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尾道対和歌山マッチレポート

〜尾道の歓喜、3分で水泡に帰す〜(浜田友美)



「無敗の勢いそのまま」(GK玄馬)に和歌山を迎え撃った尾道だったが、「風を味方につけられなかった」(MF金田)ことや、4戦4発の新エース・有川が猪口とのマッチアップに完敗したことで、思わぬ苦戦を強いられた。

 膠着した試合は剣崎の驚愕のロングシュートで破れ、ロスタイムには栗栖が鮮やかなループシュートを決め、ホームの尾道が2点のビハインドを背負う。

「明らかに流れを失っていたので、それを取り返すために賭けに出た」水沢監督は、機能しなかった2トップをそっくり代える。このギャンブルは「吉」と出た。開始早々王が今季初ゴールを奪うと、その後は荒川が立て続けにゴールを奪いハットトリックで初めてリードを奪う。

 後半だけで4ゴールを奪い、決まったかに思えたが、ロスタイムに入るや、混戦のこぼれ玉を友成に本職顔負けの同点弾を決められると、終了間際には「こういう空気になるのを待っていた」内村にパスを奪われて試合をひっくり返された。

「歓喜に浮かれてしまった」(FW荒川)と言ってしまえばそれまでだが、あまりにも「常識外れ」(今石監督)なゴールでのどんでん返しは、尾道にとってはむごいとしか言いようがない。




採点・寸評


尾道


1 玄馬和幸 4・5

前半ロスタイムのトラウマが痛恨の逆転弾を許した

4 モンテーロ 6

巨人2トップに仕事させず相手のプランを狂わせた

5 港滋光 5・5

和歌山の猛攻にひるまず体を張り続けたが…

3 山吉貴則 5

竹内のスピードに手こずり守備に追われる時間が長かった

15 小原伸平 5

良くも悪くも無難なプレーに終始

6 山田哲三 5・5

中盤の主導権を取れたのは彼の奮闘あってこそ

7 今村友来 5・5

パスミスもあったが全体的に安定していた

24 御野輝 6

劣勢の中何度もドリブルで活路見出し同点FK得る

10 金田友和 5

追い風に悩まされ冴えない一日に

16 有川貴義 4・5

猪口に封殺されヴィトルに負担を強いた

11 ヴィトル 5・5

二人分動いて著しく消耗したが骨折り損に終わる




9 王秀民 6・5

持ち前の馬力を見せつけ今季初ゴールでのろしを上げた

27 荒川秀吉 8

指揮官の期待に応える別格の出来。「幻のストライカー」の本領発揮

25 鈴木仁 6

逆転信じモンテーロの分まで奮闘した



C 水沢威志 6

大胆な交代が的中し一度は劣勢をひっくり返した




和歌山


20 友成哲也 6

4失点も好セーブを連発。ゴールも決めた「現代版イギータ」

2 猪口太一 5・5

前半は有川を完封したが後半は王の馬力に後手に回る

6 川久保隆平 4

短時間で二度もファウル犯しあわや戦犯に

3 内村宏一 6・5

したたかな逆転弾で荒れた試合にケリをつけた

26 パク・カンシン 5

目立ったのはキックだけ。守備面で精進が必要

17 チョン・スンファン 5・5

敵の中央突破に耐えたが主導権までは取り返せず

8 栗栖将人 6

芸術的ループのほか再三に渡って良質なパスを供給した

16 竹内俊也 6

右サイドを制圧。時間を追うごとに攻撃力も増した

9 剣崎龍一 5・5

本来のポジションに戻った後半に点を取りたかった

18 鶴岡智之 5

初ゴールは上げたが物足りない印象に終わる

11 沢松勇剛 5

効果的なプレーは殆どできず終始消えていた印象




7 桐島和也 6

左サイドを駆け回り停滞感を吹き飛ばす

15 園川良太 −

時間短く、採点なし


25 野上康生 −

時間短く、採点なし



C 今石博明 5

労した策が効果的とは言えず「選手に助けて貰った」(本人談)



ターニングポイント・チェック〜友成の同点弾〜

 歓喜する尾道に冷や水を浴びせた友成の同点弾だが、常識的に考えて例え思いついたとしても、ボールロストからのカウンターの危険性を考えると、とても実行には移せない。生まれた理由には、ユース時代に叩き込まれた「今石イズム」にある。

 今石監督はユース時代から、ポジションに関係なくシュートを徹底的に練習させ、キーパーやセンターバックにも「ヘディングかミドル、どっちかでいいから出来るようになれ」と言い聞かせた。対照的なライバル、天野もヘディングでゴールを決めた試合がある。

「ストライカーだからって毎日点が取れる訳でもないし、極端な話サッカーはキーパーが点をとっても構わない。11人全員がゴールの可能性を持っていれば、こんな怖いことはないでしょ」

 さらに今石監督はゴール前でのパス回しを禁忌とし、積極的にシュートを打たせることを選手たちに徹底させ、個々のシュート意識の向上に腐心した。「まあ下手な鉄砲じゃないけど、まず打たないと点は入らないしね」

 友成の同点弾のみならず、思えば先制ゴールの剣崎、追加点を上げたが栗栖も、今石に3年間シュート意識を刷り込まれたチルドレンである。闇雲にシュートを打つことに賛否はあるが、高い攻撃思想がこの試合を動かしていた気がしてならない。


コメント


尾道

水沢威志監督

−後半開始から2トップを代えた理由は


「前半の失点があんな形だったので、ショック療法で気持ちを切り替えさせるためにした。正直博打に近かった。代えた二人が良くやってくれて、本当によくやってくれた」


−荒川選手のハットトリックについて


「起用した僕が一番驚いています(笑)。彼のポテンシャルからして点を取ってくれることは期待していましたが、さすが世界中で揉まれただけはありましたね」


−最後は非常にやりきれない結果になりましたが


「相手の発想が私たちの考え方から逸脱していた。それに尽きますし誰も責められない。次の試合までにするべきことはら守備の確認というより、この敗北を消化仕切ることが先決です。滅多に経験できない試合なので『特別な経験が出来た』と前向きに考えさせたいです」


FW荒川秀吉

「ハットトリックしたけど、どんな形であれ負けた以上は喜んでる場合じゃない。あそこ(PKが決まった時)で緊張の糸が緩んだのは、自分たちがまだ甘さがある証拠。上のリーグを目指す中で今日以上にショックな負けもありえる。気持ちを切り替えて次の試合に臨みたい」



和歌山

今石博明監督


−ゲームプランはじめうまく機能していない印象があったが


「う〜ん、痛いとこ突くな(笑)。尾道の最終ラインに対して高さでペースを掴もうとして、風下に立たされても問題ないようにキック力のあるパクを使った。けどむこうのブラジリアン(モンテーロ)が予想外にやられてプランが狂った。後半のゲームメークについては、交代選手の差が出た。むこうの荒川はまじて凄くて脱帽するしかない。今日勝てたのは、選手のおかげ。俺はかえって足を引っ張っただけ」


−友成選手の同点ゴールについて


「ユースの時から見てた選手には徹底したシュート練習をさせていたし、あいつの性格からやりかねないが、まさかやるとは思ってない(笑)。カウンターを喰らったときは責任を全部かぶってもらうことも言ってあるから別に構わない」



Jペーパー 3月26日発売分掲載

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