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第二章 魔法学園編① 【 第23話 魔法模擬戦② 〜サッチ視点〜 】

【 第23話 魔法模擬戦② 〜サッチ視点〜 】


模擬戦の戦場は草原といくつかの岩が突き出ている殺風景な場所だった。


サッチは思う。


『なぜこの”ターニャマリー”とか言う女は、魔力量学年最低なのに、この私と同じAクラスなの?

しかも、あのマロンディーズのリンネちゃんと仲良さそうにして!うらやましいっ!でもこの模擬戦で

わからせてあげるわ。あなたは”Aクラスにもリンネちゃんにもふさわしくない”って!!』


しかし、次の瞬間、信じられないことを目にする。


ゴウッ!


タマの全身から一瞬だけ炎が溢れ出したのだ!


『え?何で全身から炎が?! え? 魔力量最低のくせに!』


淡い炎に包まれたタマの姿を見て、サッチは一瞬怯んだ。


そして、ありえない可能性が頭をよぎる。


『もしかして、精霊装化? いや、そんなはずないわ!』


魔術を学ぶ者として噂程度には聴いたことがある。

精霊装化の使い手は、世界でも数えるほどしかいない希少な存在だと・・・。


もし、ターニャマリーがそうならばイメージの世界とはいえ、予想外の展開ではある。


「ふん!どうせ虚仮威こけおどしよ!


魔力量最低の女に、こんな芸当はできるはずがないと考えた。



「化けの皮を剥いでやるわ! これでもくらいなさいっ!水のウォーターアロー!」


サッチから数十本の”水の矢”が一斉に飛んで行く!


タマは右手を空に向けてあげていた。

次の瞬間、炎の剣が現れ、タマはその剣を振り下ろす・・・

剣から炎が出て、水のウォーターアローは一瞬で、水蒸気に変わっていた。


「えっ!?」


サッチはかなり驚いた。

魔力量最低の相手が、イメージの世界とはいえ ” 炎の剣 ” を手にし、その剣で水のウォーターアロー

無力化したのだから・・・『ありえない!何かの間違いよ!』とサッチは思った。


「なんなの、この女!?」


”これくらい、当然”という感じのタマの表情を見て、サッチは自尊心を傷つけられた気持ちになり、イラっとした。


今まで自分の魔法を無力化されたことなんてなかった。


水のウォーターアローは ”普通の魔力の炎” 程度では防げるはずがない。

ということは、自分よりも “ 魔力の質 ” が高い・・・ということ!?



魔力量最低の相手の方が、実は自分より ” 魔力の質 ” において ” 上位 ” にあるのではないか? という、

現実にはあって欲しくない可能性をサッチは思った。


「ほんと、いったい何なの?この女!? じゃあ、これならどう?」


サッチは中級魔法である《 水狼ウォーターウルフ 》を放つ!


『これで、私の魔力量は残り半分になった・・・』


水狼ウォーターウルフは草原を切り裂くよう縦横に疾走しながら、タマの炎の攻撃をうまく回避しながら、

距離を詰めていく・・・


あと数メートル・・・


『ふん、これで終わりね・・・』


しかし、『攻撃が当たる!』と思った瞬間、タマの正面に ” 炎の壁 ” が出現する!

それは、大きい盾の形をしていた。



ジュワッ!


突然あらわれた”炎の盾”に、水狼ウォーターウルフは回避できず直撃し、あえなく蒸発してしまった・・・


『・・・なんなの? 模擬戦とはいえ、この戦闘慣れした感じ・・・ほんとイヤな女だわ!』


と、サッチは思う。


サッチの出身地は他の領地よりも、魔物が多く出現する土地柄。その影響で、子供の頃から”戦闘訓練”を

受けていた。

だから模擬戦とは言え戦闘バトルには勝つ自信があった。

しかし、現実には魔力量学年最低の小娘ガキに押されている状況。



『さて、どうしょう?たしか先生は言っていたわね?

“ ここはイメージの世界 ”・・・ならば普段は使えないけれど、あの奥義を使うことだってできるはずだわ!!』


サッチは目をつむり、頭の中を奥義のイメージで満たす・・・


『できた!私の残りの魔力を全て捧げる!!!』


サッチは目を見開き、両手を天に向け叫ぶ!


「いでよ!水竜王リヴァイアサン!」


ドオォォォオオオオオオ!


サッチの背後に巨大な水で形作られた竜があらわれる。まさに水竜王リヴァイアサン


「行けぇっ!」


ドドォォゥゥウ・・・


水竜王リヴァイアサンがタマへと向かう!

圧倒的な超巨大な水竜が、サッチの頭上の空高くから一気に流れ落ちる滝のようにタマへと向かう!


『これは絶対に避けられないでしょうね!フフフ、勝ったわ!』


サッチには、水竜の巨体越しに見えるタマの姿は、成すすべもなく立っているだけに見えていた。



・・・が「火炎不死鳥ファイヤーフェニックス!」という声が聞こえ、

タマの全身から炎が勢い良く湧き上がり、その炎が鳥の姿になっていった。


しかし、その炎の鳥は水竜王リヴァイアサンに比べてかなり小さい。


「フッ、フフフッ! 笑わせないで、そんな小さな火の鳥なんて。押し流してあげるわっ!」



水竜王リヴァイアサンの向こう側からタマがなにやら叫んでいるが、はっきりとは聞き取れなかった。

が、すぐに火の鳥は回転し始め、風を切り裂く速さで、回転しながら水竜王へ向かって飛んでくる!

しかも徐々に大きくなりながら・・・


「!?」


回転することで、空気を取り込み火炎の巨大な竜巻になった火の鳥が水竜王リヴァイアサンにぶつかった!


ザッシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!


速さと回転のある火の鳥の勢いが勝っていた!

水は回転により吹き飛ばされ、同時にどんどん蒸発していく・・・


「な?! なぜ!? こちらの水量の方が圧倒的に多いはず!?」


水竜王は火の鳥の回転により水量を削られ、水飛沫しぶきから水滴になり、それが炎により次々と蒸発していた。


「そんな・・・我が家の秘奥義が魔力量最低にやられるなんて・・・」


サッチは蒸発していく水竜王を、ただ呆然と眺めるしかできなかった・・・


水竜王は数分ですべて蒸発し、あたりは霧で満たされていた。


静寂があたりを包む ーーーと大雨が降ってきた!


ザァァァ・・・・


雨は数十秒でやみ、あたりが晴れ始めた。


その中を “ 赤い点 ” が猛スピードで近づいてくる!


炎の翼を羽ばたかせたタマが、サッチの目の前に降り立つと同時に、炎の剣が喉元に突きつけられた。


サッチには、目の前のタマが、人を小馬鹿にし不適な笑みを浮かべているようにしか見えなかった。


「・・・まいった」


同時に学園長のジャッジのアナウンスが聞こえたが、サッチは悔しくてたまらなかった。


『私はこの女を絶対に認めない! 羊の皮を被った悪魔め!』


サッチは自分の自尊心を守るために、そう心の中で吐き捨てた。


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