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薔薇に死す者  作者: 甘味処雨
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依りかかる概念

門の前につくと目につくのは

古びた建物。

使われなくなった教会をそのまま使ってるから

礼拝堂には十字架があって、

たまにそこで祈るやつも居たりする。


私は、十字架の後ろのマリアが彫ってある

ステンドグラスを見るのは好きだ。



その横には私たちが寝る寄宿舎が、

まぁそこはみんなが居たり居なかったり、


私たちは礼拝堂の方にある無駄に

豪華な扉の前に立った。


「先生いるかな?」

銀杏はこっちを見ながら聞いてくる。


「居なかったときがあったか?」


銀杏はふと腕を組ながら下を向いて

思案して、勢いよく頭をあげて


「ないね!」


満面の顔で言い切った。

そうゆうことだよ、私はそう言いながら

扉に手をかけた。

ギィィィと音を発てながら中身が見えてくる。


礼拝堂の十字架の前で静かに目を瞑り

跪いている白髪でシスター姿の女性が見えた。


「せんせー!」

銀杏は大声をあげながらその女性に駆け寄る。

彼女もこちらに気づいたようだ。

ゆっくりと立ち上がり、青色の瞳が

銀杏を捉える。そこには聖母のような

優しい笑みを形どっていく。


「おかえりなさい。銀杏」


銀杏は先生に抱きつき、

先生も彼女を受け入れる。


そして銀杏を捉えていた瞳は

逸れて私に向けられる。


「そしてあなたも」


あぁ、おかえりなさいと言われるのは

心地いいものだ。仕事のあとの煙草とは

また違う心にすっと落ちるような言葉。


煙が体の疲れを溶かすとするなら

この言葉は体にクリームのように染み渡る。


「ただいま帰りました。先生。」


私は穏やかな気持ちになりながら

自然に笑みを浮かべながら

言葉を発した。


先生は交互に私たちに話すように


「では、仕事の進捗を聞きましょうか。

帰ってきた事に感謝をしてからね。」


抱きついていた銀杏は上半身を放し


「神様に?」

と聞いた。


先生はそっと笑って、

「私は神に、あなたは姉妹に

一番信じられるものに、祈るのよ。」


いつもこうだった。

先生は押し付けない。

神ではなく姉妹に感謝することを

許してくれる。

心酔するものはなんだっていい。

信じられるもの1つに絞るのなら

それは尊いと教えてくれる。



私は2人の祈りに合流すべく、

教会のステンドグラスの夕陽差した

薄暗い通路を歩いた。









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