和歌山対尾道プレビュー
小説の中で8月30日に発行されたJペーパーの記事です。
〜「いつもどおり」叩き潰して6連勝へ〜 (和歌山・浜田友美)
前節湘南戦もベテラン中心で快勝し、今石政権、そしてクラブ初の5連勝を達成した和歌山。千葉を皮切りに奈良とのダービーを経て、山形、東京、そして湘南と、プレーオフを含めた昇格圏のクラブを倒している。さらに言えば直近3試合は逆転勝ちであり、「目に見えて地力がついてきている」(川久保)と手応えを口にする選手も少なくない。
ただ、だからといって今節の尾道戦へ慢心した雰囲気は微塵もない。5戦6ゴールと絶好調の剣崎も「前は勝ったし点も取ったけど、何が起こるかはわからない」と兜の尾を締める。何より守護神の友成にとってはプロ入り後ワーストの4失点を喫しているだけに「完封しなてやらないと腹の虫が収まらない」と意気軒昂。同じ様に前回は出場停止だった西谷も「この試合でゴールを二桁に乗せたい(現在8得点)」と闘志を燃やす。
ポイントは中盤の攻防だ。今節は精神的支柱で主将のチョンが出場停止。広い視野と豊富な運動量でカウンターの芽を潰してきた闘将の欠場は明らかにマイナスだ。「存在感以上にカウンターの監視役がいないから、中盤の選手にはボールロストと運動量を意識しないといけない」と竹内は警戒する。さらに園川、藤川と守備陣に故障者が相次ぐことから、栗栖と内村のダブルボランチや、剣崎、竹内、西谷の3トップを試すなど、今石監督は攻撃的布陣で挑む姿勢を匂わせる。いずれにせよ「いつもどおりのうちらしいサッカーで叩き潰して」(今石監督)6連勝を狙うだけだ。
〜「J1に足るか否か(港)」の分水嶺〜(遠山忠)
備後の沈黙。サポーターにそう記憶される屈辱の第5節から約4ヶ月。「ようやくリベンジの機会が来た」(御野)と選手たちの鼻息は荒い。
ただし、リベンジへの意気込みと同じくらいに「うちより(順位が)上のチームに逆転勝ちしての連勝。以前とは桁違いに違う」(今村)と、和歌山に対しての警戒心も芽生えている。現在得点王の剣崎も警戒すべきだが、この試合は左サイドの攻防が勝敗に直結する。特に竹内は良質なクロスを入れたり、自ら中に切れ込んで最終ラインの裏をとったりと厄介極まりない。対峙することになるであろうマルコス・イデがどこまで対応出来るかが鍵になる。
また2トップの組み合わせも注目すべきところ。好調を維持する有川とヴィトルだが、友成からハットトリックを決めた荒川のスタメンも「ないわけではない」と、水沢監督も頭を悩ませる。キャプテンの港は全員の思いを代弁する。「今の和歌山はJ1でも戦える。だからこそ、この試合に勝てるかどうかは尾道がJ1昇格に相応しいか否かを問われてる。絶対に勝ってスッキリと昇格したい」と。
COLUMN和歌山〜龍を支える「一陣の風」 FW16 竹内俊也〜
今シーズン、リーグ随一の攻撃力で快進撃を続ける和歌山。エース剣崎、守護神友成とともに、あるいはそれ以上に欠かせない存在感を見せているのが、右サイドハーフを主戦場とする竹内俊也だ。弱冠19歳ながらチーム一の駿足と無尽蔵のスタミナを併せ持ち、サイドの攻防では常に主導権を握る。良質なアーリークロスでチーム最多の10アシストを記録し、得点も剣崎に次ぐ13ゴール。プロ入り前に掲げた「ゴール、アシスト共に二桁」と言う目標を見事にクリアした。しかし本人にはまだ満足感はない。「目立たないミスが少なくないし、得点ももっと決めないといけない。自分も得点王争いに絡められれば、まだまだうちは強くなれると思います」。サポーターからの公募で決まったキャッチフレーズ「一陣の風」は、今節もまたピッチを吹き抜ける。
POINT尾道〜いかに点を「取られる」か〜
「この試合を無失点で乗り切るのは不可能」
と水沢監督はハッキリと言い切る。だからこそ「どういう風に点を取られるかが重要」(同)となる。
このテーマの要は「先制点を与えないこと」と「連続して点を取られないこと」の二点。「攻撃力は二枚は上手だから先手を取られると苦しくなるし、うちがリードしても連続で取られると勢いを止められない。とにかく得点で勢いづかせないことが肝要」とキャプテン港は語る。
一方、攻撃においては「常にリードを保つこと」(荒川)が上げられる。「和歌山は常に前掛かりの傾向があって、高い位置からのショートカウンターに弱い。前の選手がしっかりと守備してリズムを作れれば勝機はある」(有川)。攻守の約束事を徹底し、尾道はリベンジを目論む。
FOCUS尾道
帰ってきた人徳者〜MF8 高橋一明
「やっとロッカーを出られましたね」
アキレス腱断裂の重症からようやく全体練習に合流した高橋一明は、苦笑いを浮かべながら答えた。今月半ばからチームに合流。徐々にコンディションも整い、園川フィジカルコーチからも「ベンチ入りなら十分」とゴーサインも出た。金田ら主力が離脱、王が退団と攻撃陣にネガティブなニュースが続いただけに「終盤の選択肢が増えて助かる」と、水沢監督も胸を撫で下ろす。
あの第5節はスタンドから観戦。二転三転の末に逆転負けを喫し、沈黙する選手やサポーターを見守ることしかできなかったことが悔しかった。だからこそ辛抱強くリハビリや別メニューをこなした。「ああ言う試合はJFLでもなかった。サポーターには辛い思いをさせてしまった。試合に出られたとしたら、リベンジ達成に一役買いたいですね」。誰からも「高橋さん」と慕われる古株の人徳者は、その時のために懸命に牙を研ぐ。
試合は桃山忠海さんの「幻のストライカーX爆誕」をお楽しみに。




