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7 児戯

託児所に着くと、シャオユーとカイ、ユイが、すでに玄関近くで待ち構えていた。


「母ちゃん、俺の好きなお菓子がある!」


「カイ。リョウがもらってきたものなんだから、そういう言い方はしないの」


「いえいえ。せっかくですから、みんなで食べられるものは、みんなで食べましょう。母さん、いいですよね?」


「リョウがもらったものだから、好きにしていいわよ。お母さんは少し用事があるから、先に始めてて。昼までには戻るからね」


「ユイはこの甘いやつが好きー!」


シャオユーにリョウを預けると、リンは踵を返し、街の方へと歩いていった。


 


いつも通り、壁が明るいオレンジ色に塗られた部屋へ入ると、今日は様子が違っていた。

壁一面に、色とりどりの飾り付けが施されている。


きっと、先に来ていたユイやカイが準備していたのだろう。


リョウ自身も、これまで何度か、この「オレンジの部屋」で行われた誕生会で、同じような飾り付けを手伝ってきた。


部屋の床に、貰ってきた食材や軽食を広げる。


ユイがすぐに一つの袋を拾い上げた。

マンゴーを乾燥させ、紙袋に詰めたものだ。


ユイは、本人なりにこっそりと、ドライマンゴーを一枚取り出して口に入れる。


「あま〜い! 毎日リョウの誕生日がいいなあ」


食レポをしてしまっては、隠した意味がない。


「俺はこれ食べたい!」


カイは、そこそこ食べたいお菓子と、とても食べたいお菓子を真剣な顔で仕分けしていた。


 


玄関に行っていたシャオユーが、ガオとランを連れて戻ってくる。


この施設の各部屋には、子供の背では覗けない高さに、玄関が見える壁穴が設けられている。

担当の大人がそこから玄関の様子を確認し、到着時間の異なる子供たちを迎え入れるための工夫だ。


部屋に入るや否や、ガオが床に広がるお菓子を見て駆け寄る。


「カイ、ずるいぞ! 俺もこれが食べたい!」


「みんなで食べようよ、ね?」


ランがガオをなだめるように言いながら、きっちり自分の利益も確保する提案をする。


カイにガオが仕掛け、ランが間に入る。

この部屋では、よく見かける光景だった。


 


「お昼のあとに食べよう。まずは遊ぼうよ」


昼にケーキが待っていることを知っているリョウが、そう提案する。


ケメルデ王国には、義務教育制度が存在しない。

教育は各都市や行政の裁量に委ねられている。


アワル村には、役人や文官を目指すための私塾こそあるものの、九歳を過ぎて壁外へ出ることを許された子供たちは、親の仕事を手伝ったり、将来就きたい仕事に弟子入りするのが一般的だ。


そのため、九歳未満の子供を昼間預かるこの託児所では、読み書きや簡単な計算を遊びの中で教えている。


こういう背景もあり、リョウの言う「遊び」とは、文字や数理的能力を養うためのボードゲームのことを指している。

日本のゲームに例えるなら、運要素を抑えた人生ゲームのようなものが人気だった。


 


「やだよ。リョウばっかり勝って、つまらないもん」


「それはカイが、人の動きばかり気にして窮屈な手を打つからだろ?」


「そうだよ。だいたいカイは、リョウの邪魔をすればいいのに、いつも俺の邪魔ばっかりなんだから」


「いや、しようとはしてるんだけど……リョウがかわすのが上手いんだよ」


「だからって、俺の邪魔が多くないか……?」


「まあまあ。今日は四人対リョウにしようよ! リョウの誕生日だから、特別ってことで!」


「いや、それは僕が不利すぎない……?」


「それ楽しそう! ユイも参加する!」


ランの提案にユイが乗ったことで、多数決はあっさり決まった。


リョウ対四人のボードゲーム対決は、昼になってリンが戻ってくるまで、四時間以上にわたって、何度も繰り返されることになったのだった。

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