君、誰?
気が付くと、一日のPV数が何倍にもなっている……。
嬉しい。
引き続き、地道に頑張っていきます。
これからも応援よろしくお願いします。
ベルを起こすために振り向いたリンが見たのは、こちらをじっと見ている黒い髪に全裸の四歳ほどの見た目をしている幼女だった。
「「誰!!!」」
何食わぬ顔で様子を窺っている少女。
そしてそれに狼狽するリンとセレナ。
周囲を確認してベルを探すが辺りにはどこにもいない。
そして、魔力量を見てみれば、ベルとまったく同量である。
ここまでの状況がそろえば、どんなに信じられないことだろうとそう認めざるを得ない。
「ベル……か。その姿は?」
「なんかできた」
すまし顔で返事しているが、なにをどうしたらそうなるのかまったく理解できなかった。
(原因はなんだ? まさか魔法か? でも今まで使うことができなかったし、別の要因があるのか?)
様々な可能性を考慮するがどれも推測でしか過ぎない。どれかは当たっているかもしれないし、すべてが的外れかもしれないと無駄なことまで考えだす始末。
「どうやって人になったの?」
「ますたー、まいにち、まほう、おしえて、くれる。すこし、がんばったら、うまくいった」
セレナが質問して、ベルが拙い言葉で返してくれた。
ますたーというのはおそらく自分のことを言っているのだろう。しかし、今まで何の成果を得られなかったのに、突然できるようになっていることに、謎が深まる。真剣に考えるが、もう訳が分からなくなって面倒になってきたため、その疑問を放り投げた。
「うん、もういいや。真剣に考えるだけ損している気がする。ここ、異世界だもんな。魔法もスキルもなんでもあるんだから、狼が人になることだってあるだろ」
小言でブツブツ独り言を呟きながら、現実逃避していた。
それを尻目にセレナとベルが意気投合している。ベルに替え用の服を着させてあげたり、面倒見がいいようである。ベルにはセレナの服は大きすぎるため、丈が合っていない。それにいつの間にか服を着替えているセレナにも驚いたが。
「よおーし、それじゃ今日の内にヒルトギルスに到着しちゃおう! 準備はいい? ベルちゃん?」
「うん!」
セレナが意気揚々と宣言し、それにベルが続いた。
既に何か嫌な予感がするなと内心で吐露しながら彼女たちの歩みに続く。
こうして一行は目的地の町――ヒルトギルスへと向かうのだった。
――――――
森へ抜けるのにそう時間はかからなかった。そしてそこからヒルトギルスへ到着したときには夜の八時間を過ぎていた。
リンたちは町に入ってから寄り道をせずにまっすぐに冒険者ギルドへと向かう。
中に入ると騒がしいという言葉では足りないほどには、あちらこちらへと物が飛び交い、泥酔した輩たちが酒を片手に大声で会話を交わしている。
こぼれた酒や周りを気にせずに唾を飛ばしながら笑い合う彼らの酒臭さでその空間は満たされていた。
そんな彼らを無視して受付へと足を進める。
「あら、セレナちゃんじゃないの。どうやら、クエストは無事に終わったようだね。しばらく顔を見せないから心配してたのよ」
声をかけてきたのは受付で頬杖をついていた色っぽいお姉さんだ。セレナは「あはは」と軽く頬を掻いて心配されたことによる恥ずかしさを誤魔化している。
「じゃなくて、今日はこの人の冒険者登録をしたくて」
「こんな夜遅くに珍しい。まあ、別に構わないよ。それじゃあ、このプレートに魔力を流してくれるだけでいいから」
受付嬢が渡してきたものを受け取り、魔力を流す。すると、プレートの窪みに青白い光が淡く輝き、水のように流れる。やがて端から端まで光が流れ終わるとそれが完了したことを示すかのように光が収まった。
「はい。これで冒険者の登録は完了いたしました。これからはあなたも冒険者の一員としてたくさんのクエストをこなしてくださいね。それでは冒険者としての最低限の規則については冒険者ガイドブックをお渡しするので、そちらをご覧ください」
「よし、リン登録終わったね! それじゃあ、さっそく討伐クエストに行こう!」
ガイドブックを受け取ると、セレナがリンを連れて外に出ようとする。どうやら次のクエストを受注していたそうだが、その表情からは何かに逃げているにも見えた。
「よお、セレナ。戻ってきたなら、挨拶の一つぐらいしてくれてもいいのによ! 水くせじゃねか!!
それになんだコイツは。フードで顔なんか隠しやがって、体もひょろひょろだしよ。こんなのとつるむつもりか?」
声をかけてきたのはゴツイ体をしている半裸の大男で顔の右側に魔物の爪による爪痕が目立ち、体中にも様々な傷を残しているいかにもごろつきですと言った風貌をしている。
この男が声をかけてから周囲の騒ぎが嘘のように掻き消えた。
そのせいで小声で「おい、あのフード、ケイレブに目付けられたぞ。終わったな」とか「セレナもなんであんなやつのどこがいいんだ?」だとかいいように言ってくれる。
どうやらケイレブはここらの冒険者の中のいわゆる首領にあたる人物らしい。ケイレブの言うことは逆らえないし、標的にされたら最期と言った雰囲気が彼らの口調から感じ取れる。
面倒なので、こそこそ話しているやつらにいちいち反応しないが今度会ったら、眼の一つでも飛ばしてやろうと誓った。
煽ってきても特に反応しないリンが気に入らないのかケイレブとかいう大男は表情を確認しようとリンに顔を近づける。
「おい、フードやろう。なんか言ったらどうなんだ。え!?」
俯いたまま、手は握りこぶしにして我慢しているセレナ。
その様子をみてコイツのことが心底嫌いだとわかる。最もそれはリンたちと受付嬢を除いた輩には気づかれていないが。
リンがセレナの手を引いて外に出る。それについていくようにベルがあとを追った。
「ちっ。とんだ期待外れじゃねーか。おい、セレナ! そんなやつと冒険者ごっこなんかせずに俺のところに来たらどうなんだ? 丁重におもてなししてやるからよ」
背中から罵声が浴びてそれに続いて下品な笑い声が溢れていた。握った彼女の手の震えから、悔しさと我慢で一杯になっていることがわかったが、それを聞き流しながら、リンたちはギルドを出た。
――――――
三人は外へでてもしばらく何一つ言葉を発することがないまま歩き続けた。ベルはリンとセレナの様子を特に気にした様子もなく眺めるだけであった。
十分にギルドから離れた場所まで歩いた後に深呼吸をしたセレナがこの沈黙を破った。
「さてと、じゃあ早速クエストに行く? それとも明日に回す?」
口調は平然を装うと努力していいるが、表情と合わさり無理をしているのが丸わかりだった。
だが、そのことについてはリンはあえて何も言わない。今は自分が出しゃばるべきではないと思ったからだ。
「いや、その前にベルにちゃんんとした服を買ってやろう。このままじゃ過ごしにくいだろうからな。後、決行するのは明日でも構わないか?」
「大丈夫。それじゃあ、案内するよ」
ベルの服を選ぶのに、ニ時間ほどかかった。どの服を試着させてみても、似合うので、リンとセレナがあれもいい、これもいいと次々とベルに服を渡していく。
着せ替え人形にされているのにいよいよ我慢の限界がきて、試着したまま外に出ようとしたので二人が慌てながら会計を済ましてベルの後を追い、彼女の機嫌を直すのに苦労したことがあった。
全体的に動きやすい服装となっており、白のトップスには所々にフリルが付いていて、見た目よりも大人っぽさを感じるデザインだ。また、活発なので、シンプルな黒のズポンにした。赤のベレー帽が気に入ってた様子なのでこれを軸に服装を考えていたので本人としても満足しているようだ。先ほどからベレー帽を突き破ろうとしている二つの耳がウキウキしているので、誰から見てもそれは丸わかりだったのだ。
「リンはこれからどうするの? 宿に泊まっても問題ないの?」
「いや、普通に俺が死ぬからそれはないな。さっき言っていた吸血鬼が経営している店を探して情報を聞き出したい。あちらが構わないのであれば、今晩はそこでお世話になるかもな」
セレナは軽く返事して、次の目的地へと案内してくれた。
彼女の後を追って進んでいくと、建物の陰に隠れている地下通路がそこにはあった。
階段を下っていくと、厳重な扉が立ち塞がっていた。
中へ入ると、バーカウンターに立っている白髪をオールバックにした老人がグラスを丁寧に拭きながら、こちらに軽く視線を移す。




