第二章 魔法学園編① 【 第21話 学園生活スタート! 】
【 第21話 学園生活スタート! 】
翌朝。
正門を入ると、昨日もらった学生カードから”チーン♪”と音がする。
なんだ?と思って見ると「Class A」という文字が光っていた。
でも、タマは不思議に思った。『魔力量学年最低のわたしが・・・Aクラス?』
「リンネちゃんのクラスは?」
「Aクラスだよ?タマちゃんは?」
「うん、それがね・・・リンネちゃんと同じ、Aクラス・・・なんで?」
「なぜかはわからないけど・・・私はタマちゃんと一緒のクラスで嬉しいな!」
「うん、そうだね!」
と、「嬉しい!」と言ってくれたリンネに笑顔で答えるタマ。
校舎前にある掲示板で、校内地図を確認し、あまり深く考えずに教室に入った二人・・・
すると、クラス中からの”視線”が突き刺さる!
『・・・うぅ、なんだかみんなの視線がイタイ・・・』
とタマは感じた。
あきらかにタマとリンネで、向かっている”視線”の種類が違う!
リンネへの視線は尊敬や憧れといった”温かい”ものであり、
タマに対しての視線は「なんでコイツがいるんだ?」という明らかに”敵対的な冷たいもの”であった。
タマにとって気まづい時間が流れる・・・
クラスの角の方から明らかにタマを「場違いだ!」と非難する声が、ヒソヒソと聞こえてきた。
しばらくすると予鈴がなり、担任の先生が入ってきた。女性だ。
「え〜今日から1年A組を担当することになった。コマノです!よろしく!」
すると、一人の生徒が手を上げる。
「先生!このクラスにふさわしくない人がいるんですけど?何かの間違いですよね?」
「それはどう言う意味ですか?この魔法学園のことは全て学園長の采配で決まっているので、間違いではないと思いますよ?」
また別の生徒が発言する。
「先生!この”Aクラス”は昨日の魔力量測定をもとに”優秀な人材”が選ばれているんですよね?なぜ魔力量最低の人がクラスにいるのですか?」
「今、言った通り、学園長が決めたことです。だから間違いではありませんよ?」
「先生、そんな理由では納得がいきません!」
「そうだ!そうだ!」とクラスの多くの生徒が同意する。
コマノも内心は『なぜ魔力量の少ない生徒が?』という疑問がないわけではない。
そんな中、タマは腕を組み『うんうん、そうだよね〜』と言わんばかりに頷いている。
そして、タマは立ち上がると
「先生!みんなの言う通りです!わたし、学園長先生になぜ私が”Aクラス”なのか?直接聞いてきてもいいですか?」
シーンと静まる教室・・・
そこに、ガラッと教室の戸が空く。
「それでは、教えてしんぜよう!!!」
教室の戸がガラッと開き、何者かが大きな声で言った。
生徒たち全員の視線が、その” 何者か ”に集まる。
「えっ!? 学園長っ!?」
コマノが驚き、大きな声を上げる!
そこには、魔法学園の学園長を務める《 リズ・ラ・スピーラ 》が立っていた。
リズが続けて
「なぜ ” 魔力量最低の者がAクラスなのか? ” という質問じゃったな?それに答えてしんぜよう?」
というと、学園長は杖を軽く持ち上げ詠唱し、トントンと杖の先で床をこづく。
次の瞬間、教室全体が光に包まれる。
『え?・・・えっ?ええっ?!』
クラスの全員がそう思った。
次の瞬間、教室とは全く雰囲気の違う場所に全員がいた。
リズは《 瞬間転移魔法 》を使用したのだ。
今、全員がいる場所は、タマの遠い記憶・・・火野珠美の頃の記憶にある「 劣等生アニメ の 特訓場所 のようだ」ということだが、タマにはさっぱりわからない。
正面には巨大なスクリーンがあり、右側には様々なボタンが付いている横に長い机、左側には人が入れそうな大きさの卵形カプセルが5台ほど並んでいた。
「今から、模擬魔法戦をしてもらう。Aクラス全員でじゃ。」
ザワザワとする。
複数の生徒が不満を言う。
「そんな!? 俺たち入学したばかりで、できるわけねーじゃん!」
「戦い方なんて、知らないわ!いきなりなんて無理よ!」
「模擬戦なんてしても、結果は変わらないだろ?」
「だまれ!小童ども!」
リズが一喝する!
「なぜ?魔力量最低の者が、今年はAクラスにいるのか? 己の身を持って知るが良いぞ? なぁ、コマノ先生?」
「は・・・はいっ! その通りでごじゃいますっ!」
突然のフリに言葉を噛んでしまったコマノ。
しかし彼女も疑問に思っていることだった。
「全く弱虫どもめ! それでよく魔法学園に入学したのぉ・・・まぁ良い。では、ターニャマリー・フォン・ロージズメル?」
「はいっ!」
「Aクラス全員と総当たりじゃが、良いな?」
「え?・・・ええっ!?」
「大丈夫じゃ、そなたならここにいる生徒全員に勝てるであろうよ? では、始めるとしよう!コマノ先生?」
「え、あ、はいっ! では皆さん? ターニャマリーさんと、最初に模擬戦したい人はいる?いないなら・・・」
「私がやるわ!」
担任が教室に来た時、最初に苦情を言った女子生徒が手を上げた。
「名前は?」
「モーブ家の長女、サッチ・モーブよ。見てなさい魔力最低女!」
タマを挑発するような言葉を浴びせられた。
それでも、タマは一礼をして
「はい!よろしくお願いします!」
と笑顔で言う。
《 すべてモノゴトは、礼にはじまり礼に終わる 》
「それがロージズメル流なのだ」と、タマはメルサスから口うるさく聞いていた。
「では、二人とも。あのカプセルの中に入ってちょうだい。」
とコマノは卵形の装置を指差す。
タマとサッチは装置に向かう。
どこから現れたのか、卵形装置のすぐ隣にメイドが二人控えていた。
そのメイドたちがカプセルに手を向けて、魔力を注ぐと入り口のドアが開いた。
「先にこちらにお着替えください」と水着のような服を渡された。
「「なんですかこれ?」」
タマとサッチは「?」と思う。
「この装置専用の戦闘服でございます」
「え?でもこれ水着じゃ・・・」とサッチ。
「いいえ!戦闘服でございますっ!これを着ることにより、現実に近いデータが収集できるんでございますっ!」
怖い目で訴えかけてくるメイドたちに、サッチとタマは”抵抗しても無駄だ”と考える。
「あの、どこで着替えたらいいんですか?」とタマ。
「では、こちらへ」と白いカーテンに囲まれた簡易的な更衣室に案内される。
さっきまでなかった・・・” たった今準備しました感 ” 満載であった。
仕方なく着替えるタマとサッチ。
着替え終わると、卵形装置の中へと入る。
中は狭く、中央にシートがあり、周囲の壁面にはたくさんの計測器が付いていた。
その針がゆっくりと左右に振れている。
「そちらへお座りください」
メイドAにいわれ、シートに座ると自動でリクライニングする。
座り心地はとても心地よく、リラックスできる感じだった。
「それでは、ターニャマリー様、このゴーグルをどうぞ」
ゴーグルを受け取ったタマは、自分の胸に当ててみる。
「ターニャマリー様、違いますよ? 頭からこう装着してください」
とメイドAに言われ、使い方が違うことに気づいたタマは赤面する。
『わっちゃぁ、やっちゃった〜! 恥ずかしいっ!』
その恥ずかしさをゴーグルで隠すように装着した。
「では、そのまま少しお待ちください」
卵形装置のドアが閉まると、装置内は薄暗くなり、タマも眠気に襲われる。
ーーー っつ、まぶしいっ ーーー
ゆっくりと目をあけるタマ。
目の前には、きれいな青空と所々に岩が突き出ている広い草原があった。
『模擬戦にはちょうどいい場所みたい。でも魔力量最低のわたしがどうやってAクラスのみんなに勝つのかしら?』
タマの戦える術というのは、《精霊装化》しか思い当たらない。
しかし、精霊装化すると、自分に精霊がついていることを公表するようなもので、後々厄介なことになりそうである。
もし精霊装化しても現実に戦えるのは5分くらいが限度である。
となると、タマが勝つ要素というのは限りなく低い・・・・・・
タマの学園長に対する疑問は深まるばかりである。
しかし、タマにはもう一つ心当たりがある。
それは『萌えキュン♡』能力。
あまり使ったことはないし、これは魔法ではない。
火野珠美の記憶によると《 女神様から授かった能力 》らしい。
それが、どれほどのものなのか?
いや、それよりも戦闘に使えるものなのか?
全く見当がつかない。
そうやって思案を重ねているうちに、サッチの姿が数メートル先に現れた・・・水着姿で。
「「 え?水着じゃん!? 」」
二人同時に声が出た。
タマはあわてて自分の姿を確認する・・・やはり水着だった。
どうやら本当に水着で戦うらしい。
「あ〜、聞こえるか二人とも? それは水着ではない、戦闘服じゃ!それを着ていることで、模擬戦によるあらゆる攻撃から守られるんじゃ!わかったな?」
どこからか学園長の声が聞こえる。これもこの装置の機能らしい。
「「はいっ!」」と二人は返事する・・・これは納得するしかない。
学園長が言う。
「では、模擬戦の説明をしよう!当たり前じゃが、この模擬戦によって現実の肉体にダメージを受けることはない。今見えている二人の姿はこの装置によって作られた幻影じゃ。
この装置はお主たちの潜在能力を引き出す。簡単に説明すると秘めた能力じゃな。その秘めた能力が、”今は何らかの理由で押さえつけられている”という者も少なからず居るのじゃ。
この装置は、そういう者たちのためにも作られたのじゃ。
この装置の中は全て幻影とも言える。お主らのイメージしたものを出現させることができる。
例えば・・・ターニャマリーよ? そちの右側の岩に向かって、ファイアの魔法を想像して放ってみよ?」
「え?そんなことできるんですか?」
「そうじゃ、その装置の中では、お主のイメージした魔法を生み出せるのじゃ。」
「そ、そうなんですね!では・・・やってみます!ファイアッ!」
ドガーンッ!
岩が消し飛んだ。
「・・・す、すごい。本当に魔法が使えた!」
「わかったようじゃな。魔法だけではないぞ?自分のイメージの力で武器を作ったり、精霊を作ったり、男を作ったり、なんでもできるんじゃぞ?」
「お、おとこも!?」
担任のコマノがヨダレを垂らしている。
Aクラスの生徒はコマノの反応をスルーする。
「では、二人とも、そして画面で見ているAクラスの生徒よ! わかったな? では、模擬戦スタートじゃ!」