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キライな幼馴染の距離感がバグっている  作者: おおりく


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2/10

2 堤防の向こう側、告白の誤算

放課後。


俺は約束通り、学校から一番近い砂浜に向かった。制服のズボンの裾を少し捲り、裸足で砂を踏む。太陽はまだ高い位置にあるが、空気が少しずつ冷たくなり、夕暮れの気配が漂い始めていた。


汐音は、いつものように堤防のコンクリートに腰を下ろし、海を眺めていた。潮風が彼女の髪を揺らし、その横顔は、朝に見せたようにどこか真剣で、妙に綺麗に見えた。


「来たな、海斗」


振り返った彼女は、少し緊張しているように見えた。その雰囲気が、俺の胸のざわつきをさらに大きくする。


「で、話ってなんだよ。体育館シューズの件なら、もう解決しただろ」


俺はわざとぶっきらぼうに言った。余計な期待を抱きたくなかった。


汐音は立ち上がり、ポケットから何かを取り出した。それは、小さく折り畳まれた**手紙**だった。


「あのさ、海斗。ちょっと座って」


俺は言われた通り、汐音の隣に少し離れて腰を下ろした。


「実はね、私…」


彼女はそう切り出すと、手紙を固く握りしめたまま、言葉を選んでいるようだった。その間、耳に届くのは、波が砂浜を洗う単調な音だけ。


「私、海斗のことが、好き」


その瞬間、潮風が止まったように感じた。


俺の頭の中で、波の音が嘘みたいに遠のいた。


「…は?」


思わず出た声は、予想以上に間の抜けたものだった。


「だから!好きだって言ってるの!恋愛的な意味で!」


汐音は顔を真っ赤にして、持っていた手紙を俺の膝に押し付けてきた。


「ちょ、ちょっと待て。意味が分からん。お前、いつも俺のこと『冷たい』だの『つまんない』だの言って、やたらと**くっついてくるのは、からかってるだけだと思ってたぞ」


「からかってない!あれは全部、**アピール**!海斗は鈍いから、これくらいしないと気づかないかなと思って」


俺は押し付けられた手紙を慌てて避けた。


「ふざけんな!それがアピールとか、距離感バグりすぎだろ!俺がお前のこと、心底嫌いだったって知ってるだろ!」


「知ってるよ!」汐音は叫ぶように返した。


「でもね、海斗。私、高校に入ってからずっと、お前の態度が変わるたびに寂しかったんだ。それで、どうしたらいいか分かんなくて…とりあえず、距離を縮めることしか考えられなかった。うざいって思われても、話しかけていれば、昔みたいに戻れるかなって…」


汐音は膝を抱え、俯いた。その声は震えていた。


「でも、もう無理。このままうざがられ続けるのも辛いし、**ちゃんと伝えたかった**。だから、返事は今すぐじゃなくていい。これ、読んで」


彼女はそう言うと、手紙を俺の隣にそっと置き、立ち上がった。


「…じゃあね、海斗。私、先に帰る」


汐音は、振り返らずに堤防の階段を登っていった。その背中は、朝の軽やかさとは違い、ひどく重く見えた。


俺は一人、夕日に染まり始めた砂浜に取り残された。


膝の隣に置かれた、折りたたまれたままのラブレター。


俺はそれを拾うこともできず、ただ遠ざかる潮騒の音を聞いていた。


嫌いだった幼馴染の、バグった距離感の裏に、まさかこんな**告白**が隠されていたなんて、全くの**誤算**だった。

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