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帝都バームクーヘンの悪夢2

私達一行はギルドへと向かった。ギルドの場所は海に近く、潮風がとても良く香る。


ギルドの様相は四階建てのビルの様な様相をしていた。壁を触るとコンクリートの様な触感がした。シズクはローブのフードを深く被る。


ギルドの一階はドイツの公衆酒場の様だった。まだ昼だと言うのに、酔い潰れた者がちらほら見えた。広場の奥には、銀行の窓口の様な場所があった。シズクは私の服の裾を引っ張り、一つの窓口を指差し耳打ちをする。


「あそこが登録所よ」私はこれまでの元気をなくした彼女を心配に思いながら、指差された所へ向かう。他の窓口には可愛らしい女の子がいるのだが、この窓口だけ頑健そうなスキンヘッドの大男が座っていた。男は私を睨みながら、よく響く低い声で話した。


「ようこそ、登録窓口へ。登録目的ならカードの提示を願います。」カード?と私が困っているとシズクが私のステータスが書かれたカードを男に渡した。男は訝しそうに(イブカシソウニ)彼女を見ていたが、フードの下に隠れた顔を見るのを諦めたのか渡されたカードに目を落とした。



「………サクマで間違い無いですか」


「はい」と私が言うと、彼は乱雑に机の引き出しから赤いドックタグを出す。それに太いバチの様な指で彼は文字を書き、それを渡す。


「赤鉄ランクからです。」男は私の背中に隠れるようにいるシズクの方を見て言葉を続ける。


「そちらの人は、登録しなくていいんですか?」シズクは無言で、金色のドッグタグを渡す。男はそれを見ると震えながら返却した。


それから、私達は広場の酒場で、軽い食事を頼んだ。シズクはサンドイッチとコーヒーだけで、私が魚の煮料理を食べているのを冷ややかに見ていた。


「赤鉄ランクってなんだ?」


「鉄、赤鉄、鋼鉄、銅、赤銅、青銅、銀、赤銀、白銀、金、赤金、黄金って云うランク付けがあるの、階級だと思ってくれて良いわ」


「私は、下から2番目か。シズクは何位なんだ?」


「黄金」私はたいして驚かなかった。これまでの彼女の働きを見るに、当然の理だと思ったからだ。しかし疑問は残った。


「なんで、黄金が奴隷に?」


「んー…ステータスの時点で黄金だったんだけど…少々最初の依頼主と喧嘩して…その後流浪の日々…でお腹減ったから、自らを売りに出したのよ。で、余りにも高いから…奴隷商人から奴隷商人に売られていって、最終的にアナタに買われたって訳よ…まぁ今は解放されたから、アナタの冒険仲間だけど」


「私の仕事についてくる必要あるか?」


「どうせ流浪するんだし、面白い流浪の方が良く無いかしら?」と云う彼女の言葉に笑っていると、奥の酔った冒険者達が口喧嘩を始めた。スキンヘッドに傷ついた皮の鎧を着た180cmの男、と茶色の髪のセンター分けの容姿端麗な男に、古い様式だが、よく整備された鎧を着た竜人の三人グループの様だった。


「だから、お主らの言うような怪異はこの帝都にはおらぬ!!」とスキンヘッドの男は、机越しに茶髪の男の胸ぐらを掴む。


「いや、おっさん。落ち着けよ…このタクスンと昨夜見たんだよ!!」と茶髪の男は、静かに座っている竜人の男に助けを求めていた。


「あぁ…六本足に…真紅のマント…そして紅の仮面…両手にはマスケット銃を携えていた。大教会の屋根の上で意味もわからぬ言葉を吠えたと思えば、霧の中に消えていった。」竜人の男はビールを自分を勇気付ける様に飲み干した。


「あれこそ…世に聞く…バームクーヘンの悪夢だ。」竜人の男は声を震わしながら答えた。スキンヘッドの男は、胸ぐらから手を離し、1ポンドはある肉に齧り付いた。


「タクスンが嘘をつくとは思えぬ…このサラダンもその事は信じよう…で…その悪夢退治をするなんて…サライ…お主正気とは思えぬぞ…」サライと呼ばれた茶髪の男は笑いながら、悪夢退治の依頼書を見せた。


「二十万ベラントだぜ?一生この三人遊んで暮らせる程の金だ!やらなくちゃあ損だろ」サラダンと名乗ったスキンヘッドの男はその依頼書を睨みながらタクスンに目配せをした。


「バームクーヘンの悪夢ってなんだ?」と私はシズクに聞いた。


「最近、有名な噂よ。度々、皇帝陛下の住処や、初代ヒトラービスマルク皇帝の霊廟に出現しては、腕利きの近衛兵を殺し回るらしいわ。…後、婦女の猟奇的殺害や誘拐もそいつの仕業って言われてるわね」コーヒーを静かに流し込む。


「まぁ…今の私達には関係ないわ…さぁなんか依頼を受けましょう」と彼女は私を連れて、広場の大黒柱に付けられたボードの様な物の前に立った。意味もわからぬ文字ばかりだが、絵も描いており、どうやらその絵に書かれた怪物の撃退等が主な任務らしい。


「そうね…ゴブリン…巨大ネズミ…幽霊…野党魚人集団…どれがいい?」私は彼女が無造作に剥がした依頼者の絵を見た。緑色に醜悪な小人が八人ほど書かれた絵に巨大なネズミ。そして、鎌を持った幽霊に、魚人。私はゴブリンを指差した。


「こいつにしよう…絵からみるに…そうとう嫌われてるらしい…それはつまり書く価値があるという事だしな」声をかけられる。


「貴殿ら、ゴブリン退治には五人の冒険者か銀以上の冒険者の同伴がないといけぬぞ。拙僧らもゴブリン退治に行こうと思っていたのだ。よければ行かぬか?」と先程のサラダンと他の二人が立っていた。


黄色いフードをシズクが脱ぐと、顔の容姿が変わっていた。茶色の髪に、ソバカスがある顔、なによりとんがった耳が人間サイズになっていた。驚く私を尻目にサラダン達に笑いかける。


「それはいいですね。では、よければ受注を頼めるかしら?私たちは装備を調達に行きますから」と彼女は言った。私達は各々自己紹介をしてから、別れた。シズクは自らを斥候と名乗っていた。そして今日の夕方、地下水道入り口で待ち合わせをした。


私たちは目抜き通りを歩いた。色取り取りの野菜に、様々な器具が置かれている。なにより人の通りが激しく、東京の原宿を思い起こした。シズクは黄色フードを深く被り、目抜き通りの隅にある古ぼけた店に入った。そこに入ると彼女はフードを脱いだ。よかったいつも通りの彼女の容姿だった。


その店には、怪しげな物が並んでいる。人の手足や竜人の尻尾に物騒な針が多数ついた何かしらの動物のホルマリン漬け。ゴブリンと呼ばれた魔物の等身大ホルマリン漬けもあった。50〜60センチ程で、目は大きく、鼻は高い、耳も巨大だ。トゲトゲした歪な歯並び。正に醜悪だ。


店の奥から、車椅子に乗り、白髪の老人が出てきた。目は白内障なのか薄白く、目やにが溜まっている。耳はシズクの様にとんがっている。車椅子を押しているのは黒い髪の女性だった。それはとても綺麗でまるで人形の様だった。


「伯父様〜!!」とシズクは老人に飛びついた。老人は笑い、彼女を優しく抱きしめた。黒髪の女性は表情変えず立っていた。


「シズクかえ…よぉ来たなぁ〜!奴隷になったと聞いて心配していたんじゃぞぉ〜」老人は焦点の合わない目でこちらを睨み、私を指先した。そして指差した指を自分の方に折ると、私は見えない力で引っ張られた。老人が指を宙に向けると、私は身体が硬直し、空に浮いた。


「こいつ、誰じゃ?」シズクは慌てて、私を下ろした。


「ば…冒険仲間よ!転移者なの、」彼女はこれまでのことを老人に話した。20分程立った時、黒髪の女性は人数分のお茶を持ってきた。そのお茶は青い色がしており、少々怖気ついたが一気に飲み込むとオオタケキノコの様な何かが補われた感覚に襲われた。1時間ぐらい、回りに回った話を終えた後、老人は静かに笑い、女性に指示を出した。


「で、ゴブリン退治とな…フォフォ…装備はどうするのじゃ?サクマ殿」女性は山の様な武器や防具の類を持ってきた。その山を本を山積みにされた机の上に広げる。机から押し出された本が埃を立てながら飛び、店の奥に逃げていった。


「やっぱり剣かの?魔剣とかもあるぞい。盾なんかもいいのがあるぞ」私はショルダーバックからリボルバーを取り出して、老人に見せた。


「銃はありますか?あと地下水道の地図とか」老人が指を鳴らすと、古びた地図と年季の入った銃が飛んできた。手斧と短剣を残し、装備は全て女性が持っていった。


「地図はこれかの…銃はボルトアクション式の小銃ならあるのぉ」老人は慣れた手つきで銃に弾を込めた。机に開かれた地図を見る限り、巨大な下水道の様だ。


「しかしのぉ…暗い下水道の中で銃を撃つ瞬間なんか限られるじゃろう…手斧と短剣も持って行きなさい」シズクは老人の頬にキスをして、装備を無造作に私のバックに詰め込んだ。


「やっぱり、アガ伯父様は最高ね!あっ伯父様!これを読んで貰いたいの!あと鎖帷子とか長靴とかランタンも欲しいわ!」シズクは私の書いた調査書を見せた。アガと呼ばれた老人はうんうんと唸りながら読んでいた。目が見えなくても魔素で感じられるのだろうか?。


「う〜〜〜ん…売れるかのぉ〜これで終いかの?これで終いなら売れないがのぉ…」


「これで終わりな訳がないじゃないの!まだまだ続くわよ!今からゴブリンの生態調査ですもの!」シズクは慌ただしく女性が持ってきた装備を持って、店の奥へと消えた。


「ゴブリンか…それはいいのぉ…よく売れるぞ…。オークなども売れるのぉ…。サクマ殿はバームクーヘンの悪夢を知ってるかのぉ?」


「ええ、少しですけど」


「あれの調査書なんて、いい値段が付くと思うぞぉ…アレはのワシの予想じゃが」シズクは狩人の様な格好に着替えて出てきた。老人はその格好をベタ褒めにしている。シズクの人格はこうやって形成されたのかと思うと、甘やかしはよくないと思った。


シズクは褒められて有頂天になったのが、声を張り上げて叫ぶ。


「ゴブリン退治仕まつる!」


私はボソリと誰にも聞こえない声で、「ゴブリン調査って言ってなかったか?」とボヤいた。すると私の後ろに立っていた女性が、フフと笑った。







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