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⑦前世からのストーキングはお断りなのですよ  作者: 邑 紫貴
最終章:天性

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××××は忘れられない想いを胸に守護する


 もっと二人から聞きたい事がある様な気がするのに、何と尋ねて良いのか分からない。

何を聴けばいい?私には、もっと知るべき事があるはずなのに。

もどかしいのは二人も同じなのかな。

何を話せばいいのか戸惑い、相手の反応を恐れて言葉を迷う。


「あれ、そう言えば代は?」


全ての記憶がある代から聞く方が早い事もある。


「数元は、そろそろ帰って来ると思う。買い出しに出るとメモがあった。

居ない間に、俺達で話が出来るように気を回してくれたんだろう。」


……アスターは、それぞれの想いを夢で見てくれることを代が望んだと言った。

きっと彼女も同じ。私たちに、どう言おうか迷っているはず。

心が痛む。現世に絡む前世の記憶を抱えて。


「代が帰って来るまで、何か飲もうか。

俺、喉が渇いてしょうがないよ。」


智士くんは苦笑しながらイスから立って、場所を把握しているように移動した。

手伝おうと思い、立とうとした私に静止を促す。


「幸は座っていて。

代が帰って来たら出迎えてあげてよ。」


その笑顔は懐かしいリコリスの雰囲気と同じ、温かさと優しさ。


「幸……」


相多君に名を呼ばれて視線を向けると、智士くんの居る方向とは別の場所から物音がした。


「数元かな。行ってあげて。」


少し残念そうな表情が気になりながら、私は物音のした方へと足を向けた。

ドアを開けると、荷物を両手に持った代の姿。


「代、おかえり。

私、一つ持つから貸して。」


代は荷物を渡しながら微笑む。


 二人で部屋に入り、四人分の飲み物を机に並べた智士くんが私たちに近づき、荷物を手に取り持って行く。

……何だか、妙に慣れている気がする。

持ったばかりの荷物を、彼に自然と渡してしまった。


「代、これはバーベキュー用だよな。

外に近い冷蔵庫に、そのまま入れて良いんだろ?」


「うん、いつもと同じ。」


智士くんの鈍感。

こんなに仲が良くて、前世の事があったにしても代の想いも読み取れないなんて。

……それだけ、不安になるのかな。


私の視線は思いと連携して、相多君に移る。

彼は私の視線に気付き、そっと微笑んでから代の方へと視線を向けた。

胸に小さな痛み。


「数元、俺達の話は途中だ。

だけどアスターの事を聞かないと話も進まない。」


代に話しかけた内容で痛みは薄れ、何に傷ついたのかは理解できなかった。


 私の隣に代が座り、飲み物の載った机を四人で囲む。

代は飲み物に手を伸ばし、一口飲んでから、小さく息を吐いた。


「……意図的な転生に、あなた方を巻き込んだの。

以前、アスターがどんな力を持っているのか訊いたわよね。

私は処罰だったと答えた。」


「腑に落ちない。

アスターは、身に文様を持つ種族に手を出した罰を受けたって事になるのか?

過去に見た状況では、そう思えない。」


身に刻んだ文様を受け入れたのはラセイタの決断。

もし他種族を受け入れるのが禁忌だったとすれば、身に浮かんだ文様は何だったのか。

そして、ラセイタ自身……命約を破って死んだ。

罪を負うべきはラセイタ。それが原因なら、意図的な転生に巻き込んだ張本人。


「忘れられない想いは死を覆すほどの愛だった。

その生きる希望を与えた存在もの

望んだのが間違いだったのかもしれない。降り積っていく後悔。

アスターが目の当たりにしたのは、手に入れたと思ったラセイタの心が砕けた瞬間。」


 希望を与えた存在。

意図的な転生をさせた力の源。


ラセイタの心が砕けた瞬間……

ユウエンの体を突き通す剣を目にし、絶望を味わった。

それをアスターは読み取り、どれほどの痛みを味わっただろうか。


苦しい。

自分の前世なのに、ラセイタとしての感情も考えも述べる事は出来ない。


「私はアスターに転生していた。」


アスターが誰かの生まれ変わり。

衝撃的な言葉だった。


「それは……私たちの転生より前に、生きていたと言うの?」


確かに私たちは前世を二つ持つ。それより以前があったとしても、不思議ではない。

では、どこまで因果関係を引きずらなければならないのか。


「名も分からない。

アスター自身も、忘れていたのでしょうね。」


そんな遠い記憶……

話の内容は自分の理解を超え、混乱してくる。


「幸の前世を夢で見て、アスターが告げた言葉。

『それなら……何の為に転生を繰り返す、何のための処罰だったのか。返答を問う。』

それを境に、刻まれた記憶が少しずつ私に増えていった。

奇妙な記憶に理解が追い付かず、認めたくない存在に憎悪が増す。」


 何の為に転生を繰り返すのか。

罰を背負い、常に現世で抱き続けたのは死の渇望……希死念慮…………


「代、貴方は何故、生きることを願わないの?」


そう、何度も私が言葉を続けたくて出なかった言葉。


「転生を促す存在は言った。

『死を願うことなど、天からのものとは認めない。生を基に願いと枷を背負い、転生を命ずる』と。」


願いとかせ……


 代は身を丸め、手には力が込められて震えている。

手を伸ばし、彼女の手に重ねて顔を覗き込んだ。

陰の所為なのか、ラセイタを守ろうと必死で剣を振るったアスターの様な怖い表情に見える。


「死を願うアスターに対する希望を踏みにじる相手に転生を促され、受け入れるより仕方がなかった。」


希望ラセイタを失い、生きることを願わないアスターに、更なる命を与えるという処罰。


代は顔を上げ、苦笑と共に涙を零した。


「淡い想いを封じ、新たな生命にも必ず死の渇望が備わる枷を負い……

喪った希望の転生者を身近に置くことを願う。

そう、シロとしてサチの家族になり、守護することを願った転生。」


悲しみの輪廻転生。

ただ死を願った者の生まれ変わりに課せられた運命に束縛され、代は私を守護すると告げた。


『これを最後にしたい』


うん、終わらせてあげたい。

だけど、それは必ずしも私と相多君の前世の悲恋を終わらせると言う事ではないと思う。

だって因果関係で、未来の決まった運命で幸せにはなれない気がする。


「シロは新たな枷を負い、同様の願いを抱いて私に転生した。

それが必然的に生きる希望を増やすことになるなんて。

この現世の転生に願ったのはイチシの性転換。

そして、幸には両親の揃った普通の家庭。戦などない平穏な時代。」


両親の揃った普通の家庭?

代は私に目を向け、優しい微笑みを見せた。


「幸の前世にはなかった。」


確かに、ラセイタの夢に両親は居なかった。常に、小さな家にラセイタ一人。

サチの両親の生存も分からず、身近にはシロだけが居た。

……今、得ている普通の事が代の前世による私への愛情。

胸が苦しくなる。


「ごめんなさい。

ラセイタは貴方アスターを裏切ったのに。」


代は転生に巻き込んだ?

そうかもしれない。だけど私は知らずに生きてきた。

見守る代の優しさに、罪悪感を抱いた記憶が変化していく。


貴方ラセイタは心に存在しなかった望みを生じさせた。

生きる希望。生を基に、願いと枷を負うことも厭わない。」


私を守護すると誓った時と同じ眼。

真名の通り。代の天性の物。


アスターは忘れられない想いを胸に守護する




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