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⑦前世からのストーキングはお断りなのですよ  作者: 邑 紫貴
ストーキング

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幸に埋もれ


 二人は私に現世での思い出を語る。

前世の絡んだ関係……覚えていないと答えた智士さとし君は、事細かに話を連ねていく。

その言葉にきくは穏やかに微笑みを浮かべ、時に切ない表情を見せた。

私は垣間見た代の複雑な表情で、智士君にも隠していることがあるのかと感じ、口を閉ざしたまま二人をじっと観察する。


 二人は私の願いに応えてくれた。


ゆき、俺達の話は面白いのか?」


自分の表情など分からない。

楽しそうに聞いていたのだろうか。それとも、無関心な態度だったのかな。


「う~ん。二人を知る事が出来るのは嬉しいし、自分も関係する前世なのだろうけど実感ない分、どこか寂しいかな。」


「そっか。俺も実感ないけどね。」


え?

さらりと本音を暴露したけれど、智士君って不思議な雰囲気だよね。

私が本音を出したからか、私に合わせてくれたのかな。

優しい人だとは理解できた。


「ふふ。幸、イチシには前世の記憶がないのよ。」


あれ?記憶がある前提で、話を聞いていたけど。そうなの?

視線を智士君に向けると、私に向かってニッと笑って見せた。


「シロが嘘を吐いているようには見えなかったし、俺はすべてを信じているよ。くくっ。だって、こんなに赤の他人が性別違うのにソックリなんて偶然、あるわけないだろ。」


偶然ではない……


「そうそう、イチシは面白がって私とイチシの両親を会わせることまで計画したんだから。」


「ふふん。人生で一番ウケたあのオヤジの顔。」


それは見てみたかったかもしれない。

知りたいと願った私の前世は……


「代と私は兄妹で、智士君との関係は何だったの?」


私の質問に、二人は顔を合わせてから視線を同時で私に移す。


『敵だよ』


重なった言葉は重く、私の心に痛みを与えた。

それは燻る様な曖昧さに、痛みではない鈍く響くような重圧。


それは魂への振動となる。



 二人と別れ、家に着いても重みは消えず……時間は無駄に経過して、それを抱えたまま眠りに着いた。


埋もれた記憶…………

『敵』……



「兄様、何故?……嫌です……嘘だと言ってください!どうして…………」


凍えるような寒さが身を包む。

吐く息は白く、震える手を必死で伸ばした。

苦しそうな表情で後退り、首を振る男性。


 この時代は、いつなのだろうか。

平安?

違う、建物を支える大木は立派だけど部屋は狭いような気がする。

卑弥呼の時代なのかな、ここはまるで神殿……自分の着ている服は雪のように白くて軽い。


「サチ、血を分けた者ならずっと見守れると思った。だがしかし、彼は…………これが戦乱の世ではなく、平穏な時代で……」


……



 途切れた言葉も夢うつつ、それでも記憶に刻んだ。

“彼”は敵……

ツキンと突き刺さるような痛みが胸に残る。


 目を開け、起き上がった私の頬を伝う一筋の涙。

罪悪感が膨らんでいく。

過去、今の私が知らない時代に遡り……自分が犯したのだという実感もなく、償う運命を背負った様で悔しさが増す。


 私が生きているのは現世だ。

生まれ変わって、尚も咎められる罪とは何なのか……

今の私には関係ない。

知らない、身に覚えが…………


 魂に刻まれた過去。

触れた接点から燃え移り、空気を含んで火炎となる。

埋もれる……今の私は、どこに存在するのか。

この現世で私を待ち受けるのは、未来のはず。

終わりにする?

何も始まってはいない……何も…………


 私の中に埋もれているのは何?

前世の記憶、それとも今の私が望めるような明るい未来なの?

怖い……過去と同様、やり直した命は同じことを繰り返すのだろうか。

記憶を持たずに生まれ変わり、過去と同様に選択肢を間違えるなら……新たな未来など存在しない。

前世を思い出しているのは確実で、それは私が願ったのではない。

では、誰の願いなのか……

前世の私が願った事?

私なら、来世の自分には新たに生まれ変わって全てを忘れ……罪悪感も抱かずに生きて欲しいと願わないだろうか。


 降り積もる冷たい記憶……解ける事も叶わず、埋もれていく…………今の私……。


きっと、

もっと……

ちがう未来があったはず。


輪廻など望まないけれど…………

すべてに意味があるのだとすれば……誰の意図なのか。



「幸、おはよう。」


夢に見たのは智士君がシロと呼んだ、代の前世。


「代、おはよう。」


無意識で辿り着いた学校。

ここまでの時間の微かな記憶には、着替えや朝食など、日常の繰り返しがあった。

彼女の穏やかな微笑みに、突き放されたような気がするのはどうしてだろうか。


 あの夢の所為なのかな。

夢うつつ、あれは本当に前世の出来事だったのだろうか。

前日に聞いた話が、ただの空想となって夢に見た偶然かもしれない。


「代、あなたは前世の私を裏切ったりしていないよね?」


「……あなたから見れば、そうだったかもしれない。これからも、そう感じることが必ず生じると思って欲しい。ただ……」

『君を守護する』


代の言葉が私の心に埋まる。

それは満ちていくように納まり、罪悪感を塗り替えた一時……この言葉を忘れることが無いようにしよう。


 心に埋もれた前世の記憶と罪悪感…………

それを塗り替えていく言葉は、きっと……もっと、ちがう未来を見せてくれると……信じたい。


私の奥深く、幸に埋もれて…………




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