最後に笑う悪役令嬢
私、エレノア・ヴァレンシュタインは、いわゆる“悪役令嬢”だ。
王太子の婚約者として傲慢に振る舞い、平民出身のヒロインをいびり、そして――断罪される運命。
舞踏会の夜、すべては予定通りに進んだ。
王太子は震える声で婚約破棄を宣言し、ヒロインは涙を浮かべ、貴族たちは私を糾弾する。
……ああ、やっぱり来た。
「異議はありませんわ」
会場がざわつく。私は微笑んだまま、一歩前に出た。
「ただし、財産没収と国外追放は、三年前に締結されたこの契約に反します」
取り出した書類に、父と国王の署名。
王太子の顔が青ざめる。知らないはずだ。私が“悪役”を演じながら、裏で何を積み上げてきたかなど。
私はヒロインに目を向け、優雅に頭を下げた。
「あなたは善良な主人公。どうぞ、この国で幸せになって」
そしてくるりと踵を返す。
国外追放? 結構。
私には隣国で立ち上げた商会と、自由と、未来がある。
物語の最後、断罪台で泣くのは悪役令嬢だって?
いいえ。
最後に笑うのは――筋書きを知っていた私ですわ。




