18 師事
週8投稿は今週までの予定です。来週まで複数投稿(日曜4本投稿)の予定ですが、そこからはマイペースに投稿していきたいと考えています。
「魔法は、どこからでも物を作る技術だ」
ガイはそう前置きして語り始めた。
「ロウシンなどの医官は、医療器具や患部の補修に用いるし、建築関係ではコンクリートを流し込む型作りなど、様々な場面で使われている。
だが、兵士の中で魔法を実用的に使う人間は案外少ない。魔法職の割に給料は低いしな」
子供たちの視線が自然と集まる。
「それでも、魔法だけで食っていけるほどではないが、ある程度使える人は確実に存在する。
なあ、チョウガン」
突然自身の父に名前を振られ、リョウは驚いた。
「ああ。医官の治療を見て覚えた程度だがな。止血と、骨折箇所の一時固定くらいはできる」
父が魔法を使える。
その事実に、リョウは小さく息を呑んだ。
「このように、用途を絞って魔法を使う者もいる。なぜ絞るのか?
理由は単純だ。魔法には副作用がある」
ガイの表情が引き締まる。
「使いすぎると、脳が焼き切れて意識を失う」
子供たちは一斉に息を詰めた。
「そのため学園では、意図的に意識を失うまで魔法を使い、自分の限界を知る訓練がある。
限界値は十五歳頃まで成長を続けると言われているが、これを怠ると......」
ガイは少し間を置く。
「例えば、魔法土の型にコンクリートを流し込んで壁を作っている最中に、型が消えたらどうなる?」
リョウの脳裏に、術者や作業員が生き埋めになる光景が浮かび、背筋が冷えた。
「実際、こうした事故は年に数回起きている。
これが魔法の副作用の一つだ。他にも、連続使用が難しい、近距離で大規模魔法を使うと干渉する、など制約は多い」
ガイは軽く肩をすくめる。
「要するに、魔法は便利だが危険だ。まずはそれを覚えておいてくれ」
そう言って、ニヤリと笑った。
「さて、実践だ。この中で、自分の魔法の限界が分からない人は?」
子供三人に加え、ホウとチンハオが手を挙げる。
「おいおい、チンハオもか。二等兵曹からだったな……まあいい」
ガイは弓を構え、数十本の矢を真上へ放った。早業だ。
矢は高さを調整され、空中で同じ軌道に収束し、七人の頭上数メートルで消える。
「手を伸ばして、矢の痕跡を感じ取ってみろ。少しでも感じたら、その感覚を覚えるんだ」
リョウは天に向かって手を伸ばす。
そこには、これまで浴場で感じていたものより、遥かに濃密な魔法粒子の気配があった。
(ガイさんの矢も、この粒子でできている……)
粒子が結合していく様子を思い描く。
リョウの頭の中でのイメージは、化学の教科書で見た、水分子の水素結合の様子。
その瞬間。
七人の頭上に、濃い緑色の液体が次々と生成され、重力に従って降り注いだ。
リョウは、そのまま意識を失った。
目を覚ますと、チョウガンとガイが話しており、白衣の女性がこちらを向いていた。
どこかの医務室らしい。天井も壁も真っ白だ。
「リョウくん、目を覚ましましたよ!」
「気がついたか、リョウ」
「父さん……ここは……」
「練兵場の治療室だ。魔法の使いすぎで倒れた」
チョウガンは一拍置き、続ける。
「これから毎週ここに通う。ガイが面倒を見てくれるそうだ」
「よろしくお願いします、リョウさん」
「……その代わり、こっそり魔法の練習はするな。母さんには黙っておく。ここで約束しろ」
一瞬の沈黙。
リョウは静かに頷いた。
否定する選択肢は、最初から存在していなかった。
「分かりました。ありがとうございます」




