44 軍議
ビブスありのチームの作戦会議は、アグースと名乗った少年が主導して始まった。
どうやら皆、ある程度はケメルデ語を話せるらしく、作戦会議はケメルデ語で進められる。
「僕とアディは、いつも通りデパーン。リニも一番奥。
ヌルールたちが守るのも同じ。
リョウはテンガーがいいと思うけど、どう思う、ヌルール?」
ヌルールと呼ばれた少年が答えた。
「いいと思う。でも、その前にルールや位置をリョウに教えた方がいいんじゃないか?
僕が教えるから、みんなは続けて話していていい」
聞き取りやすい発音と落ち着いた話し方から、彼が一番ケメルデ語を得意としているのだろうと、リョウは推測した。
「よい提案。ヌルール、お願いします」
アグースはそう言うと、地面に四角を描いた。
どうやらコートを表しているらしい。
さらにアグースがフータンの言葉でいくつか指示を出すと、ヌルール以外のメンバーはその四角を囲むように覗き込む。
一方、ヌルールはリョウの前にしゃがみ、別の四角を描きながらルールの説明を始めた。
「ありがとうございます。ルールは分かったと思います。
僕は中衛という位置で、前衛のアグースさんやアディさんにボールを渡せばいいんですね?」
「その通り。できるなら自分でゴールしてもいい。
魔法は得意ですか?」
リョウは小さな魔法土のブロックを生成し、ヌルールの問いに答えた。
「こういう魔法は使えます。でも、ボールを動かすのはやったことがないです」
「すごい!」
魔法土が珍しかったのか、それとも土魔法を制御できる同年代の少年が珍しかったのか、ヌルールは思わず少し大きな声を上げた。
アグースの輪にいた数人がこちらを振り向く。
ヌルールの声に驚いたリョウの集中が途切れ、魔法土のブロックは光の粒となって消えた。
「この上に立って高いボールを取るとかはできると思いますけど、今のところ、うまい使い方はあまり思いついていないです」
もし魔法のレベルが高ければ、ゴールを覆ったり、水魔法で強引にボールの軌道を変えたりもできるのではないかとリョウは考えた。
だが、そもそも高いレベルの魔法をほとんど見たことがない。
それらの発想が本当に可能なのかどうかも分からない。
大鷲を叩き落としたときのようなイメージで魔法を放てば、干渉できるのかもしれない。
しかし、あれは火事場の馬鹿力のようなもので、発動するたびに気絶していては話にならないのも確かだった。
リョウの言葉を聞き、ヌルールは少し考えるような仕草を見せたが、やがて気持ちを切り替えたように言った。
「ルールの説明は終わった。
次は、チームのみんなともう一度挨拶しよう。チームのみんなの特徴を知っていないと試合が不利になる」
「分かりました。もう一度、みんなの名前を聞いて覚えます」
ヌルールは立ち上がり、アグースたちの方へ歩き出そうとした。
しかし思い出したように立ち止まり、再びリョウを振り返る。
「改めて。私はヌルール。背が高いから後衛で、自チームのゴールの周りを守る。頑張ろう」
「ありがとうございます。リョウです。
何が得意かはまだ分からないですが、みんなと一緒に勝ちたいと思います。頑張りましょう」
二人は握手を交わした。
アグースが屈んだ姿勢のまま顔を上げ、こちらを見る。
フータンの言葉でヌルールと少し言葉を交わすと、アグースは二人を手招きした。
輪の一部が開き、そこへヌルールとリョウが加わる。
アグースが改めて口を開いた。
「僕、アグース。前衛。
この中で一番シュートが得意。
リョウ、よろしく」
リョウが「よろしくお願いします」と返す前に、アグースの隣に座っていた小柄な少年が身を乗り出した。
「僕、アディ。
アグースよりシュートが得意。よろしく」
捲し立てるように始まった自己紹介の意図が、二言目で理解できたリョウは、思わず苦笑する。
「よろしくお願いします」
よく見ると、アディは右手を後ろに回し、さりげなくアグースを牽制していた。
そのまま時計回りで自己紹介が続いていく。
ヌルールの補足を時折聞きながら、リョウはチームメイト八人の名前と得意なこと、そしてポジションを覚えていった。
ふと、ガオはどうしているのだろうと思い、リョウはそちらを見た。
すると、ガオの後ろで中腰になり、作戦会議に参加しているディアンの姿を発見した。
(ずるくないか……?)
教師の号令がかかり、試合が始まる。




