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第12話 その目は開く

「そうですか。……なら余計な期待は不要ですね! よかったです」


 俯くマリアと『代表者』の実質的な不在に驚くアルバの横で、リンは嬉しそうにそう言った。


「えっ……?」

「おまっ!? 話聞いてたか!?」

「もちろん、ちゃんと聞いてたわよ。……え、そんなに驚く?」


 微笑みを見せるリンに集まる「理解不能」といった視線。

 さっきまで我関せずとお茶を楽しんでいたプニュリアでさえ、目の色を変えてこちらを見ている。だが、別に嬉しいのは事実としても、これは推測が当たったのが半分、不思議だった前提部分が解決したのが半分だ。


 だから決してフラワ国王の『代表者』権限が想定通りに使えないことに対する、諦めの笑みではない。むしろリンは『代表者』と、それを構築する人々の関係性を理解している。


「そりゃ~、な。普通笑顔の場面じゃないだろ」

「疑問が解決して計画を立てやすくなったから笑ったの。悪かったわね」


 マリアが難しいと言うなら、そうなのだろう。

 一般的な界法師と違い、彼らは一人の意思と意志で界法の効果を発動できない。当然だ。『代表者』とは言葉通り集団における代表でしかなく、この国で新たに法や界法を創ろうとすれば議会の承認や国民の投票が必要になる。同時に、既に作られた法や界法であっても、条件による発動まではともかくその効果や威力などは集団全体の意思と意志に左右されてしまう。


 王が法の統治を望もうとも、国民が従わなければ無法だ。

 同じく、国民の総意は『代表者』からその権限を剝奪できる。


 その結果生まれる界法効果の強力さは、言うまでも無いだろう。

 自由を拘束。生命の剥奪。正当なる法の名の下、条件を満たし発動された者は善悪に関わらず速やかに記された効果を受ける。片方では罰と呼ばれ、もう片方では福祉や援助と呼ばれ。


 これらに人の手を介さず行えるのが、界法師としての『代表者』の権限だ。

 対テロにおいては界法を発動後、敵と定めた相手の身体と精神の自由に多大な抵抗を与える。こうなっては指一本動かすどころか、界法一つ発動させるのすら難しく、それに加えて味方陣営は身体の強化や自己治癒力の強化など、その集団によって定められた規則・法の下、強力かつ様々な支援や補助効果を得られるのだ。


「それでマリアさん、実際どのくらい厳しいんですか? フラワって結構国民の意識が一致してると思ってたんですけど」


 だが、それは当然敵も同じ。

 アイン教も集団である以上、その頂点には指導者たる『代表者』がいる。国なんて規模では無いにせよ、信徒に身体強化や自動回復、そして自爆を与えられるほどの規模であるのを認めなくてはいけない。


「ええ。実際、国民の皆様の意見はかなり一致しています。ですが、現女王であるローゼリア陛下はまだ十二歳。お父上である前国王陛下が亡くなってから四年経ちますが、やはり不安の種は摘めないようでして」

「なるほど……そこに治安の悪化やアイン教の噂。それで『代表者』の権限が分散しているんですね」


 となると、やはり一番の問題は敵の侵入経路。

 国家の界法の手助けが期待できない以上、向こうの界法による侵入は防ぎきれない。また内部の者による手助けがアイン教側にあるのも事実だろう。でなければリンがここへ来るのを襲撃できるはずが無い。


 そして、それをマリアの目を逃れて企てた者がいる。

 恐らく目の代行者を知る、身近な誰かが。――そう考えるのが自然だろう。


「では、次はワタクシから質問させてください」

「いいですけど、私がアイン教に狙われる理由なんて思いつきませんよ?」

「フッ。だが貴様は事実狙われた。そのうえ、あの異常者共は貴様の生死を計算に入れていない。ならばアイン教の目的は貴様自身ではなく、関りある何かなのだろうな」


 疑問の種をある程度解決したリンに、今度はマリア達から質問が向けられる。

 しかしリンの回答は最初と変わらない。そもそも、プニュリアが言っていた『力』だって誰が知っているというのか。確かに異様と思われた過去もある。だが、現状リンが優れた界法師だと知っているのはこの場にいる三人とガーネット。あとは南端の禁足地にいるだろうメリュ師匠くらいだ。


 だから、敵が知るはずないのだ。そのうえ、リンが個人である以上は国なんて規模の集団に……『代表者』に勝てるはずない。仮にリンがアイン教に組したとしても、マリアや騎士団含む国家に、国の界法が十分に発揮されなくとも負けるはずだ。


 それこそ、個人の界法で国や世界なんて規模の存在と対立し干渉したくば、創世の唯一神であるヴァニタスか『災厄の魔女』たるメリュラント・ラングルス・クトゥブーリカでも連れてくるしかない。


 もちろん、出来るものなら、だが。


「う~ん……その結果私が黒い波を出してフラワを滅亡させる未来……。一番マリアさんの見た未来に近しいのは、私が『セカイ』を暴走させた場合なんでしょうけど、だとしたら私の肉体が残ってるのは不自然ですし、何よりさっき襲う理由がありません」

「そうなのか? 分かんねぇけど、仮にリンが暴走したらどうなるんだよ」

「そうね、まぁ暴走するのは『セカイ』とか細かい部分は置いておくけど……」

「置けてなくない?」

「んんっ! 要は内に宿した『セカイ』がなんらかの理由で外殻を失い、宿主の精神世界すら飲み込んで肉体の枠から溢れ出てしまった状態を『セカイ』の暴走って言うの!」


 アルバの素朴な疑問にリンはなるべく正確に答える。

 繁雑な状況だからこそ、前提を固めるのは大切だ。つい先程も丁寧に推理を深めたからこそフラワの『代表者』問題に行きついた。あれが無ければ、正直リンは自分と大切な人達だけを守る判断をしていたはずだ。


 対してアルバは、説明を聞いたそばから疑問が溢れてくる。


「ん? じゃあリンの場合、やっぱ黒い波みたいなのが出てくんのか?」

「だからねぇ……。あ、ごめん。先を話し過ぎた」

「???」

「簡単に言うと、宿した『セカイ』が界法師の肉体を物質世界として現実に顕現しちゃうの。実体のある神とか、化身みたいな? だから私の場合アンタが自然界と聞いて思い浮かぶようなのが溢れるはず。黒い波なんて、単一の存在だけが溢れるなんてのは『セカイ』の暴走じゃあり得ないはずなの」


 そう言うリンに途中いきなり謝られたのも分からないが、説明を最後まで聞いてもアルバはその『暴走』とやらが理解できず、少し傾けた首を更に傾ける。


「え~っと? とりあえず暴走したら人の形は保てない。リンは黒い波を出さないから、やっぱり犯人じゃないってことか?」

「そっ。そういうこと……ってかアンタ首ねじ切れるわよ?」


 一先ずアルバは彼女から聞いた情報を自分なりに解釈し、一応の同意を得る。

 リンの難しい説明には慣れっこだ。それに間違っていればまた教えてくれるという信頼もある。結局アルバの中で『セカイ』の暴走とは、温め過ぎた卵が爆発するみたいなもんだと理解し、ひねり過ぎた首を真っ直ぐに戻した。


「なるほどな~。ん? じゃあなんでマリアは生きてんだ?」

「ワタクシの場合は完全に暴走する前でしたから。肉体に影響が出る前に助けて頂いたので」

「つまり半熟で済んだと」

「アンタ卵で考えてる?」


 停滞した議論に思考の脇道が生まれ、結果的に三人の不安は和らいだ。

 だが、決して楽観的になれる状況ではない。マリアの見た未来では間違いなくアイン教がリンを捕らえ、その後に黒い波のような何かで以ってフラワ全土を飲み込み滅ぼしたのだ。


 問題は、リンの意見が至極正しいこと。

 彼女の『セカイ』が自然界だと見抜いているマリアも、同じ『代行者』として万物を飲み込み消し去る黒い波など、ありえないと理解している。可能性があるとすれば自分が見たリンが別人だったか、彼女が宿す『セカイ』が自然界ではないかの二択だ。


(……しかしワタクシが変装や変身の類を見抜けないはずありません。それにリン様は心の底からご自身の『セカイ』を自然界と思っていらっしゃる。……そんなこと、あり得るのでしょうか?)


 残る可能性は洗脳や思い込みによる認識のズレ。

 ただこちらも「あの効果を持つ黒い波を創り出せる『セカイ』とは何か?」という問いに対する答えにはなり得ない。大体にして、すべてを飲み込む黒い波なんて存在から連想できる概念が、自然界と結びつかないのだ。


「……やはり、使わざるを得ませんか」

「お、なんだよマリア。なんかあるなら最初から――」

「やめろマリア!」

「「ッ!?」」


 何か、決意を決めた様子のマリアにプニュリアがテーブルを叩いて叫ぶ。

 今まで黙っていた彼女の突然の激昂にリンとアルバは目を丸くし、二人の次の言葉を待つしかなかった。


「大司教たる貴様が何故そこまでする必要がある!?」

「あらプニュちゃん。ワタクシを気遣ってくれるのですか?」

「茶化すな愚か者。どうして貴様はそう自らを犠牲にする!? この人間が敵の狙いと分かっているのだ、ならば地下ここにでも封じて迎え撃てばいい!」

「プニュちゃん? そのような言い方は……」


 立ち上がり怒るプニュリアに、さしものマリアも困惑する。

 しかし言い分が、分からない訳ではない。むしろプニュリアの言葉はテロの被害を抑えるだけならば、かなり有効な作戦だろう。


「ならば我がはっきりと言ってやろう! 奴らの狙いがアトプルマウの秘宝だけではないと分かった今! せめてこの娘を国外に――」


 だが、それは決して法と秩序を守る薔薇十字教会の大司教が民の前で口にしていい言の葉ではないのだ。


「プニュリア! そこまでです。これ以上の発言は、主人として許しません」


 故にマリアは使い魔の主人として、その口を塞ぐよう強い口調で遮る。

 放たれた言葉はもう戻らない。今更権限でプニュリアを止めたところでリンは傷ついただろう。特に、その案が分かりやすく有効的だからこそ。


 そう思ってマリアは急いで彼女の方を向き、謝罪しようとした。ただ直後、リンから返ってきた言葉は完全に想定外のものだった。


「か……かわいい」

「はい?」

「あぁいや、マリアさんがプニュちゃんって呼ぶ理由が分かったので。確かに、これはプニュちゃんだなって。アハハ」


 振り返った時、リンの視線は自分ではなくプニュリアに注がれていた。

 何せマリアの主人としての権限で抑え付けられた吸血鬼の姿は、リンが先程まで見ていた傲岸不遜に相応しい美女から、可愛らしい幼女の姿になっていたのだ。


「その、申し訳ありませんリン様。大司教として、法の不自由の中での自由は絶対に尊重されなくてはいけないものです。ですので先程プニュリアが言ったような事は決して行わないと、薔薇と桜に誓いましょう」

「……あっ、別に大丈夫ですよ? むしろプニュちゃんの言ってることは間違ってないですしね」


 等身が一瞬で小さくなったプニュリアに意識を持っていかれていたリンは、急ぎながらも誠実に謝罪するマリアの言葉にすぐ反応できなかった。


 だがそれもこれも、プニュリア改めプニュちゃんが可愛らしすぎるのが悪い。

 恐らく権限で発言を封じられた彼女は「ん~!」と頬を膨らませながら怒り、小さな手足をバタバタとして暴れ、全身で怒りを表現している。けれどマリアは駄々をこねる我が子をあしらうように幼い体躯をヒョイと持ち上げ、自身の膝の上に座らせたのだ。


「えへへ。むしろ気にしてないので、マリアさんはどうぞ続けて下さい」

「そう? ですか? ……ほらプニュリアも、後でリン様にちゃんと謝って下さいね?」


 マリアの言葉に、プニュリアのムッとした紅の瞳がリンの視線とぶつかる。


 あれだけの威厳を放っていた魔界の女王が、今や子ども扱い。

 正直テロの件はリンからすると、これ以上の進展が望めない。ならばせめて目の前の幸福をありのまま幸福と受け入れた方が人生が豊かになる気がする。


 もちろん、いつまでも楽観できる訳ではないが。


「おいリン、そんな緩んでていいのかよ?」

「え~? だってプニュちゃんのほっぺがぷにゅぷにゅなのが悪くない? これなら私、ずっと地下に閉じ込められててもいいかな~って」

「おまっ、本気で言ってんのか?」

「え~?」


 緩み切った態度のリンに、苦言を呈すアルバ。

 明らかに彼女らしくない。と、二人のやり取りからマリアは即座にプニュリアの力を更に抑制する。


「プニュリア? 今すぐ【魔眼】と【魅了】を解除しなさい。これは命令です」

「ぐっ、ぅ……。マ、リア。貴様には、我が念願を叶えるまで、死なれては困る」

「安心してください。ワタクシも界法について学びましたから、ここで『セカイ』に飲まれるような真似はしませんよ」


 完全に鎮静化した吸血鬼を膝から持ち上げ、隣の席に置く。

 そうして立ち上がったマリアはそのまま認識を正常に戻したリンの下へ歩き、プニュリアから受けた影響がどの程度か確認する。


「リン様? 大丈夫ですか?」

「アハハ。一応、なんとか? ちょっとまだ頭が痛いですけど」


 反射的に苦笑いするリンと、目を閉じていても心配しているのが分かるマリア。

 二人の姿に、行動に、言葉に、アルバはずっともどかしさを感じていた。きっと自分では役に立てない。けれど、少しでも二人の負担を減らしたい。


 だって二人は、自分には見えない何かとずっと戦っている。

 それなのに一人で抱え込み、誰の手も借りないように平然と振る舞っている。


 アルバには、それが分かる。

 かつての自分がそうだったように。そして、リンと出会って変われたからこそ、自分を信じて欲しい。


「なぁマリア。そんなに危ないのか? さっきやろうとしてたのって」

「そうですね。先程、リン様が仰っていた『セカイ』の暴走の話は覚えていますね?」

「ああ」


 軽く頭を押さえるリンの後ろから心配そうに覗き込むアルバに、マリアは淡々と告げる。きっと、目の前の少女は同じ『代行者』として薄々気付いているはずだ。


 これから自分がどのような界法を使うのか。その代償も含めて。


「ワタクシ達『代行者』は、多かれ少なかれ『セカイ』に選ばれ、好かれるだけの要素を持っています。それだけ、かの存在とワタクシ達には共通点があり、親和性が高いのです」

「あ~、それは前にリンから聞いた気がする。似た『セカイ』に選ばれる奴らは全員似た者同士ぃーみたいな」

「ええ。そのため『代行者』は潜在的に『セカイ』を暴走させるリスクが高いのですよ。自身の思考と、『セカイ』の想いが近いが為に。複雑かつ膨大な情報量の界法で脳が疲れ切り、頭に響く声が自身か『セカイ』か分からなくなってしまえば……」

「頭を『セカイ』に乗っ取られるってことか!? えっ、全然大丈夫じゃないじゃん!」


 マリアの言葉に、彼は以前リンに界法師とは頭に他人がいる者と教わったのを思い出す。

 あの時は純粋に例えとして、そうなのかと納得したが、こうしてリスクやデメリットを知ると途端に恐ろしく聞こえてくる。ただ頭の中で他人の声が聞こえるだけならまだしも、その存在が自分自身に成り代わるかも知れないなんて。しかも、自分と限りなく近い他人が、だ。


「マリアさん。本当に大丈夫なんですか?」

「はい。本当はプニュちゃんの視界と脳を借りる予定でしたが、より条件と範囲を厳しく絞って使えば問題ないはずです」

「それで、その界法で何を見るんですか?」

「……リン様の過去。そのすべてです」


 心配するリンの表情に、より険しさが深まる。

 後ろで聞いていたアルバも、マリアの言葉に危険を感じた。


「ならそのプニュリアの役、俺がやる。出来るんだろ?」

「えっ? ええ、ですがその場合――」

「いい。どうせ痛いとか辛いとか、そういうのだろ? それでマリアの負担が減るなら、俺は目でも頭でも貸すからさ」

「そう、ですか。分かりました。ではアルバ、早速こちらへ来てワタクシと目を合わせて下さい」


 そうしてアルバはマリアの瞳をしばらく見つめた後、手で促されるがままリンの方を向く。


 最初こそ違和感の激しい視界に戸惑っていたようだが、やるべきことはリンを見るだけだと言われて大人しく、なるべく動かないように専念した。


「どうアルバ? 大丈夫そ?」

「おう。俺が見てんのに左に俺がいるから気持ち悪いけど、それ以外は問題なし」

「痛いとかは?」

「う~ん。若干頭がピリピリする気がするけど、全然気になんねぇな」


 アルバとマリアに真っ直ぐ見つめられ、恥ずかしさに話題を振ったリンだったが、返ってきた彼の能天気ぶりに思わずため息を吐く。


 普通、他人の精神や肉体に干渉する界法には互いに抵抗による激しい苦痛が伴う。

 別段界法に限らないが、激しい罵倒や麻酔の無い手術などと同じだ。それを、いかに苦痛を少なくするかが界法師の技術や互いの信頼関係なのだが、日頃から対象の心身に侵入し干渉する【華凛かりん】を使うリンならばともかく、マリアとは初めてのはず……。


 そこから逆算し、考えられる可能性は。


「アンタ、絶対催眠術とか受けないでよ? 私でも治せない可能性あるから」

「あ? どういう意味だおい」


 純粋無垢な、白いパレット。

 この前鼻から花を咲かせた時も感じたが、彼はあまりに界法を通しやすい。もはや来るもの拒まず去る物追わず。言われた事や向かってくる干渉効果をそのまま受け入れてしまうのだろうか。


 それも、ある種の才能ではあるのだが。


「……ではリン様、少し痛いでしょうが我慢してください」

「はい。分かりました」


 などとリンが考えている内に、マリアの準備が終わったようだ。

 彼女は一度大きく深呼吸してから光を失った目を開き、詠唱を始める。


「【我が瞳は三界を見通す第三の眼。第三の視点。それは開闢を見届けし神の眼にほかならず、眼前の少女の世界を透かし見る】――」


 その最中、リンの意識はマリアの瞳に。

 そこに映る自分を見つめ、更に映る自分を見つめ、見つめ、見つめ……。

 鏡合わせになった互いの瞳の奥を、まだ界法が発動していないにも関わらず覗き見ていた。


「――【神眼しんがん】」


 瞬間、まるで突然の停電で事切れたテレビのような痛みと共に、目の前が真っ白になる。

 リンの意識は完全に現実から分断され、ただ一つの視覚に集約される。痛みも、寒さも、恐れも、音も、何もかも遠くにすら感じる目の前の白い景色から感じ取れる。


 眩しさに目が眩んだのだろうか。

 それとも瞳を白く潰されたのだろうか。


 しかしリンにとっては永遠に思える苦痛の中、実際には刹那の間に彼らは見る。

 徐々に晴れていく二人の視界。白い世界を超えてマリアとアルバが目に映したのは、どこまでも続く灰色の世界だった。

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