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第一章 転生~幼少期編  【第十話 捜索】

プロットの見直しで話数が変わりました。

2020/6/30改稿しました。


ヨーコが屋敷に戻った頃には、もう深夜になっていた。


屋敷は濃青色の屋根に白色の壁で、月光を浴び、幻想的な光を淡く反射していた。


屋敷の壁には薔薇の絵が描かれており、月明かりの中、屋敷の雰囲気をより美しく演出していた。




――― ロージズメル家は、主に薔薇を生産育成して生計を立てている子爵家である。

その販路は世界中の商業ギルドであり、王国内だけでなく、世界中のお花屋さんに愛されている。


その当主は《メルサス・フォン・ロージズメル》 まだ25歳の若き当主である。 ―――




ヨーコは門番に簡単な事情を説明すると、門番はメルサスを呼びに走って行った。


ヨーコは門を入ると従僕に馬を預け、タマをお姫様抱っこして屋敷の中へと入る。


屋敷内に控えていたメイドにタマを預けると、メイドはタマを寝室へと運んで行った。


ヨーコはメルサスの執務室へと向かおうと振り返ると、丁度、メルサスと執事長 ニコラスもやってきた。


二人ともまだ起きていたようだった。


「何があった?」


ヨーコから事情を聞いたメルサスは、すぐ自警騎士団(ロージズメル家の私兵団)を召集!


すぐに捜索隊を編成し、《執事長兼騎士団長 ニコラス》に命じ、ミネラの捜索へと向かわせる。



――― 屋敷を出てから約40分で現場に到着した捜索隊は、違和感を感じていた。


ヨーコからは激しい戦いであったと聞いていたが、路上には黒装束の遺体が無かったからだ・・・。


「副団長? どう思う?」


「はい、おかしいですね・・・調べてみないとわかりませんが、ここまで痕跡が無いというのは参りましたねぇ。」


と、頭を掻く 《副団長 ポプラン》。


二人は崖の縁まで馬を進めると、崖下には壊れた馬車が見えた。


「あれか・・・副団長、二手に分かれて調べてみよう!」


「はい。畏まりました。」


捜索隊は二手に分かれ、崖上班と崖下班に分かれて捜索を開始した。




――― 約4時間後 ―――



夜空は濃群青色から紫色へと変わり、地平線が輝く朱色に染まり始めていた。



結局、捜索隊は壊れた馬車の中から、宝石の付いたイヤリングの片側と、ご馳走がたんまり入っていたタッパーセットを見つけただけで、ミネラの消息はわからないままだった。


そして、黒装束の手掛かりも見つけることは出来なかった・・・。


ただ、捜索隊が到着する前に複数の馬車が通ったことが伺えた。


これがロージズメルの馬車を襲った犯人の擬装工作であることは容易に想像がつくが、これだけでは手掛かりに乏し過ぎる。


捜索隊は一旦、引き上げることにした。




ニコラスは帰路、考えていた。

気になるのはヨーコが戦ったという黒装束の遺体が全く無かったことだ。


何者かに回収されたのは間違いないのだが・・・大がかりすぎる。


バックの組織が何者かはわからないが、恐らくかなりの大きな力を持っている組織、あるいは有力貴族が関わっていることは、ほぼ間違いないと考えていた。



――― ロージズメルの屋敷 ―――


メルサスの執務室で、ニコラスが現場捜索の報告をしていた。


「そうか、ミネラの手がかりは見つからずか・・・。」


「はい、お役に立てず申し訳ございません、ご主人様。」


「いや・・・それならまだ希望が持てるではないか?」


「・・・と申されますと?」


「ミネラが遺体で見つかったわけではないからな。」


メルサスはニッと笑っていた。


「はい、確かに仰る通りです。しかし、ヨーコの報告にありました《黒装束》の手掛かりは全く見つかりませんでした。現場は複数台の馬車の轍がございましたが、それ以外は何も・・・。」


「そうか・・・であるならば、おそらく有力者、例えば大貴族が関わっているかも知れんな・・・ご苦労だった。もう下がってよいぞ。捜索はまた明日から続けてくれ。」


「畏まりました。」


「あぁそれと、タッパーのご馳走は勿体無いが、畑か家畜にやるしかないな。

容器は洗ってヨーコに返してやれ。」


「はい、そのように。では失礼いたします。」


バタン・・・


ニコラスが退室後、メルサスはベルを慣らしメイドを呼ぶ。


「ローズティーを頼む。」


メイドが一礼して部屋から出ると、壁にかけてある剣を取り、シャドウで剣舞を始める。


ヒュッ、ヒュッ、シュンッ、ピッ、ヒュン!


その剣舞は薔薇の花びらが舞っているような美しさだった。


『気持ちを切り替えるには体を動かすのが一番だ! それが、メルサス流!』


と、心の中で呟くメルサス。彼は以外とナルシストだった・・・。


ほどなくしてメイドが紅茶を持ってきたので、メルサスは剣を壁に掛け戻し、ワインセラーから1本のワインを取り出す。


シャトー・グリューネ・ブラント 1178年。


この世界の有名なワイン産地で1178年は当たり年であった。


そのワインをローズティーに少し入れ、マリアージュした香りと味を楽しみながら、メルサスは昨夜からのことを頭の中で整理し始めた。


『ふぅ。昨夜のパーティーは国王がご無事であったとはいえ、敵の目論見を完全には防げなかったな。毒見のメイドが被害者になるとは・・・。俺が予め握っていた情報で『王宮メイド長に不穏な動きあり』とわかっていたのに・・・。もう一歩、深く探るべきだったな。』


メルサスはローズティーを飲み、「ほぅ〜」っと一息入れる。


口の中には相変わらず絶妙な薔薇の香りと、葡萄の苦味がマリアージュし、至福の味わいを醸し出している。


思わず 「やはり、うまいな!」 と声に出る。


メルサスは整理を進めていく。


『しかしまいったな。特務でメイドの実行犯を阻止したと思ったのだが、あれは替玉だったのか?

いや、それなら毒見のメイドが倒れる筈はない。もしくは・・・メイド長が急ごしらえで別の実行役をあてがったか?そして、その実行役が何らかの理由でミスをした・・・?』



――― コンコン。


「旦那様、失礼いたします。」


執務室のドアがノックされ、メイドが入ってくる。


「旦那様、お嬢様がお目覚めになりました。」


「お、そうか? すぐいくぞ、ターニャマリー♫」



ローズティーを置き、メルサスは愛娘の部屋へと急ぎ向かっていった・・・・鼻歌とスキップを踏みながら。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ご意見ご感想などございましたら遠慮なくお願いいたします。


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