいのは、リコリスと少し毛色が違う。イチシには、その雰囲気があったのか私には分からない。

智士くん特有のものだろうか。


「何だよ、別荘って。」


「オヤジ、負けず嫌いだから♪」


……何とも不思議な組み合わせ。

意図的な巡り合せを、裏でしてきた代。大人の世界も手中で……


「ちょっと待て、さっきの数元の発言……まだ父を利用するのか?

何だ、ソレ。

前世に固執するならまだしも、結局、現世を楽しんでいるようにしか見えないぞ。」


呆れながらも、どこか安心したように見える。

代は首を傾げた。


「二人の人事に手を出すなら、それに付随する人生を見守るように父から言われたの。」


……うん?忘れていたみたいだけど、どこまで本気なのかな。

直は、大きなため息を吐いて私に目を向ける。


「幸は良いのか?

県外から、自分の意思に反してここに居るんだぞ。

その元凶が分かったんだ、何か言っておけ。」


何か……ね。


「ふふ。

代、前世からのストーキングはお断りなのですよ。」




end

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