足音
そろそろ夜が涼しくなってきた頃。
私は、花火大会に来ていた。
最初の花火が上がるまで、まだ時間がある。
屋台には人が群がっていた。
普段より高いそれを手に入れる為に、人々が列を成す。
まだ少し暑かったので、かき氷を買った。
削りたてのかき氷。
硬質を感じさせるその見た目は、何処か宝石の原石のようだ。
青い原石。
ブルーハワイって、どんな味が元なんだろう。
じっと見ていたら溶けてきたので、急いで食べ始める。
冷たい。
最初の花火が打ち上がった。
みんなが1つの方向を凝視している。
鮮やかな閃光と、時間差で響く一瞬の轟音が、周りを魅了する。
一説によると、打ち上げ花火は元々、慰霊のためにあったらしい。
今は昔とは花火そのものが変わってるから、感じる風情も違うだろうか。
花火が次々と打ち上がる。
大輪がいくつも咲く。
小さな花火が連続して爆ぜる。
赤、青、黄、緑、桃。
お盆で此方に来た霊たちも、楽しんでいるだろうか。
役目を終えた火の粉が、力尽きて堕ちてゆく。
あっという間に、時が過ぎてゆく。
最後。
とびきり大きい、光が、音が。
爆ぜて、散って。
消えた、
帰りを促すアナウンス。
流れる人混み。
泣き叫ぶ子供。
酔い潰れた大人たち。
空に残る煙。
少しずつ、夏が終わろうとしている。