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悪役令嬢は断罪後、物語の外で微笑む【完結】  作者: あめとおと


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6/7

悪役令嬢、ざまぁを娯楽にする

 ヴァレンシュタイン商会の昼休憩は、だいたい騒がしい。


「会頭! 元王太子さん、今日も帳簿を逆さに読んでます!」

「文字、上下逆でも意味通じませんよね!?」

「通じませんわね」


 エレノアは紅茶を一口。


 ――元王太子アルベルト。

 現在の肩書きは「雑用兼・帳簿運び兼・失敗担当」。


「す、すみません! これは、その……王宮では誰かがやってくれていて……」


「でしょうね」


 ぴしゃり。


「では、なぜあなたは給料をもらっていたのかしら?」


「……え?」


「“立っていただけ”ですの?」


 周囲の商会員が吹き出す。


「アルベルトさん! 次は計算ミスしないでくださいね! 昨日は足し算で赤字出してましたから!」

「足し算……?」


 エレノアはもう一口、紅茶。


 この男、王太子時代は「決断力がある」と評価されていたが、

 実態は――


・書類は読まない

・判断は他人任せ

・失敗は部下のせい


 つまり、今の環境では一切通用しない。


「エレノア様、例の噂ですが」

「ええ、聞いていますわ」


 隣国では、こんな話が広まっていた。


 ――断罪された悪役令嬢、実は有能すぎた

 ――王太子、いなくなって国が回らなくなった

 ――ヒロイン、今なにしてる?


 ちなみにヒロインはというと。


「……え、私、働くんですか?」

「はい」

「王太子妃なのに?」

「“予定”だっただけです」


 現実は非情。


 その様子を報告書で読み、エレノアは肩をすくめた。


「物語って、残酷ですわね」

「会頭が言います?」


「私はちゃんと努力しましたもの」


 その夜。


 アルベルトが書類を抱え、ふらふらしながら言った。


「……あの、エレノア」

「業務中は“会頭”と呼びなさい」


「……会頭。もし、あの時……」


「“もし”は禁止です」


 即答。


「現実では、“やったか”“やらなかったか”しか評価されませんの」


 アルベルトは何も言えなくなった。


 その背後で、商会員たちがひそひそ。


「元王太子、今日も残業確定だって」

「ざまぁ」

「ざまぁですね」


 エレノアは微笑む。


 復讐はしない。

 怒鳴らない。

 罰も与えない。


 ただ、実力主義の現実に放り込むだけ。


「これが一番、効きますのよ」


 悪役令嬢は今日も優雅に、

 ざまぁを娯楽として消費していた。



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