11 収束
リョウは冷や汗をかいていた。
リンが怒っている原因は、元を辿れば自分のわがままにある。
とはいえ、現在怒りの矛先はチンハオさんとロウシンさん。
(黙っていれば、たぶん乗り切れる......!)
「チンハオさん。あなた、南西の事件のことを忘れたの?それともうちの夫が教え忘れたのかしら?」
どうやら、チンハオはチョウガンの部下らしい。
リョウの中で、自身の父親の名を知るきっかけになった兵士と、今自分の目の前にいる項垂れた兵士が合致したのだった。
(父さんは遠征帰りに、同じように母さんに怒られるんだろうか?)
「い、いえ、チョウガンさんには優しく教えて頂きました。その中には当然その事件と魔法に関する扱いも......」
「あら。じゃあ厳しさが足りなかったみたいね。夫に伝えておこうかしら」
「いや、それはその......」
「何かありますか?」
「いえ、ロウシン先生が彼らに魔法行使の瞬間を見せてしまったという経緯がありまして......」
「はあ?なるほど......ロウシンさん。こっちを向いて下さい。ユンくんへの処置は済んでいるじゃない。何かユンくんの患部をいつまでも覗き見ている必要があるんですか?」
「経過観察は患者を見る上で欠かせないことじゃから......」
「ロウシンさん。魔法の取り扱いに関して市で決まったことを忘れてしまうようなら、魔法医は務まらないと思うわ。そういえば、そろそろメイユちゃんが国立魔法医師院から帰ってくるんじゃなかったかしら。配置転換を提案しておきましょうか?」
「リン殿、本当にすまなかった。チンハオ殿が中途半端に見せるくらいなら全て教えてしまえとおっしゃったので......」
「いやいやいや、全責任を負うとか言ってただろ!?」
「それは話の流れが飛躍しておる。そもそも......」
二人の大の大人が見苦しく言い訳を続ける様を黙って見ていると、シャオユーが三度医務室にやって来た。
今度はリョウも逆らうことなく、三人はシャオユーについて行くことで、リンの怒りの荒波から逃れることができたのだった。
「パパとママ大丈夫かな?」
ふとユイが足を止め、誰にともなく問いかける。
シャオユーが答える。
「きっと大丈夫よ。しばらくはうちに泊まって行くといいわ。それと、これはリョウとガオもだけど、医務室で見たことは絶対に他の子に伝えたらダメよ」
「「「はい」」」
三人とも同じ気持ちだった。
リンのあの様子を見た後では、そんな気には到底ならないのだった。
リョウを含む四人がオレンジの部屋に着いたとき、カイとランはゲームの戦略を立てていた。
七歳児は切り替えが早い。
シャオユーが、ユンは治療により回復したこと、ユイの両親は現在兵士によって捜索されていること、子供たちを血が流れるところに連れて行ったチンハオはリョウの母であるリンに大目玉を食らっていることを子供たちに共有すると、子供たちはすぐにゲームを始めた。
途中でランの父親が迎えにきて、そこからは一対三になったものの、リョウは負け続けた。
リョウが多少上の空な部分があったことは否めないが、カイとランが練り上げた戦略が素晴らしかったことも確かだった。
結果、玄関口で事情の説明をしていたリンと説明を受けていたガオの父親が揃って迎えに来るまでに、リョウの戦績は、三勝六敗になっていた。




