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大人の条件
心に空洞があった。
そこから風が通り抜けて
なにとなく肌寒い。
あの人の暖かさが恋しい。
そんな気持ちすら悪と思いながら
帰路に着く。
古びた教会、懺悔でもすればいいのだろうか。
そしたらこの気持ちも晴れるか
そんなことを思いながら
ふと視線を前に戻す。
紅葉が門の前で支柱に寄り掛かりながら
空を見ていた。
「なにしてる。」
紅葉は私を見つけると
微笑んだ。
「いや、なに」
寄り掛かってた支柱から勢いよく
トッとブーツが音をならすように
離れると私に向き直って
「君を待ってた。」
そう呟いた。
その形どった笑顔があの人にちらつく。
心に靄がかかる。
「なんでだ。」
私は続ける。
「あの人を」
紅葉は被せる。
「殺ったんだよね。」
意図がわからない。
「あぁ、」
「どんな風に殺ったの?」
私は苛立ち始める。
そのせいで少しぶっきらぼうに
なってしまう。
「答えたくない。」
紅葉は笑顔を崩さない。
私はこんなに不愉快なのに、
「答えてよ。」
「嫌だ。」
否定と拒否が自然と出てくる。
「答えろよ。」
紅葉はもう笑わない。
上辺だけの膜だけの笑顔。
その手の先には銃口が私に向いていた。