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渇望、果ては失する
逃げ出したいと思った。
あまりにも苦しくて
誰かの言葉は今だけは余計だった。
戻ったあと銀杏は何も言わず、
「休まなきゃね。」
一人言のように残して去っていく。
息をさせてくれ。
そう呟いて、タバコに火を着ける。
煙を体に循環させ、そして残した
落ち葉のように煙を吐き出す。
煙は上に立ち上ぼり、吸収されないまま
誰かの頭上を越えていく。
それは迷惑だ。喜劇といってもいい。
こんな嫌で嫌で仕方がない世界への
ささやかな復讐。
このときだけは自分を愛せた。
道具を使うことでしか危害も益も
もたらせられない。そんな自分の
戒めであったはずなんだ。
銃を手に取る。
弾倉を嵌め込み、弾を込める。
金属が擦る音がして銃に弾がこもる。
頭の中がすっと透明になる。
息もした。準備は整った。
やるべきことを声に出して、ただ決めた。
私の口は自然と言葉を象っていく。
さぁ、やるしかないよね。
それはあまりにもそっと空気に溶けていく。
煙と変わらずに




