第一章 転生~幼少期編 【第十一話 目覚め】
こちらの作品は私の人生初の小説です。YouTubeを見ると「初心者がいきなり長編を書くと挫折する」とあり焦りましたが、書き始めたからには、最後まで完結できるように頑張ります!
タマの中にある火野珠美の意識は精霊装化したタマの、つまりは火精霊の戦いぶりを見ていた。
《 お!ファイヤーボール出してる!マ〇オみたい!すごい剣も使ってる?私、こんなに強いの?そんな能力あったんだ? なんかすごく体が温かい感じがするわね。心地いいような・・・なんか神聖な意識に包まれているような・・・たぶん精霊様のレベルが高いのね。だいたい転生者って最高級の精霊とか味方にするから期待してよさそうよね。ん?あれ、あれれれ・・・目の前が急に暗く、眠くなってきた・・・。》
―――― タマの寝室 ――――
「ん・・・。」
「お・・・お嬢様?」
「お嬢様が目を覚まされた・・・すぐ旦那様に連絡を!」
部屋の窓からは朝日が差し込んでいる。オレンジ色の柔らかい光だった。
周りの使用人たちの顔を見ると、緊張の糸がほぐれたような安堵のため息と、その裏に隠されている悲壮感が感じられる。
何かがあったのは間違いがないが、それはメルサスが来たらわかるのだろう。
タマは体を起こし、「ローズティーがのみたい。」とメイド長のエマにお願いする。
メルサスとヨーコが部屋にやってきた。ローズティーもやってきた。
それを見て「わしもくれ」というメルサス。「こちら、お嬢様の分ですので。」と言われ、がっくりするメルサス。
「しばらくお待ちください。」とあらためてローズティーを持ってくるよう命ずるメイド長エマ。
追加のローズティーはすぐに運ばれてきて、ようやく話が始まる。
「ターニャマリー、気分はどうだい?」
「うん、パパ、だいじょうぶだよ?けがもないみたい。ママは?」
以外とあっけらかんとしているタマに驚くメルサス・・・が、ミネラがいないことはちゃんと伝えなければならない。
「いいかい、タマ。ママは・・・今はこの屋敷にはいないよ?」
「うん、わかってる。だって、わたしがママをかわへおろしたから。」
「???」
何を言ってるんだ?という顔をするメルサス。
「どういうことだい?タマ?」
「あのね、ともだちが ちからをかしてくれて、ばしゃからとんだママをゆっくりとかわにおろしたの、でもながされちゃって・・・あとでちゃんといっしょにかえるはずだったのに・・・。」
メルサスはヨーコを見る。『説明しろ!』と言わんばかりだ。
「実は・・・お嬢様は精霊装化して、賊を追い払ってくださいました。その時は大人以上の戦いぶりで、火魔法を使っていました。」
――― ざわつく周囲 ―――
メルサスは驚く。そんな能力は滅多にないからだ。精霊装化という能力を持つ人間は世界中でも10人いるかどうかである。
「タマ、本当なのか?」
「えっと・・・ちょとだけしかおぼえてないの。ママのことは なんとなくおぼえてたの。」
「ん~そうか。」
あまり覚えてないのなら、これ以上突っ込んで聞こうとしても仕方がない。
「タマ、パパはね、ママはきっとどこかで生きていると思うんだ。きっとママを見つけてみせるよ? それまでは寂しいだろうが、我慢できるかい?」
「さびしくなんかないよ? パパもヨーコもみんながいるから、がまんできるよ?」
グッとくるメルサス。ヨーコも瞳をウルウルさせて「お嬢様~!」と感動している。
「そうか、じゃあ今日はゆっくりお休み。食事も持ってこさせよう。何かあったらすぐにパパを呼んでいいからね?」
「うん、わかった。パパ、ありがと。」
メルサスは再びグッとくると同時に、ニンマリと笑顔になる。
5歳の美少女の笑顔は可愛いセリフとフュージョンすると、とんでもない破壊力があるのだ!
――― お昼近くになり、窓から見える青空はどこまでも続いている。そのターコイズブルーの美しいグラデーションに「ほう。」っと心洗われるような気持ちがしたタマは、「あっ!」と精霊のことを思い出す。今は部屋にタマ一人だ。もしかしたらまだ、近くにいるのだろうかと思いつつも、ダメもとで声をかけてみる。―――
「お~い!せいれいちゃん、いるのかな?」
キラキラと部屋の空間の一部が光り出すと、迎賓館で出会った《 謎の女の子 》が姿を現した。赤い髪の毛を指先でクルクルといじっている。モジモジしているようだ。
「・・・・・えっと。」
「あ、いた!うれしい!」
ニコッと笑うタマ。しかし精霊は心なしか、ビクビクしているように見える。
「あの、せいれいちゃん?たすけてくれて、ありがと。」
と、一礼して顔をあげ、もう一度ニコッと笑顔を見せる。
「ぽっ・・・あ・・う、うん。たいしたことしてないよ?」
「フフッ、もっとおはなし、しよ?ともだちだもんね?こっちおいでよ?」
「う、うん・・・だもんね。エヘヘ。」
一緒にベッドに座る。
「どうして、げいひんかんにいたのかな?」
「甘いおかしのかおりがしてて、おなかすいてたから。」
「フフフッ、わたしといっしょだね!くいしんぼうなかまだね!」
「あの、ゴメンね。かってに体をかりちゃって・・・めいわくだったよね?」
「いや、だいじょうぶだよ。あなたのおかげで たすかったんだよ? えっと、なんてよんだらいいのかな?」
「・・・うん、あたし、火がとくいだから・・・」
「じゃあ、『ひぃちゃん』だね!」
「え?ストレートすぎない??」
「ほかにあるかな?んと、ファイヤーちゃん?」
「・・・だから、ストレートすぎだって、センスもかんじない・・・。」
「んじゃあ、『ひ』といえば~? フェニックスかなぁ・・・。」
「え!?・・・でも、それはあんまり・・・きらわれないかなぁ。」
「きらわないよー!フェニックスなんて、えほんのなかだけだよ? どこにでもいるわけじゃないんだよ? あなた、フェニックスじゃないでしょ? ひとのかたちしてるし?」
「うん、そうだよ。ち、ち、ちがうよ!フェニックスなんて、きらわれてるせいれいなんかじゃないよ!」
「・・・だよね?(あれ?なんかようすがへんだな?ま、いいか。)」
なぜか精霊ちゃん、ひぃちゃん(仮)は、おどおどしていた。
この世界には伝説の大精霊フェニックス、不死鳥王と呼ばれる炎の大精霊がいた。
しかし同時に、この大精霊は恐怖と嫌悪の対象でもあった。
なぜならこの世界にはいくつかの『禁忌の精霊魔法』があった。
そのうちのひとつが『無量大爆烈炎』
世界を炎ですべて焼き尽くし、地上世界を浄化する精霊魔法といわれる。
この魔法を使えるのは、不死鳥精霊女王という大精霊だけなのだ。
今、目の前にいる『ひぃちゃん(仮)』のように、見るからに弱小な火精霊には到底使えるわけがない。
そして、不死鳥精霊女王は人間界だけでなく、精霊界においても恐怖の対象でしかない。
「でも、せっかくだから、つよそうな なまえがいいよね?フェニキーとか?」
「フェニキー?・・・やだ。かっこわるい。」
「じゃあ、『ひ』は『あかい』から。『あかい』といえば・・・フェラーリだから、フェラちゃんは?」
「・・・それはなんか、いってはいけないなまえのような気がする・・・。」
「うーん、なかなかきまらないね・・・。」
「あ、いや、あの、『ひぃちゃん』で、おねがいします。」
「そお?・・・じゃあ、ひぃちゃんね!よろしくね!」
「う、うん、よろしくね!タマちゃん。」
「ウフフ、『タマちゃん』かぁ、ともだちってかんじだね!うれしい!」
ニコッとするタマの笑顔に、ひぃちゃんは見惚れてしまうのであった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。お話が長くなりそうでしたので分けました。
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