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34 森人

長身の男性が指示を出し、体格の良い男性が外へ出ていく。

少年は、残されたままのリョウに向き直った。


「つきのおわり、どれい、はんばい、される。じかい、よっかご。ともだちの、おや、いなくなった、いつ?」


「五月二十八日です」


リョウの誕生日だったため、その日は強く記憶に残っている。


「ならば、まにあう、かもしれない」


少年は父親に何かを伝える。

しかし、長身の男性は首を横に振り、短く言葉を返した。


それを聞いた少年が、少し言いづらそうに翻訳する。


「どれい、かう、できる、きぞく、だけ」


「貴族だけ?」


「そう。どれい、はんばい、かい、父さん、わたし、さんかできる。でも、あなた、あなたのともだち、さんかできない」


少年は「父さん」と言いながら、左に立つ男性を指し示した。

二人は貴族で、どうやら親子らしい。

改めて顔を見ると、確かに似ているようにも見える。


「参加して、保護してもらうことはできませんか?」


少年が父親に尋ね、返答を聞いてから首を振る。


「できない。おかね、ある。でも、かお、しらない」


(確かに)


リョウは納得せざるを得なかった。

奴隷販売会に参加できるのが貴族だけなら、自分たち三人は入口にすら立てない。


参加できない以上、ユイの両親を買い戻すこともできない。


アワル書店の店主から聞いた誘拐の話は、ここに繋がっている。

リョウはそう確信した。


だとすれば、別の可能性も考えなければならない。


「奴隷になっておらず、僕たちみたいに保護されていることはありませんか?」


少年が父親に尋ねる。

父親は少し長く話し、少年は聞き取れなかった部分を確認してから、改めて答えた。


「フータンは、だいたい、フータンじゃない、もりにきたひと、たいほする。

そのあと、ケタマカンに、とどける。

わたしたち、フータンのなかでも、もりにきたひとに、やさしい。

ケタマカンとは、なかよし、ちがう」


アワルで「森人」と呼ばれていた人々は、自分たちを「フータン」と名乗るらしい。

そして、ケタマカンという名は、どうやらこの地域を支配する有力者のものだ。


自分たちがケタマカンと懇意でない貴族の領内で捕らえられたことは、不幸中の幸いだった。


「ケタマカンと仲がよくない貴族は、他にいないんですか?」


少年は即座に翻訳し、返答を伝える。


「にしのほう、いっぱい、いる。

ここから、ひがしは、だいたい、ケタマカンと、なかよし」


状況は、かなり厳しい。


現在地は分からないが、泉からそれほど離れていないとすれば、南門付近で失踪したユイの両親は、ケタマカンの勢力圏で捕らえられている可能性が高い。


逆に、フータン族に捕まっていなければ、生きている可能性は低い。


(販売会を襲撃するか、売られた後に連れ出すしかないのか)


「販売会は、どこで行われるんですか?」


「ここから、いちにち、ひがし。ににち、みなみ。

あした、しゅっぱつ、したら、まにあう」


距離も時間も、想像以上に厳しい。


リョウが思わず頭を抱えた、その時。


「おい、ちゃんと進むから、押すんじゃねえよ」


聞き覚えのある声が、廊下に響いた。


やがて、ガオとユイ、体格の良い男性、そして見知らぬ女性の四人が、独房の前に姿を現す。


その女性は、リョウが生まれて初めて見る金髪の女性だった。


「おい、どうしてこんな所にリョウが入ってるんだよ!」


ガオの声を、金髪の女性がフータン族の言葉へと変える。

彼女は長身の男性の返答を受け取り、ガオに向かって穏やかに告げた。


「君のお友達のリョウくんは、かなり強い魔法を使ったそうよ。

力尽くで逃げられたり暴れられたりしたら困るから、念のため狭い部屋に入ってもらっていたみたい」


リョウは、その流暢なケメルデ語に、思わず息を呑んだ。


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