第一章 転生~幼少期編 【第八話 追跡】
まだまだ文章力、表現力が足りませんが、応援よろしくお願いします。
タマと謎の女の子は広い通路まで戻って来た。
さっき通った時よりバタバタと人の往来が慌ただしくなっていた。
「タマ〜!」
「あ!ママ!」
ミネラと再会する。
「良かった〜、もう!どこに行ってたの?」
「たんけんだよ? ママ、あのね、この子がね、ひまほうで、たすけてくれたの。」
「何言ってるのタマ?誰か他にいるの?」
ミネラには、タマの隣りにいる謎の女の子は見えていないようだった。
「え?ママ、この子だよう???」
タマは不思議に思って、ミネラに説明しようとするが、ミネラは無視している。
それどころではないのだ!
「さ、タマ! 急ぎましょう!パーティーは終わったから、早く屋敷へ帰りましょう!」
と、タマの手を引いて歩き出すミネラ。
二人は迎賓館の会場を通過し、正面の出入口へと向かう。
――― 案の定、ごった返していた・・・近衛兵が会場を出る人々をチェックしている。
「皆様、申し訳ございません!再度お一人ずつの招待状を確認いたします! 御退出まで少々お時間をいただきますが、ご協力を宜しくお願いいたします!」
タマとミネラはしばらく人の流れに乗りながら、順番を待つ。
先ほど見かけた猫耳獣人の貴族令嬢も従者と護衛も連れて、二人の前で順番待ちをしている。
尻尾がピンとしていて、やや緊張している様子だ。
『あ、ねこみみさん・・・じゅうしゃは・・・いぬみみかな?これもかわいい。」
モフモフに気持ちが癒されるタマ。メイドも好きだが、モフモフ獣人も好きなのだ。
―――― 漸くミネラとタマの順番が来たので、近衛兵に招待状を見せて迎賓館の外に出る。
ロータリーに着くと、ヨーコの声が聞こえてきた。
「おーい!奥様!お嬢様!ご無事で良かったぁ〜!」
どうやら迎賓館の外周りを探していたらしい・・・例の大きな風呂敷包みを持ったままで。
ヨーコが馬車を呼びに行く。――― カポカポカポ ――――
馬車が乗降口に着くと、ボーイが馬車のドアを開けてエスコートしてくれる。
タマが気付いた時には、謎の女の子はいつのまにかいなくなっていた。
『あのこ、どこにいったんだろう?』と思うが、この混乱の中、探し出してお礼を言うのは不可能だろうと諦め、馬車に乗り込む。
「はいやっ!」
御者の掛け声と共に、ピシンッという手綱の音が聞こえ、馬車はゆっくりと走り出した。
―――― ガラガラ、ゴトゴト ――――
タマは馬車の窓から外をボーッと眺めていたが、火野珠美の意識が先程の出来事を頭の中で整理していた。
《あのマディニスとサーシャの二人は国王の料理に毒を盛ろうとしていた?復讐って言っていた?どういうことだろう? 》
『マディニスとサーシャ』という名前が記憶に残っているが、事がことだけに、おそらくいきなり母親ミネラに相談しても、5歳児の子供の言うことは信じられにくいだろう・・・だから、今はまだ訊けなかった。
☆☆☆
一方、マディニス伯爵サイドでは・・・
「サーシャ、あの娘、どこのガキかわかるか?」
「はい、確かロージズメルの娘でございます。」
「そうか、ロージズメルか・・・誰か!誰かおらぬか?」
スッと黒い影が風のように現れ跪く。
「お呼びでしょうか?マディニス様。」
「よいか?すぐにロージズメルの馬車を追え!いや、事故に見せかけて始末しろ!!」
「承知。」
黒い影は一瞬で消えた。
「まさかロージズメルとはな・・・いつもいつも邪魔しおって!!!」
「マディニス様。お怒りはわかりますが、怪我の治療が先でございます。いかがなさいますか?」
「くっ・・・わかった。」
マディニスが左肩をみると、火魔法で怪我したところは星形のような痣になっていた。
――― 迎賓館の裏手から、黒装束の騎馬隊が出発した。
その騎馬隊は、すぐに目的の馬車を見つけ追いかけ始めた。
王宮から屋敷への道のりを半分くらいきたあたりで、黒装束の騎馬隊は行動にでる!
弓矢を放った!
――― ヒュン ヒュン ヒュン ――― そのうちの数本が馬車に刺さる!
――― カッ!カカンッ! ―――
「⁈ なんだ ⁈」
ヨーコが馬車の窓を開けて、状況を確認する。
数十メートルの距離に黒装束の騎馬隊が近づいてきていた!全6騎!
「奥様!お嬢様!ご注意ください!賊です!」
「「えぇっ!?」」
ヨーコは座席を開けて剣と弓矢を装備し、窓を遡りするようにサッと馬車の天板へと登る。
すぐに弓を構え、矢を放つ!なんと三連射!!
――― ピュピュピュンッ! ―――
1矢目は馬の足に刺さり、馬ごと倒れた!
2矢目は黒装束の一人の肩に刺さり、その者は落馬した。
3矢目は剣に弾かれた。
――― 残り4騎!
続けてヨーコは矢を放つ! さらに3連射!
――― ピュピュピュン! カンッ!キンッ!シュバッ!
2矢は弾かれたが、1矢はカスッたようだ。
『むぅ、外したか・・・かなりの精兵と見た。』
――― バカラッバカラッバカラッ ―――
「御者殿!賊だ!奥様とお嬢様を頼んだぞ!」
「へ?へい!あなた様は?」
「ちょうど一頭空いたようだから、斬り込んでくるよ!」
先程、落馬した黒装束が乗っていた馬が、馬車のすぐ隣りを走っていたのでヨーコはその馬に飛び乗り、手綱を引いて方向を変えた!
「ハッ!」
――― ザザッ! ヒヒーン! ―――
「ハイヤッ!」
――― バカラッバカラッバカラッ ―――
ヨーコは弓矢で牽制しながら、突っ込んで行く!
――― ピュン!ピュン!ピュン! ――― ドスッ! ―――
黒装束の胸に刺さり、また1騎落とした!
――― 残り3騎!
矢が無くなったので、剣をシュラッと抜き黒装束へ斬り込んで行くヨーコ!
「ハァッ!」
ザシュッ!
黒装束の死角から斬り上げ、また1騎倒す!
――― 残り2騎!!
そのうちの1騎が剣を振り上げヨーコに斬りつけてくる!!! 剣と剣が交わる!
――― カンッキンッキンッ! ―――
ヨーコが戦っている間に残り1騎が馬車へ向かう!
――― バカラッバカラッ!
『しまった!抜かれたかっ!』
今目の前の相手もかなりの手練れのようだ。
もちろんヨーコもかなりの手練れではあるが、力は拮抗していた。
――― キンッキンッキンッ!スカッ!カンッ!ガンッ!ヒュッ!―――
――― 攻防は続く ―――
一方、馬車に近づいた1騎は、御者に警告する!
バカラッバカラッバカラッ
「おいっ!止まれッ!止まらんと殺すぞ?」
「ヒーーッ!!!」
パシンッ!パシンッ!
御者はビビって逆に馬車を加速させたが、黒装束の騎馬がすぐに追いつく。
「逃げるならば・・・死ねっ!」
と、剣を振り下ろしてきた! ヒュッ!
「ヒャアッ!」
御者はなんとか避けた・・と思ったが・・・下から翻るように切り上がってきた剣に
――― ザッ!
「グァッ!」
御者の左腕を掠った!! 傷は浅い!!
黒装束の剣は御者を斬ったその勢いで、もう一度振り下ろされる!
「くそっ!これでも、くらえっ!!」
「うわっぷ!?」
が、御者が物を投げてきたので、黒装束は手元が狂い馬と馬車を繋いでいる支柱に剣が食い込む。
――― ガッ!
そして、馬車は急なカーブに差し掛かっていた!
黒装束は再び御者へと剣を振るうが御者が避けた勢いで手綱が引かれ、馬達が急に方向を変える!
――― ヒヒーンッ ―――
その遠心力で支柱は完全に折れ、馬車と馬は引き離される!
馬車の行先には――― 崖だ!
必死に御者は馬へ飛び移る、びっくりした馬はそのまま御者を乗せ、走り去っていった・・・。
黒装束は馬を止めた。
馬車は勢いよく崖へと転落していく!!
――― ガコンッ
「「キャーーーーッ!」」
タマとミネラの悲鳴が響く ―――
『あぁ神様、どうかこの娘の命だけはお守り下さい!』
と祈るミネラ。タマを抱き寄せる。
ザッ!――― ザンッ! ――― ガンッ!
馬車は途中で樹に当たりながら、岩にもあたり落ちていく。
「キャッ!」
車内で頭を打ち、ミネラは気を失った。
「ママ?どうしたの?ママッ!」
ミネラがタマの声に反応しないので、タマは気が動転した!
「ママ―――ッ!」
タマは、泣きながら必死に叫んだ!
――― すると突然、タマの体がまばゆい光に包まれる!!
その光は赤い炎のように勢いよく燃え上がるが、車内は燃えていない・・・不思議な炎だった。
タマの頭に知らない声が響く。
【私の友達・・・さっき名前聞いてなかったね?】
「・・・え?だれ?」
とタマは声に出すが、声の主はもう一度聞いてきた。
【私の友達・・・時間がないから、すぐに教えて・・・あなたの名前は?】
「うん・・・ターニャマリー・フォン・ロージズメル・・・」
声に何か神聖なものを感じたタマは、素直に答えていた。
【ターニャマリー・フォン・ロージズメル・・・いい名前だね。】
と、声の主の意識が次第に優位になってくるのを感じた。
「・・・みんな、タマって・・・よぶよ?・・・」
【うん、わかった!じゃあ今はタマの危機。だから助けるね!】
タマは薄れゆく意識の中で、その言葉を聞いていた・・・。
今話も最後までお読みいただきありがとうございました。
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