表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

二度目のプロポーズ

※アカウント、パスワード等は他人に教えてはいけません。物語上の演出です。


 心の整理ができた康馬は、改めて杏菜の線香を上げに行った。

 自分の愚かさを語り、夏実にも許してもらえた。



 そして、杏菜が生きていると思い込んでいた最大の理由−−ウェブ小説の更新について知らされる。杏菜が託した日記を持っていた杏菜の友人に話を聞けた。

 何でも、杏菜はアカウントもパスワードも全部託したらしい。そこまで信用されている杏菜の友人に嫉妬もしたが、感謝の気持ちを伝えた。





 康馬が自分の愚かさを知ってから五十四年。百歳の誕生日を迎えた翌日、康馬は天寿を全うした。


 みどりは先に見送ったから、康馬が死ぬ時は老人ホームだった。

 最後まで一人。

 それでも五十四年−−否、八十年もの間、康馬はたった一人を愛し続けていた。





 ここが三途の川か。さすがに時間が経ちすぎているから、もう会えないだろうな。


 そんな風に思いながら康馬が船で川を渡っていると、 見覚えのある姿が目に入った。


 まさか、そんな。


 康馬は思わず目をこする。六十年前、康馬に病気を悟らせずに逝った杏菜がいた。

 死後に職を得て体力がついたのかと思えるほど、健康的な肉付きになっているような気がする。

 康馬が好きだった長い黒髪も、心なしか艶 が出ているような……。


 川岸で船を縄で固定している杏菜を凝視していると、 康馬の視線に気づいた。杏菜と目が合う。

 康馬は船から飛び降り、足をもつれさせながら駆け寄り、杏菜を力強く抱きしめた。そしてすぐに離れて謝罪する。


「わ、悪い。俺に抱きしめられるなんて嫌だよな。じいさんだし、自分のことばっかりだったし…」


 慌てていると、杏菜がふふっと笑い声をこぼした。そして、死後は自分が望む姿になれるのだと説明を受ける。

 その瞬間、康馬も若返った。


「康馬さん。友達から聞いた。私の日記、読んだんでしょ?」


 にこりと微笑む杏菜が、少し気恥ずかしそうに右手を差し出す。

 すぐに何を求められているかわかり、杏菜の前に膝をつく。杏菜の手を取る康馬の手は、まるでニ人が出会った頃のように艶があった。


「杏菜。生涯君を愛すると誓う。欠陥ばかりの俺だけど、俺と結婚してくれないか。それでまた、髪の毛を乾かしたい」

「喜んで。またお願いね」


 杏菜から返事を聞くや否や、康馬は二度と離さないように手を繋ぐ。

 そして輪廻転生の判断がされる裁判の列 に並んだ。


(……たとえ生まれ変わっても、俺は何度も杏菜にプロポーズする。生涯愛したい相手と、また会えたのだから)



ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


どこかのエピソードに共感できたり、楽しめたと思ってくださった方は★をいくつか入れていただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ