表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/37

33 独房

リョウが目を覚ますと、打ちっ放しのコンクリートが視界いっぱいに広がっていた。


背中に触れている床も、ひんやりと冷たい。

おそらく同じ素材だろう。


全身に強い倦怠感が残っている。

体を起こす気力はなく、目線だけで周囲を確認する。


部屋は、せいぜい三メートル四方。

壁のうち三面はコンクリートで、残りの一面には鉄格子が嵌められていた。


独房だ。


(入ったのは、初めてだなあ……)


少し落ち着くと、途切れていた記憶が一気に押し寄せてくる。


アワルの石壁を越えたこと。

ニンニンの森に入り、泉を目指したこと。

大鷲に襲われ、水魔法を力の限り放ったこと。


そして。


絶対に、自分が責任を取らなければならない二人の顔。


リョウは、体のだるさを忘れて飛び起きた。


独房の外は廊下のようになっている。

左側は壁で塞がれていた。


リョウは右を向き、鉄格子を掴み、声を張り上げる。


「ガオ! ユイ! 無事か? 怪我はないか?」


必死な姿が、無実を訴える囚人そのものだと自覚し、少しだけ滑稽に思えた。

それでも、叫ばずにはいられなかった。


「ガオ! ユイ! 聞こえるか?

リョウは無事だ!」




しばらく叫び続け、肩で息をするようになった頃。

コツコツと、靴底が床を叩く音が近づいてくる。


現れたのは、白い肌に、それ以上に白い長髪と眉を持つ長身の男性だった。


革のチュニックにベルト。

首元にはネックレス。

両腕には複数のブレスレット。


装飾は多いが、どこか高貴な雰囲気を感じさせる。


「エテンナフェソーネッペ?」


男性が何か問いかけてくる。


「え?」


続けて、別の言葉。


「エプフェフェヴェフフェソエッセーネッペ?」


意味は、まったく分からない。


男性は困ったような表情を浮かべる。

リョウも、同じだった。


しばらく見つめ合っていると、右側からもう一人の男性が現れる。


こちらは体格がよく、全体にごつごつとしている。


二人目の男性は、長身の男性の前で深く身を屈め、素早く言葉を発した。


その姿勢から、単なる年齢順ではない上下関係があることだけは分かった。


「テーゼエレップニメックースレップ!

ニパサフリッテルトープウセフヴィシェファップ、ニシーレフェヴェフフェソアヴェーゼ」


「エクェレイオーヴァケメルデ?」


長身の男性が聞き返す。


聞き覚えのある単語が混じった。


「ケメルデ!」


思わず、リョウは声を上げていた。


長身の男性はリョウを見つめ、二人目に命じる。


「セクセレップエラトリオーノ」


「ゼー!」


二人目の男性はそう返事をして、廊下の奥へと走り去った。


意味は分からない。

それでも、目の前にいる人たちが恐らく「森人」であることと、「ゼー」が承諾を示す言葉だということは、何となく理解できた。




しばらくして、先ほどの男性と、リョウたちより少し年上に見える少年が現れる。

十歳から十二歳といったところだろうか。


少年は、長身の男性から耳打ちされ、こちらを向いた。


たどたどしい発音で、問いかけてくる。


「あなたは、ケメルデ、しゅしん、ですか?」


ケメルデ語を話せるらしい。


「はい」


リョウが答えると、少年は再び男性に伝え、またこちらを見る。


「まほう、つかった、あなた、ですか?」


リョウの胸が跳ねる。


(泉での魔法を見られていたのか?)


一瞬迷ったが、今さら誤魔化す意味はないと判断し、頷いた。


「はい。その場所にいた、僕の友人を知りませんか?」


「ゆうじん?」


「ともだち」


少年は理解したように頷き、男性に伝える。


しばらくして、翻訳が返ってくる。


「ちかくの、ばしょ。

ふたり、ほご、している」


胸の奥が、少しだけ軽くなった。


少なくとも、無事ではあるらしい。


少年は続ける。


「さんにん、どうして、あそこ、いた、ですか?」


リョウは、正直に話すことに決めた。


どうせ、生殺与奪はこの人たちの手の中にある。


「友達のユイのお父さんとお母さんが、この森でいなくなったからです」


少年は、気の毒そうな表情を浮かべ、男性に伝える。


男性は驚いた顔をし、何かを囁く。


少年は、苦しそうな顔で翻訳した。


「ケタマカン、ゆうかい、した、かもしれない。

みなみの、くに。

どれい、はんばい、する、かもしれない」


(ケタマカンは、恐らく人の名前なんだろうな......)


有力で、そして最悪の可能性。


生きているかもしれない。

だが、それは救いとは限らない。


リョウは、その重さを受け止めきれず、何も言葉を返せなかった。

新言語は一定のアルゴリズムに則って作っているので、復元は可能なのですが、普通にめんどくさくなってしまったので、今後あまり登場しない予定です。

解読できたらコメントしてみてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ