和歌山対東京マッチレポート
〜成長率無限大!剣崎がクラブ初のリーグ戦ハット〜(浜田友美)
「今日はあいつに尽きる」と今石監督の言うように、剣崎がリーグ戦ではクラブ初のハットトリックを成し遂げた。確かに剣崎の活躍は大きかったが「最初の2点は両サイドの二人のおかげ」と本人が言うように、立ち上がりの15分でサイドを突破して2点を先行した時点である程度大勢は決していた。
「自分がノッていたというより、相手のプレッシャーが思った以上に緩かった」と、右サイドを蹂躙した竹内に言い切られるほど、東京のサイドの守備は甘かった。
五輪代表のエースでもある小宮が個人技で同点に持ち込んだものの、「最後までリードされたままだった」(東京・時任監督)ことで終始後手に回った東京は、5連勝で乗り込んできたとは思えないほど勢いを失い、采配を奮うほど停滞してしまう拙い試合運びに終わった。「こんなゲームなんかしてたら昇格なんて無理」と東京の若きエースは危機感を抱き、「初めて昇格候補に勝てたことは前向きにとらえたい」(川久保)和歌山は、次節の松本戦に向けて弾みをつけられた。
採点・寸評
アガーラ和歌山
20 友成哲也 5
よく守っていたが、無謀なプレーで退場に
6 川久保隆平 6
ニコルスキーとの空中戦では終始優位に立った
15 園川良太 5・5
セカンドボールをよく拾ったが、セルフジャッジはいただけない
3 内村宏一 6・5
飯塚を完封し存在を消す。抜目ない得点もさすが
13 村主文博 6
前半で退いたが、窪山に決定的なプレーをさせず
2 猪口太一 6
2点をとられたが、全体的に小宮に自由を与えなかった
16 竹内俊也 7
右サイドを庭のように駆け回り、3点に絡んだ
7 桐島和也 6
先制点をお膳立てするなど、徐々に欠かせない存在に
8 栗栖将人 6
中盤、あるいはサイドからいつも通り高精度のパスを供給
9 剣崎龍一 7
豪快かつ華麗にハットトリック。最後の空振りはご愛敬
18 鶴岡智之 5・5
ポスト役として機能するもシュートなく存在感薄い
4 江川樹 6・5
猪口とのコンビでキレキレの小宮を封じた
10 小西直樹 −
時間短く、採点なし
1 天野大輔 6・5
ワンプレーだけだが緊急事態をブレ球キャッチで救う
C 今石博明 6・5
サイド攻撃や選手交代がはまり4試合ぶりに快勝
東京ヴィクトリー
1 市原拓也 5
失点は個人より守備陣へのコーチング不足が原因
2 二村和志 5・5
瓦解した中鶴岡にある程度対応していた
3 サンドロ 5
剣崎に振り回され、空中戦でもらしさ見せれず
5 五十嵐佳久 4・5
あっさりと先制点献上。後半は桐島が攻めなかっただけ
8 八木沼秀喜 4・5
竹内に完敗。お世辞にもプロとは言えない出来
10 小宮榮秦 6・5
孤軍奮闘というより孤立無援。ブレ球FKも止められる
15 生駒亨 5
バランスをとろうと腐心したが効果はほとんど出ず
6 武藤達朗 5
セカンドボールを拾えずニコルスキーの奮闘を無に
9 窪山隆三 5
後半は及第点ももっと個人技を見せてもいい
11 飯塚健二 4・5
内村に完敗。ほぼノータッチで面目丸つぶれ。
25 ニコルスキー 5・5
ポスト役としては十分。もっと本人がシュートして欲しかった。
20 初田匡 5
よくセカンドボールを拾ったがはっきり言ってそれだけ
17 稲田幸一 −
時間短く、採点なし
31 斉藤保則 −
時間短く、採点なし
C 時任一郎 5
常にリードを許し、手を打つほど停滞した
〜ピックアップ・ヒーロー〜FW9剣崎龍一(和歌山)
「約束にはあと1点足りんかったけど、今日のハットトリックはめっちゃうれしい」
若干18歳の若武者は、満面の笑みでクラブ第1号の偉業を振り返った。
前日に開かれたトークショーで、剣崎は4得点を宣言。最後の空振りがなければ達成できたかもしれないが、誰もが彼の活躍に称賛を贈った。
バリエーション豊富なシュート技術とそれを可能にする超人的な身体能力もそうだが、一番の持ち味は「日本一と言っていいくらい高いシュート意識」(竹内)とチームメートが口を揃え、「苦労して出したパスをシュートに繋げてくれるからパスの出しがいがある」と、相棒の栗栖は絶対の信頼を寄せる。何度でもシュートを打つからその分得点も増え、ハットトリックも達成できたのではないだろうか。
「技術がない上に出し手ありきのFWだからシュートだけは負けたくない」と謙遜する若きストライカーは、いまの日本に欠かせない存在になりえるかもしれない。
試合後コメント
和歌山・今石監督
「お互いに立ち上がりに課題があるんで『開始10分で1点を狙おう』と選手に言ってたけど、15分で2点と予想以上の結果が出た。あのおかげでずっと有利でいられた」
−桐島、竹内の両サイドが非常に機能していたが
「うちのパターンのひとつとして、だいぶ形になった。特に竹内と内村の右サイドは安心して見てられる。左は桐島と村主が、攻撃と守備それぞれに特化してるから、まだまだ改善しないといけない。あとは中央からどう崩すかがまだ課題として残ってる。次の試合に向けてはその点をテーマにして連勝を狙いたい」
−剣崎選手のハットトリックについて
「まあやろうと思えば、あれぐらい楽にできる力はある。ただムラッ気あるからなあ(笑)。あいつ以上に技術のある選手は代表レベルでもゴロゴロいるが、あれだけシュートを打とうとする選手はいない。下手な鉄砲なんとやらで、ゴールはシュート打ってなんぼ。10試合で9得点という結果も当然ちゃあ当然よ」
緊急ニュース〜東京、時任監督を電撃解任〜
会見場は騒然となった。御手洗光彦社長が時任監督と同席で現れて「誠に突然ですが、本日4月22日を持ちまして、時任一郎監督並びに三谷匠ヘッドコーチ、田畑秋秀強化部長の解任を決定しましたのでお知らせいたします」と言ったのである。
この試合前には5連勝を記録するなど、試合を終えた時点で6勝2分2敗と決して低迷していた訳ではない。あまりに唐突な発表に、記者からは解任理由への質問が異口同音に飛んだ。
御手洗社長は「負けている試合での立ち居振る舞い」を理由に上げた。
「連勝前の奈良戦、今回の和歌山戦の2試合に敗れているわけですが、リードを許したときに動揺が明らかに顔に出ていた。昇格を至上命題としている以上、将足る者として相応しいとは言えない。5連勝も、下位クラブ相手に小宮やニコルスキーの個人技で先制しての逃げ切りとワンパターンで、監督としての評価に値しないと判断した」とバッサリと切り捨てた。最後に御手洗社長は、後任や補給についても言及。「監督はすでに合意している。人事権は私が持ちます。選手の補強はまだ検討中ですが、放出の用意はできています。選手たちには改めて昇格が最終目標でないことを肝に命じてもらいたい」と話した。




