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第一章 転生~幼少期編  【第十四話 バラ園の冒険】

少し長くなりました。

2020/6/30改稿しました。


暖かな日差しが土に吸収され、優しい香りを生み出している。


そんなポカポカ陽気の昼下がり、タマと火精霊のひぃちゃんは、ロージズメル屋敷の敷地内にある《バラ園》を探検していた。


ロージズメル屋敷の敷地内には広大なバラ園があり、そこはまるでワイン用のブドウ畑のように広い範囲で広がっている。

東京ドームがもしこの世界にあれば、約10個分ほどはあるだろう。


ロージズメル家はトゥアール王国においては子爵家であり、家名の由来は当家がバラの栽培を生業としていることからきている。


バラの香りを表す造語、『ローズ(バラ)』と『スメル(香り)』を組みあわせたものである。


そして、この土地の気候により、真冬の季節以外、年間を通してバラは栽培されるのだ。


そんな蘊蓄うんちくはさておき、タマはこのバラ園が大好きで、今日は初めてひぃちゃんを案内する。だから、ご機嫌である。


「フッフフッフフ~ン♪」


タマは自作の鼻歌を歌いながら、ひぃちゃんの手を引いてバラ園を歩いていく。

その歩みに合わせて、タマの腰にいている子供用の木剣もゆらゆらと揺れている。


火精霊ひぃちゃんの姿はタマの魔力量が少ない為、まだタマ以外の人間には見えていない。


しかし、この世界での魔力量は人生経験値に比例して増えていくので、いずれ十分な魔力量に達するであろう。


まだ5歳のタマのする鍛錬とやらは、大人から見ればまだまだ『ごっこ』にしか見えないのも事実である。家庭教師はつけているが、まだ5歳児には教えられるレベルにも限界はある。今日は家庭教師はお休みなので、息抜きをしているタマであった。


「はぁ、きれいだねぇ」


赤・黄・青など、色とりどりのバラが咲いており、しかも香りのシャワーを浴びている感じがする。そんなバラ園の探検は、女子的には最高の場所である。




――― しばらく歩いていると、ガサガサという物音とともに、獣の鳴き声のような声が聞こえてきたので、二人はそーっと近づき物陰からのぞいてみると・・・。


「ん?あれは・・・?」

「!?・・・タマちゃん、あれはゴブリンだよ。」


ゴブリンがいた!3匹も!


『え?こんなところにゴブリン?』と、タマは思った。


なぜなら、この付近は比較的魔物の少ないと土地柄であるからだ。


《はぐれゴブリン》であろうか?それにしても『はぐれ』で3匹は多い。

ゴブリン達はバラの花をモシャモシャと食べている。このままではバラ園が食い荒らされてしまう!


『・・・どうしよう?』


悩むタマ。今から、屋敷に助けを呼びに戻っても、食い逃げされてしまうかもしれない。


たかが3匹、されど3匹・・・木剣の修行は毎日やっているが、タマ一人では勝てないであろう・・・しかし、火魔法が使える ひぃちゃんがいる。


『・・・なんとかなるかも』


タマは意を決した。


「ひぃちゃん、ちょっとひまほうをぶっぱなしてくれない?」


「えぇっ??やだよう?こわいもん。」


「え?なんで?ひまほうつかえるのに?なにがこわいの?」


ちょっとよくわからない。精霊の論理わからない。あたしより絶対強いくせに!

なにを言っているのかわからない!と思うタマ。


「グキィッ!!ガルガルッ!」


その間にゴブリン達に見つかってしまったようだ。


「きゃっ!こわいっ!!」


と、ひぃちゃんはタマの中に逃げる!

その瞬間、タマの体が赤く輝き奇しくも精霊装化スピリチュアルアーマーしてしまった!


『なら、やったろうじゃねぇかぁ!』


巨大ロボットが起動するときのように、ギンッと目を開けた精霊装化したタマ!(以下略 タマ。)


いきなり変化した少女を見て、ひるむゴブリンA・B・Cたち!


木剣に炎を纏わせてゴブリンに向かう、タマ!


「うぉりゃぁぁぁッ!」


タマは飛び上がり上段から切り下す!ザンッ!ボウッ!


ゴブリンAを袈裟斬りにすると、炎が勢いよく立ち上がった!


「ミギャーーーーーーッツ!」


瞬く間に全身を炎が包み、ゴブリンAは絶命!


タマの日頃の鍛錬の成果もあり、黒装束達とやりあった時より確実にパワーアップしているようだ。


それを見たゴブリンB・C! それぞれ得物を取りだした、長ナイフだ。


「グキャア、グルグル。」

「ゴキャァ。」


ゴブリンB・Cは作戦を練り、何らかの連携で攻撃を仕掛けてくる模様だ。


タマは、炎の木剣を中段に構える。


すると、ゴブリンCが逃げ出した!


ゴブリンBがタマを抑えるようにナイフを構えており、追撃はできそうにない。

先にコイツを倒さなければ・・・。


魔法は消耗が激しいので、なるべく使わず、剣術で倒す作戦で行く!


ゴブリンBはナイフを逆手に持ち、胸の前で構えている。まるで忍者のように・・・。


『くる!!!』


ゴブリンBがダッと正面から突っ込んでくる!速いっ!

炎木剣をはじかれ、一瞬ひるんだタマ達はバランスを崩すが、すぐに体を開き頭上から襲ってくるナイフを紙一重で避ける!

ゴブリンBはそのままの勢いで前のめりになり、首部分がガラ空きになる!そこに上段から炎木剣を振り下ろす。


ザシュッ!


ゴブリンBの首を斬り落とした。


タマ達は「ふう。」っと一息つくと、逃げたゴブリンCの方を見やる。


「えっ!?なんじゃっ?!」


ゴブリンCの背後から、ゴブリンの援軍がやってきたのだ! その数7匹!


『はぐれ』と思っていたゴブリンは、そうではなかった。一家なのか、一族なのかは不明だが、とにかくゴブリンCを加えて合計8匹!とてもタマ達だけでは相手にできそうにないが、もう遅い。


タマはゴブリン集団に囲まれてしまった・・・。


『チッ、どうする?』


援軍の中の1匹は他のゴブリンより一回り大きい体格をしている。


『奴が、リーダー格じゃろうなぁ。』


ゴブリンJがリーダー格。タマ達から見て12時方向にゴブリンJ、そこから反時計回りにC・D・E・F・G・H・Iとタマ達を包囲して立っている。


リーダー格のゴブリンJはゴブリンソードを持っている。それ以外のゴブリンはナイフを持っている。全員戦闘態勢だ!


一方、タマ達はこの危機をどう抜けるかを全力で考えている。

タマの指が火野珠美の頃のようにタイプするように動く・・・が、良い回答は出ない。どの行動も身の危険を伴うという回答が出ている。

このまま精霊装化を維持できれば勝率80%、維持できなければ勝率10%・・・。


・・・全体攻撃の魔法は魔力量的に無理だ。使えない・・・。


『魔法が使えないなら、スピードで勝負し各個撃破じゃな!』


「ふぅ、血わき肉おどる 状況 じゃのう!」


まずは、どう攻めていくか。魔法は最終手段。ギリギリまで使わない。タマの魔力量が少し増えているとはいえ、使えば精霊装化が早く解けるのは確実である。


タマは足元に転がっているゴブリンBの焦げた頭をサッカーボールのように蹴りあげた!


ゴブリンJに向け飛んでいく!他のゴブリンたちはつられてその頭を見ている。

隙ができた!


『よし!今じゃ!』


タマ達は自分たちとの距離が一番近いゴブリンC・Dに向けダッシュで近づいた!


まずゴブリンDを上段からの切り下ろす!ザンッ!


その切り下した炎木剣を、そのまま右に体を開きつつ剣閃を横へ走らせ、すぐ隣にいたゴブリンCの胴を右から左へ真っ二つにした!ズバッ!


「グエッ!」「ウギャァ!」


ゴブリンC・Dを倒した!残り6匹。


背後から1匹襲ってくるのを察知し、タマは横に振りぬいた炎木剣を背中に回し攻撃を受け流す・・・が、反撃するまでには至らず、そのまま前に走り抜け距離を取り振り返る!


バッと炎木剣を中段に構えなおすタマ・・・戦いの場が止まる・・・。



・・・タマ達は、ひとまずゴブリン包囲網からは抜け出すことができたが、依然として数的に不利である。


・・・魔力量もだいぶ減ってきて、息が切れ始めた。わずかに意識がふらっとする。


「ウキャキャッ!」


その様子にリーダー格のゴブリンJが笑う・・・ゴブリンソードには、先ほどサッカーボールになったゴブリンBの頭が刺さっている。


ゴブリンJはゴブリンソードを軽く振り上げ、ゴブリンBの頭を放り上げると、ザシュッと切り捨てた。『テメェ、覚悟しろ!』と言わんばかりだ。


『くそっ・・・もう、そろそろ時間切れのようじゃな・・・』


タマ達がその場に膝をつくと精霊装化が解け、タマとひぃちゃんに分離した。


フラフラとする意識の中で、タマは何とか立ち上がり半分焦げている木剣を構えなおした。


その弱々しいタマの姿を見ると、ゴブリンJは会心の笑みを浮かべ、ゴブリンソードを振り下ろしてきた!


――― ビッ!


「グギャァッ!!」


ひぃちゃんの炎光線ファイヤービームがゴブリンの左目をつぶす!

・・・と、ひぃちゃんはそのまま消えてしまった。タマの魔力切れだ。


「え?あれ?ひぃちゃん?消えた・・・?」


あせるタマ!・・・・・・どうするタマ?


不意を突かれたゴブリンJは仕切り直してタマに近づき、ゴブリンソードを上段に構え・・・「グフフフ」と笑いながら振り下ろしてきた!



瞬間!――― そこに割り込んでくる剣閃が二筋!! 


ズババンッ!!! 「グギャアァァァァァァァ!!!!」


斬られたのはゴブリンJの方だった! その胴体に切れ筋がエックスの形に入っていた!


ゴブリンJは・・・そのまま絶命した。


「タマ、無事か?」

「お嬢様、ご無事ですか?」


そこには、メルサスとヨーコが立っていた!!


すると・・・風が吹いた・・・・まるで西部劇の決闘シーンのように・・・。

ヒュオォォォォォォ・・・・



メルサスが叫ぶ!「ひと~つ!」


「人の情けは大切に~!」とヨーコが続く。


「ふた~つ!」

「ふたりの誓い思い出し~!」


「み~っつ!」

「見目麗しき姫君を~!」


「よ~っつ!」

「よもやいじめておるまいな?」


「いつ~つ!」

「いつもは温和な我らでも~!」


「む~っつ!」

「むかつくやつら、斬りさばく!」


「なな~っつ!」

「七つの秘剣、受けてみよ!」


ババッとメルサスとヨーコが対になり剣を構える。

「「秘剣 七大罪革命剣戟セブンス・ギルティ・レヴォリューション!!」」


決まった!!!!!!!


タマが「え?」っと思うと、メルサスとヨーコは疾風のような動きで、残りのゴブリンを全てあっという間に一掃した。


各ゴブリンの体は両手、両足、首、胴体とバラバラに分割されていた。

特に胴体にはエックス文字で斬られた太刀筋が痛々しく残っており、技名の通り合計7つの剣戟で敵を斬り刻んだことがわかる。


二人は剣をヒュンッと鳴らし血振りをすると剣を鞘に納めた。


「お嬢様、大丈夫ですか? ひとまず、これを!」


ヨーコがタマに駆け寄り、ポーションを飲ませる。タマの魔力と体力が回復する。

意識がはっきりと戻ったタマは、


「うぇぇん・・・ヨーコォ・・・こわがったよ~~~~~~っ!」


ヨーコにがっしりと抱き着いて鼻水だしながら泣き出すタマ。よしよしと頭をなでるヨーコ。至福の時だ・・・。


一方、それを羨ましそうに見つめるメルサスはガックリしている・・・『俺も頑張ったのになぁ。』・・・という感じだ。



数分して、自警騎士団 副団長のポプランが部下を数人連れてやってきた。

メルサスはゴブリンの処理を命じた。



ひと通り泣いて落ち着いたタマは,


「どうしてわかったの?」と聞いてみた。


「それはな、屋敷から火柱が見えたからだよ。」


とメルサスが言う。


「そうなんだ、パパ、ありがと♡ エヘヘ♡」


そのタマの笑顔を見て、『報われた~』と思うメルサスだった。


パパという生き物はいつも娘にとってのヒーローでいたいものなのだ。


しかし、メルサスはこの辺りにいるはずのないゴブリンの集団が、なぜこんな所に現れたのかを疑問に思い、調査を進めることにした。



ひと騒動終わった後も、バラ園は相変わらずポカポカ陽気に包まれ、土は優しい香りを生み出している。


そして花の香りがとても素敵になっていたので、

タマは『きっとバラのお花も笑顔になっているんだな』と、勝手に想像して自身も笑顔になっていた。



P.S. ちなみに、ひぃちゃんはタマがポーションを飲んだらすぐ復活し、その辺のバラの花をモシャモシャと食べていたが「ペッペッ」と吐き出していた。もちろん、火精霊の姿はタマ以外の誰にも見えてはいない。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

いつも応援ありがとうございます。

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