第5章
「おままごとしよう。みすずが奥さんで、ゆう兄が旦那さん」
「えー、りこも奥さん役、やりたいっ」
「だめー。りこ姉は、前も奥さん役だったでしょう?だから、こんどはみすずなのー」
「は、はは」
しあわせだった。
みーちゃんと喧嘩して
ゆうくんが、困った様に笑ってて
私たちは、しあわせだった。
「ねえ。今日は、何しようか?」
辺りを見回しても、誰も居ない。
…目ノ前ニハ、
シラナイ男ノ人ト、女ノ人ガイテ怖カッタ。
「みーちゃん?ゆうくん?」
泣きそうな声で二人の名を呼びながら、辺りを見渡すと閉まっていた扉が開き、その向こうから幼い少年と更に小さな少女が、笑って私を手招きして呼んでいる。
「みーちゃん!ゆうくん!」
私は笑顔で二人の名を呼び、追いかけて扉の向こうに行くと、笑いながら逃げる二人を追い掛け、階段を駆け上がっていく…。
「待ってよ!二人とも」
そして、屋上まで来ると、二人が私の両手を取り、引っ張った。
「みーちゃん。ゆうくん。私二人とも大好き。…だから…
…置いていかないで…」
二人はにっこり笑うと、私の両手を強く引っ張った。
ズルッ
宙を浮くような感覚の後、見えたものは綺麗な満月や、硬いコンクリート等ではなく、楽しげに笑う。…二人の幼馴染みの笑顔。
私もつられて笑おうとした瞬間、頭に強い衝撃。
温かな鮮血が流れていく。
身体は次第に冷たくなっていき、意識も遠退いていく。
「なんだ?今の音…ん?ひっ!」
男は『ドサッ』という音を聞いて、それの元に行く。するとそこには血の海の中にいる。女性…理子の姿に腰を抜かした。
そして、理子が落ちた音を聞いた人が集まりだし、すぐに救急車も呼ばれ、病院へと運ばれたが、助かりはしなかった。
警察が、検証に理子の部屋へ向かい、そこで優真と、美鈴の遺体も発見された。
そして、この事件は容疑者死亡で書類送検され、理子は自殺と判断されて幕を閉じた。