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6 朝餉

「リョウ、おはよう。七歳の誕生日おめでとう。朝ごはんを食べたら、シャオユーさんのところに行くわよ」


「おはよう、母さん。ありがとう。……プラムがある、やった!」


……リョウは、年相応の成長を見せていた。


 


この地域では、朝と晩の二食を正規の食事として摂り、昼間に小さなパンや果物を軽食として口にする文化がある。


アワル村の西部、石壁の内側には小麦や陸稲の畑があり、硬いパンや飯を中心とした食生活は、壁内だけで完結できるようになっていた。


リョウとしては、陸稲の飯が嫌いというわけではない。

ただ、水稲の米と比べてしまうのが正直なところで、どうしても飯とパンならパンを選びがちになる。


そのパンも、酵母食パンのようなものではなく、どちらかといえばナンやプラタに近い薄焼きのものが多い。


それ以外の食材は、狩猟や採集によるものを除けば、北方、すなわち王都方面から来る商会によって供給されている。


商会が扱うのは、燻製肉やドライフルーツ、塩漬け野菜といった必需品かつ保存性の高い品が中心だ。

そのため、今朝の食卓に並んだ生のプラムのような新鮮な果物は、どうしても貴重なものになる。


では、生鮮食品はどこから手に入るのか。


実はアワル村には、武装した八百屋とでも呼ぶべき人々が一定数存在していた。

彼らは壁外へ出て、独自に採集や狩猟を行い、その成果を村で販売している。


当然、危険を伴う壁外で調達された食材は、商会の加工品に比べて二〜三倍の価格で取引される。

常夏のこの地域において、唯一比較的手に入りやすい果実といえばココナッツであり、安価なため、必然的に口にする機会も多かった。


 


そんな事情を踏まえると、薄焼きのパン、ココナッツジュース、生のプラムという今朝の食事は、慎ましい生活を送るリョウの家にしては、比較的豪華な部類に入る。


こうしたときに、素直な喜びを言葉にできるようになるまで、リョウは両親やシャオユーを初めとする街の人の愛情を一身に受けて育ってきたのだった。


 


朝食を終える頃には、母も外出の支度を整えていた。

リョウと手をつなぎ、扉を開けて外に出る。


リョウの成長は、同年代の中でも特に早かった。

父が最初の長期遠征から帰ってくる頃には、すでにつかまり立ちができるようになっていたほどだ。


ガオ、カイ、ランはいずれもリョウより早く生まれているが、その誰よりも先に、リョウは歩き始めた。


言葉を話し始めるのも早く、報告出張もとい新婚旅行から戻った両親は、「ママ」「パパ」と呼びかける我が子の姿に、驚きと喜びを隠せなかった。


その後、発音が整うにつれて呼び方が「母さん」「父さん」に変わったとき、二人が揃って小さな寂しさを覚えたのは、今では良い思い出になっているだろう。


心身ともに成長が早い(心の成熟については言うまでもない)リョウは、同年代五人の中で自然とリーダーのような立場になっていった。


ガオがおもちゃを投げて壁を傷つけたときには一緒にシャオユーへ謝りに行き、

ユイがおやつを喉に詰まらせたときには、頼まれて託児所の常駐医を呼びに走った。


立場が人を育てるという側面もあり、リョウは七歳としては非常に賢く、周囲の大人からも一定の信頼を得ていた。


壁の近くまで行くことは許されていないが、簡単なお使いなら何度か経験している。

そのため、家と託児所の往復路にある店の従業員の一部とは、すでに顔馴染みだった。


 


「リョウくん、誕生日だよね? おめでとう!」


不定期に肉を仕入れてくる店の男主人が、リョウとリンに気づいて声をかける。


月に五日ほどしか開かない店だが、肉の質と鮮度が良く、固定客の多い店だ。

朝早い今は空いているが、リンが仕事帰りにリョウを連れて通る時間帯には、いつも人で溢れている。


「あら、リョウちゃん誕生日なの? このお菓子あげるから、みんなで食べなさい」


向かいのパン屋の女性店員が、ラスクのような菓子パンの入った袋を差し出した。


(このパン屋さん、母さんに釜を貸してくれるところだよな……。僕が誕生日なのは、たぶん前から知ってたはずだけど……)


小さな疑問は浮かんだものの、その白々しいほどの演技に含まれる確かな温かさも、リョウには感じ取れた。


「ありがとうございます! みんなと一緒に食べます!」


「どういたしまして。ちゃんとお礼が言えて偉いわねえ」


 


人通りの少ない朝の道を抜け、兵舎の隣にある建物へ辿り着く頃には、リョウとリンの両手は、差し入れられた保存食や菓子でいっぱいになっていた。


子供の数が決して多くないアワル村において、七歳にして利発な受け答えをするリョウは、すっかり人気者になっていたのだった。

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