1話
『またね』
そう言って葵はそこからいなくなってしまった。
自分のいる世界に戻ったのだ。俺は伝えられなかった。
伝えたら引き止めてしまう気がしたからだ。
だから葵に伝わるようにここに残すことにした。
そして目の前の葵は淡い光を帯びて消えてしまった。
このようになったのは遡ること2年前...
君は、登校している僕の目の前に現れた。
桜がよく咲いていた日だった。
音もなく現れた君は泣いていた。
そして君は泣きながら唖然としていた僕を見て少し微笑んだ。
でも聞く前に君は静かに倒れた。
急いで近寄ったら気を失っていた。
僕は登校中にもかかわらず、目の前の君を助けることを優先した。後のことなど考えられなかった。
病院に連れていこうかと考えたが、この彼女の身元も知らなかったから仕方なく自分の家に連れて行った。
家に帰るなり、姉の遊が出勤する前だったのか仕事鞄を持って玄関にいた。
遊姉は女の子を抱えた僕を見るなり、
「蒼葉、なにしてんの……?」
と言われた。
「僕が学校に行く途中、葵に会ったんだ。葵の身元も今住んでる位置も分からないからとりあえず家に連れてきた。」
姉は驚いた顔をした。
「……2年前にいなくなった葵ちゃんね。あとは私に任せて学校に行きなさい。学校へは遅れるって言っておくから。」
僕は従うしか無かった。
初投稿を読んでいただきありがとうございます!
元々、小説は紙に書いていたのですが友人の提案で投稿してみたら?と言われたので『小説家になろう』で投稿させて頂きました。
この後の蒼葉と凛玖の展開が楽しみですね(´˘`*)