スタメンとベンチとそれぞれのチャント
9月17日 J2第34節対京都バイオレッツ@橋本市陸上競技場
今シーズンの和歌山と京都には共通項がある。それは「若いストライカーが攻撃の核となっていること」だ。さらにお互いの監督が攻撃的なサッカーを志向していることもあり、サッカーファンならば興味尽きない試合となっている。
ただ、今日のスタジアムに来た客層は、全員が必ずしもそれを楽しみにしているわけではない。それはどの試合においても言える事ではあるが、今回は好奇な目で試合を見に来た人間も少なくない。そしてそんな観客の手には、例の夕刊紙が握られていた。
例の記事の見出しには、こんな文面があった。
「今石監督は、時々おかしな起用をする。それも唐突に。フォワードをディフェンダーにしたり、やったことないポジションで使ったりね」
こう発言したのは、元ヘッドコーチの和泉の発言である。
「さあーアガーラサポーターのみんなあー!大変お待たせいたしました!続きましてっ、ホームチーム、アガーラ和歌山、本日の、スターティングメンバーをっ、ご紹介しましょうっ!」
スタジアムDJが威勢よい声で盛り上げる。いつものように選手のキャッチコピーをつけながらスタメンを読み上げていくのである。
「天下無双の、超っ攻撃的守護神っ!背番号っ20っ、ゴールキーパー、友成っ哲也っ!」
(ドドンッ)「わーれーらの守護神とーもなりっ、むーてーきの守護神とーもなり、てーんも取れるぞとーもなり、完ぜーん無欠のとーもなりーぃっ、がいなあっ!」
「逆境に屈しない、魂熱きファイター!背番号っ15っ、ディフェンダー、園川っ良太っ!」
(ドンッドンッドンッ)「りょーたあっ!」×3
「華麗さと泥臭さを併せ持つ、汗っかきナンバーテンっ!背番号っ10っ、ディフェンダー、小西っ直樹っ!」
(ドンッドンッドンッ)「なおきいぃっ!」×3
「稀代の才能、今宵、和歌山で飛翔せよっ!背番号っ11っ、ディフェンダー、佐久間っ翔っ!!」
(ドンッドンッドンッ)「さくまあっ!」×3
「ドリブルの切れ味は、まさに名刀っ!背番号っ7っ、ディフェンダー、桐嶋っ和也っ!」
(ドンッドンッドンッ)「かずやあっ!」×3
「無失点の鍵を握る、小さな大黒柱っ!背番号っ2っ、ミッドフィルダー、猪口っ太一っ!」
(ドンッドンッドンッ)「たいちいぃっ!」×3
「ピッチのイレブンを、統べる闘将っ!背番号っ17っ、ミッドフィルダー、チョン・スンファンっ!」
(ドッドンッドッドンッ)「チョンスンファーン!」×3
「ピッチを吹き抜けるっ、一陣の風っ!背番号っ16っ、ミッドフィルダー、竹内っ俊也っ」
(ドッドンドン)「たーけーうちとしやーあー、たーけうちとしやーあー、ピッチ吹きぬく一陣の風、たーけーうーちーとーしやっ!」×2
「勝利のために影に徹する、アガーラのお庭番っ!背番号っ35っ、ミッドフィルダー、毛利っ新太郎っ!」
(ドンッドンッドンッ)「もうりいぃっ!」×3
「欲するのは、ゴールのみっ!唯我独尊のストライカーっ!背番号っ9っ、フォワードっ!剣崎っ龍一っ」
(ドッドッドドドド)「りゅーいーちゲットゴール、りゅーいーちオオオオー」×2
(ドドドン)「りゅういちっ!」×6「ハットトリックへあと3てーん」
「その男、天才につき・・・。背番号っ3っ、フォワードっ!内村っ宏一っ!」
(ドンッドンッドンッ)「ひろいちいぃっ!」×3
チャントの歌詞も書いたのでわかりにくいが、書き直してみるとスタメンは以下のとおりである。
GK20友成哲也
DF15園川良太
DF10小西直樹
DF11佐久間翔
DF7桐嶋和也
MF2猪口太一
MF17チョン・スンファン
MF16竹内俊也
MF35毛利新太郎
FW9剣崎龍一
FW3内村宏一
和泉元コーチの言葉に当てはめれば、まず最終ラインでDFが本職なのは園川一人。左サイドバックの桐嶋は、直近の公式戦3試合で前めの位置でプレーして5得点と本来のFWとしての嗅覚を見せている。
さらにいえば、小西のセンターバックと内村の2トップ起用は今季初である。
ちなみにリザーブの7人を、キャッチフレーズつきで書くと以下のとおりになる。
「泰然自若、和歌山の、ファイアーウォールっ!背番号っ1っ、ゴールキーパー、天野っ大輔っ」
(ドンッドンッドンッ)「だいすけえっ!」×3
「チームとともに、歩み続けるバンディエラっ!背番号っ6っ、ディフェンダー、川久保っ隆平っ!」
(ドンッドンッドンッ)「かわくぼおぅっ!」×3
「冷静沈着にサイドを制する、クレバーな仕事人っ!背番号っ13っ、ディフェンダー、村主っ文博っ!
」
(ドンッドンッドンッ)「すぅぐりぃっ!」×3
「どこまでも飛んでいく、脅威のキャノンフィードっ!背番号っ26っ、ディフェンダー、朴っ康信っ!」
(ドッドンッドッドンッ)「パクカンシーン!」×3
「放つパスは正確無比っ閃くアイディアは唯一無二っ!背番号っ8っ、ミッドフィルダー、栗栖っ将人っ!」
(ドンッドンッドンッ)「くぅりすぅっ!」×3
「テクニックも兼ね備えた、走るスカイツリーっ、背番号っ18っ、今日から復帰っ!フォワードっ鶴岡っ智之っ」
(ドッドッドドドド)「鶴岡鶴岡鶴岡智之ごーおるまーえの摩天楼、だーれもだーれもとどかなーいにひゃくごじゅうごのヘディング弾。鶴岡鶴岡鶴岡智之ごーおるまーえの摩天楼、だーれもだーれもうーばいとれない豪州仕込みのポストプレー」
「ここ一番で頼りになる、元祖、エースストライカー!背番号っ19っ、フォワードっ、寺島っ信文っ」
(ドンッドンッドンッ)「てらしまあっ!」×3
GK1天野大輔
DF6川久保隆平
DF13村主文博
DF26朴康信
MF8栗栖将人
FW18鶴岡智之
FW19寺島信文
一通り発表を終えたが、夕刊紙を手に観戦に来ていた観客は、スタメンの人選と紙面の和泉元コーチの発言を照らし合わせた。
「見ろ、こいつの行ったとおりだぞ」
「これでこのコーチの言ってることに、信ぴょう性がついたな。・・・なんて監督だよ」
「チームをめちゃくちゃにして、最後はほっぽりだすってのかよ」
余計な憶測が、スタジアムの一部で起こっていた。




