表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/100

まさかの横断幕

5月3日 J2第12節水戸ホーネッツ戦


スタメン


和歌山


GK20友成哲也

DF6川久保隆平

DF2猪口太一

DF3内村宏一

DF13村主文博

MF4江川樹

MF8栗栖将人

MF10小西直樹

MF7桐島和也

FW9剣崎龍一

FW16竹内俊也


 出場停止明けの友成がスタメン復帰。前節結果を出した江川と小西が連続で先発。2トップはユースの時以来のコンビでプロでは初めての組み合わせとなった。

水戸


GK1本田幸一

DF2井上久志

DF7木下博之

DF3上田孝行

DF5大野雄介

MF6川山信一

MF15ソウザ

MF10小島大輔

MF11佐藤琢磨

MF13鈴木稔

FW9高井則康


 ここ6試合1得点ながらリーグ最少失点の水戸は、サイドバックにもセンターバックタイプの選手を起用。ダブルボランチの川山、ソウザと合わせて実質6バックで勝ち点1を確実に取りに来た。




 試合は和歌山が終始優位に進めるが、ガッチリとカギをかけた水戸の守備に苦戦。1トップの高井すら自陣に引っ込み、剣崎、竹内の絶好調コンビを軸にした猛攻に耐える。

「こんのやろうっ!!」

 焦れた剣崎が、ミドルレンジから積極的にシュートを放つが、ボールはあさっての方向へ飛ぶばかりだった。

「ちっくしょう、こんなガチガチに引っ込みやがってえっ」

「剣崎落ち着け。ムキになったら相手の思うつぼだぞ」

 声を荒げる剣崎をなだめる竹内だが、彼もまた得意のドリブルで仕掛けても、二人がかりで潰しに来る水戸の対応にストレスがたまっていった。


「よしよし。それでいい」

 水戸の円谷哲郎監督は、和歌山の攻撃を食い止め続ける戦況にニヤリと笑った。


「君たちがいかに得点力に長けていたとしても、守備に徹すればそうは点を取れない。いらつけばますますドツボにはまる。何やら揉めているようで悪いが、勝ち点は私たちがもらうよ」

 余裕の笑みを浮かべながら、円谷監督は今石を見た。



 対照的に、今石は水戸の守備を忌ま忌ましげに見ていた。

「ある程度固めてくるとは思ってたが…ここまでドン引きで守って来るとはねえ」

「どうします。選手代えますか。ここは変化をつけるべきでは」

 和泉コーチが進言するが、今石は首を横に振る。

「まだだ。焦ってカード切ったところで、あのディフェンスは崩せねえもう少し様子を見る」


「でも、中盤にもっと突破力のある選手を入れれば、あるいは…」

「剣崎や竹内が自由に攻められるのは、中盤や最終ラインが地に足つけて守ってるからだ。選手代えるだけが流れ代えることじゃねえよ」


 監督と和泉コーチのやりとりを、この日ベンチ入りしていたチョンは、妙な違和感を感じていた。

(なんだ?今日の和泉コーチ、ずいぶん監督に反抗的だな…)


「うおりぃやぁっ!」

 前半も終了間際、剣崎はこの日6本目のシュートが初めてバーに当たった。

「くあぁっ、やっとバーに当たったかあ。うしっ、もうちょいもうちょい」

「いいぞ剣崎!俊也ももっと挑戦していけ!小西さんやキリはセカンドボールをっ」

 この日栗栖は視野の広さを生かして、積極的に指示を飛ばした。最近は中央でプレーするようになり、司令塔としての本領を発揮しつつあった。

 守備もキャプテンマークを巻く川久保が、若い選手たちを落ち着かせ、左サイドバックとして先発した村主、桐島が攻めやすいよいに左サイドをしっかりとケアし「後ろは大丈夫だから、お前はもっと攻めていけ」と、桐島に声をかけていた。

 おおよそ内服分裂しているとは思えない活気がピッチの選手たちにはあった。


 だが、前半終了のホイッスルが鳴った後、一部サポーターの行動が、選手たちに動揺を与えることになる。


 ピッチから引き上げる選手たちは、メインスタンドがざわめいているのに気づいた。

 “それ”に最初に気づいたのは、ウォームアップのために、スタメンと入れ替わりにピッチに入った鶴岡だった。

「な、なんだよあれ」

 鶴岡が指差した方向に、全選手が視線を移すと、スタンドの一角でサポーターと思われる集団が、赤い字で書かれた横断幕を掲げていた。



〜功労者を葬り、教え子をひいきにする暴君・今石は直ちに辞任せよ〜

〜拝啓、竹下GM。横暴な今石よりも、長きにわたりチームを見守った和泉さんが適任です〜

〜天野、猪口、栗栖、剣崎、竹内、友成、お前達の抜擢は実力じゃない!ひいきだ!〜





 その横断幕を見た選手たちは、突然の辞任要求に戸惑いを隠せず、今石自身はただ仁王立ちで見続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ