第一章 転生~幼少期編 【第十六話 私、留学することになったよ!】
この回で第一章が終わりです。
人生初小説、皆様の応援のおかげでここまで来れました。
ありがとうございます!
2020/6/30改稿しました。
マディニス邸でのパーティーの翌日、タマはすごく悩んでいた・・・。
「きのうは、うまくごまかせたけど・・・はぁ、つぎは うまくできるかなぁ。」
自分は『記憶障害がある』というメルサスの流した噂は、とても『ありがたい』配慮であったが、いつかはばれてしまうものだと、タマは十分わかっていた。
またパーティーに誘われたら、演技できる自信はないし、5歳児には負担が重すぎる。
「ひぃちゃん、どうしたらいいとおもう?」
と、精霊に人間界の事情など分かるはずもないのに、聞いてみる。
「う~んとね。」
「うん、なになに?」
「・・・・タマちゃんが、つよくなればいいんじゃないかな?」
期待外れだった・・・が当たり前の返答が返ってきた。それができれば悩まない・・・とタマは思いつつも、自分に今できることを整理してみた。
・精霊装化、魔力不足でつづかない。
・剣術、ちょっぴり。チャンバラに毛が生えた程度。精霊装化したらまぁまぁ強い。
・魔法、さっぱり。ひぃちゃんに頼りっぱなし。家庭教師から知識は学んでいる。
・食い気、ばっちり。ケーキは最高!自分でも作ってみたい!
・・・絶望的だ。タマ一人だけになると身を守ることはできない。
しかし、国王の毒殺未遂事件に関してマディニス伯爵を犯人だと知っているのは、タマ(火野珠美)と火精霊ひぃちゃんだけ。
でもまだ5歳のタマでは色々とどうしようもないのはわかっているが、このまま放っておけば、間もなくGOTO HELLである。
「はぁ、どっか とおい世界にいきたいなぁ・・・。」
現実逃避・・・。
・・・結局、いくら考えても良い解決策は見つからないので、メルサスに相談することにした。
「パパ~!」
執務室のドアをノックする。
「どうした、タマ?」
「パパ・・・たびにでたい。」
「え?何だって?」
「きのうの はくしゃくさまのパーティーで、こんどは うまくできるかわからないの。」
「・・・不安なのかい?」
「・・・うん。あの・・・じつは、馬車をおそってきた くろいひとたち がいたよ?」
「なんだって?それは、本当か?」
「うん、まちがいないよ。」
「わかった。そういうことなら・・・・・・状況が変わったな。タマ・・・ちゃんと話しなさい、狙われる心当たりがあるんじゃないか?」
「・・・うん、じつはね・・・・」
タマは建国記念パーティーの日に、マディニス伯爵と王宮メイド長 サーシャの会話のことを一部始終を話した。ひぃちゃんと念話しながら。
メルサスは、怒りに震えた、そして自分の能力のなさに、家族を巻き込んでしまったことに自分自身の不甲斐なさに怒りを覚えた。
『俺がもっとしっかり調べをつけて、マディニスに辿り着いていれば、馬車は襲われず、ミネラもタマと離れることは無かった!』
しかし、過ぎたことを悔やんでも仕方がない。今はタマの<身の安全>を考えなければならない。
タマがこの土地を離れれば、例えば国外に行くのであれば、さすがのマディニスも追っ手を差し向けることはしないであろう。ましてや暗殺をしてくることは無いだろうと思う。外交問題になりかねないし。
「事情はわかった。タマとママを守ってやれなくて、すまなかったな・・・。」
「・・・ううん、タマはだいじょうぶだよ。ありがと、パパ!でも、パパもママにあえなくて、さびしいんでしょ?」
「うん・・うん、そうだよな。タマ、ありがとう!ぐすっ。よし!・・・じゃあ、この際、思い切って留学でもするかぁ!」
「え?りゅうがく?」
「あぁ、そうだ。もうすぐ6歳になるだろ? どこの国の学校でも入学できる年齢だ!ちょっと早いかも知れんが、他の国を知るのもいいだろう?」
「うん、わかった!行くよ!」
「タマはまだ魔法がうまく使えないだろ?だから、魔法学園に行かないか?」
「え?あるの?」
「あぁ、あるぞ!魔法学園なら、今、タマが伸び悩んでいる原因がわかるかも知れないぞ?そしてな、色んな種族が集まって来るから、すっごく楽しいぞぉ?」
「そうなの?すっごくたのしそう!わたし、まほうがっこうにいくよ!!」
そんなこんなでタマは留学することになった。
―――3か月後 ―――
タマ、ヨーコ、メルサス、火精霊ひぃちゃんは、《魔法王国 マーリンモンロ》の《王都 シャイアン》にいた。
王都シャイアンはトゥアール王国から南西方向へ下り、馬車で約2か月の距離である。
「うわ~!人がいっぱいだね!」
タマは旅の途中で6歳になっていた。誕生日パーティーはここシャイアンで、入学祝も兼ねてやる予定だ。
トゥアール王国の王都ももちろん人は多いのだが、シャイアンの人出はもう少し華やかであった。様々な種族が混じっていて、街には彩りと活気があった!
「よし、じゃあ学園に行って、入学の手続きをするか。」
三人は学園へと向かって行った。
王都シャイアンは魔法都市と呼ばれるだけあって、一番外側は魔法陣のように円形の城壁が守っており、中央に王宮、そこから貴族の住む区画が上級、中級、下級貴族と広がり、そのあとは混在するように、平民居住区、商業区、農業区、工業区という感じに構成されている。
しかし、学園区は一種特異な雰囲気を漂わせている。
「ひろ~!でか~!!! ここが、まほうがくえん????」
タマにとっては生まれて初めて見る圧倒的な場所だった。全体的に白く輝くような独特の質感を持っている校舎群がそびえ立つように並んでいて、空の青さを反射し、壁面に魔法がかかっているようだった。
魔法学園は小学校から大学までの一貫教育体制で、敷地面積は都市の四分の一を占めている。
移動するには魔力で動く車両が動いている。魔導車両。学園内のみの移動手段で、馬車よりもスピーディに移動ができる。
タマとヨーコは驚いていた。メルサスは昔来たことがある様子で、懐かしそうな顔をしていた。
その魔導車両に乗って、事務棟へと向かう。
事務棟・・・・
受付のお姉さんはきれいな人で、メイド服を着ていた。見とれているタマ・・・とメルサス。
「え、あ、いや・・・」と挙動不審なメルサス。笑われた・・・パパ、タマは恥ずかしいよ?
というようなことがあったが、無事、手続きは終了。
次は、学生寮へ向かう。6歳から寮暮らし、というと不安かも知れないが大丈夫。
ルームメイトもいるし、寮母さんもいて、食事も朝と夜は作ってもらえる。安心の環境だ。
学生寮には小学生から大学生まで住んでいるから、とても楽しそうだ。
血のつながっていないお姉さんがたくさんできそうだ。
もちろん、メイド兼護衛であるヨーコがこちらに残る。住まいは別になるのだが、護衛専用の寮というか宿泊施設も準備されている。
実際に入寮するのは明日だ。明後日が入学式。今日は、荷物を置かせてもらい、入寮の手続きを済ませるのみだ。ちなみに寮生活は二人部屋である。
どんな人とルームメイトになるのか、すごく楽しみだ!
今夜は、メルサスとヨーコと、そして ひぃちゃん とメルサス家水入らずの夕食会(タマの入学祝い兼バースデーパーティー)を高級レストランで楽しみ、黄昏時の街並みを照らす大きな夕日に、ターニャマリー・フォン・ロージズメルは、明日への希望を感じるのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
キリが良いので、第一話からお話の流れに合っていない矛盾した部分など、改稿をしていきますので、次回の更新は少し先になるかと思います。→2020/6/30改稿しました。
『第一章 転生~幼少期編』は今話で終わりです。
次話から、『第二章 魔法学園編』がスタートします!お楽しみに!
今後とも、メイドクイーン タマ!の応援よろしくお願いします!