炎の中で
熱風が頬を焦がす。汗が自然と浮かび長い髪が首筋に張りついて気持ちが悪い。
少しでも動きやすいように、ドレスの裾を破り、一息つくように息を吸えば、熱と煙で喉がヒリヒリと傷んだ。
逃げ道を探すように、辺りに目をやれば、周囲の木々はすでに炎に包まれ、火に包まれた葉が花びらのように舞っている。
一歩足を引いた瞬間、熱におかされた木の枝が崩れ落ちてくる。
火の粉を振り払うように、振った手にじわっと痛みを感じ、息を飲んだが足が動かない。
そのまま体が炎に包まれると思った瞬間、
「フィオッ!」
名を呼ばれ、自分とさして変わらない小さな背に庇われた。
「リアム!」
銀の髪が炎を浴びて、金色に光る。その髪色には見覚えがあった。ここ数日を共に過ごした少年だ。
彼は干ばつの調査のために騎士達と共に街を訪れていた。
腕章のついた黒のジャケットとブーツ、齢十、小柄ながらに騎士団と同じ仕様の服を身につけた彼の姿を初めて目にした時、凛々しさと同時になぜか懐かしく写った。
そして今目の前にあるその背もまた……。
そう感じたと同時に、ぐらりっと少年の体が傾いた。慌てて腕を伸ばし、少年の体を支える。その拍子に、生焦げの肉のような嫌な臭いが鼻をついた。
腕の中に倒れこんだ体をみれば、整ったその顔の半分が焼けただれている。
「リアム! リアム! リアム!」
何度も何度も名を呼ぶが、呻き声が響くだけだ。
このまま、リアムが死んでしまってはどうしよう。
込み上げてくる気持ちを抑えられない。ぐっと奥歯を噛み締めるが、目の奥が熱くなって涙が込み上げてきた。
片頬をつっと涙か伝う。炎の中にあっても、それは異様に熱い。一方で、片頬に冷たい一滴が落ちてきた。
その原因を探るように顔を上に向ける。
雨の滴が頬を続けてうった。
これで山火事が落ち着けば助かるかもしれない。安堵に反して、溢れだした涙は止まらない。
泣きつかれて意識を手放してしまったのか、その後どうやって助かったかは覚えていない。
彼の安否もまたわかっていない。