第5話 王妃様は絞殺がお好き?
引っ越し作業をあらかた終えていると、扉をノックする音が聞こえる。王妃は、すでに引っ越し業者を買収して、ここに白雪姫の荷物が運び込まれたのを確認していた。白雪姫は、豪華な家具セットがなければ生活できないという習慣が仇になっていたのだ。
「白雪姫を出しなさい。すでにネタはバレているわ。こんな高級家具に囲まれて生活するのは、あの子の他にはいない。もしも抵抗するというのなら、あなた達が彼女を監禁しているとみなして、然るべき手段に出ますよ?」
「ちょっと、お待ちください」
奴隷小人『ブラック』は、とりあえず保留という手を使い、王妃をしばらく外で待たせるという事に成功した。これで7人の小人達で話し合う事ができるのだ。下手な対応をすれば、強制的に入って来られてしまうが、まだ警戒されていない状態だった。
「どうする、居場所がバレている以上、誤魔化しや居留守は使えないぜ。かといって、オレ達が白雪姫の住むこの家にいるのも不味い。ここは集会場所という事にして、遊んでいたら白雪姫が眠り込んでしまったので寝かしているということにしてはどうだろうか?」
「いや、白雪姫の寝顔を見た時点でヤバイ。それに遊んでいたと聞かれた時点で、俺たちの人生は終わる。ここは、白雪姫をこっそりと隣の部屋へ移し、この部屋は自分達の部屋だと思わせるのが正しい選択だ。白雪姫と同じ部屋の中にいる、ただそれだけでkillされてしまうんだよ。
狩人も行方不明、他のアパートでも行方不明者が続出している。やはり白雪姫をお城の外へ出してしまってはいけなかったんだよ。このままでは、オレ達の身が危なくなってしまう。1人を応対に出して、オレ達総出でベッドごと白雪姫を移動させるんだ! 急げ、急げ!」
小人達が話し合っていると、強い調子で扉がノックされる。王妃が白雪姫の事で心配になり、今にも部屋の中へ踏み込んで来そうになっていた。扉にチェーンをかけているので強制的に踏み込んでくる事はしないが、扉の隙間からじーっと中を睨みつけていた。今にも手に持った斧で扉を破壊しそうな感じだ。
「ねえ、いつまで待たせるつもりなの? 斧で強制的に扉を打ち壊しても良いのよ?」
「いや、なんでしたでしょうか? 私、お茶を淹れるのが得意でして、まずはゆっくりとお話を聞こうと思います」
小人『ブラック』は、テーブルにお茶を出して飲むように勧める。これで時間を稼いでいる間に、白雪姫をベッドごと移動させる予定だった。だが、娘を心配する母親には、下手な応対など通用しない。王妃が持っていた腰紐で小人『ブラック』は首を締まられていた。いきなりの首絞めに、彼は死にかけていた。
「お茶などどうでも良い。それよりも白雪姫を出しなさい。まさか、あなた、こうやって白雪姫をお茶に招いて、薬か何かで眠らせたわね。その後は、無抵抗な彼女を襲うとしてたなんて……。killして、部屋の中にいる白雪姫を助け出します!」
「ぐおおおおお、誤解です……」
小人『ブラック』の必死の抵抗も虚しく、彼は王妃によってkillされてしまった。しかし、寝室の入り口にも鍵付きの物件だったため、白雪姫と他の小人達が逃げる時間を確保することができた。わずか3分ちょっと、その間に白雪姫を他の場所に移動させる事に成功していた。
王妃は必死で寝室の扉を壊すが、扉が破壊された時にはもぬけの殻になっていた。白雪姫も他の小人達も森の中へ逃げて、しばらく姿を見せなかった。
王妃は、小人『ブラック』の遺体を吊るして、白雪姫を出さなければ次の犠牲者が出る事をほのめかしていた。寮を占領して、白雪姫を出すように要求するが、応対する者は現れなかった。
小人『ブラック』が惨殺されたことも知らずに、白雪姫は呑気にあくびをしてベッドから起き始めた。自分がいた場所が変わっており、野外で寝ていたことから小人『カカオ』に事情を聞く。意外と彼の事を気に入っていたようだ。肩を組むようにして彼に近付き、愛くるしい顔を近付けてくる。
「奴隷小人『カカオ』、何があったかを簡潔に述べなさい!」
「実は、王妃は引っ越し業者を買収していたようで、白雪姫の居場所がバレてしまいました。ですが、小人『ブラック』が必死の抵抗をして、なんとか姫の正確な居場所まではバレていません。今なら住む場所を移動する事で逃げる事が可能です!」
「奴隷小人『ブラック』、お前の働きは大して役に立たなかったけど、私にヒントをくれたわ。高級家具を買い取り、各寮に設置しなさい。そうすれば、奴の目を欺く事ができるし、私の住む場所が移動し易くなるわ」
「はっ、白雪姫の要求通りにいたします!」
こうして、学校の各寮に高級家具が設置されて、白雪姫の居場所が分からないようになった。小人『ブラック』は、お城の兵士の検死によって、イジメを苦にした自殺という事で処理された。
王妃は、引っ越し業者に姫の居場所を訪ねるものの、どの寮も怪しい事から居場所が特定できなくなっていた。小人『ブラック』がいた場所を、白雪姫の監禁場所として捜索するが、そこの寮に白雪姫が現れることは無かった。
「くう、雪ちゃんをどこに監禁しているというの? こうなったら、学校に行って、下校時間に保護するしかないわ。ああ、可哀想な雪ちゃん、きっと今頃は私に助けを求めているはずだわ」
白雪姫は、各寮を占領して、週ごとに住む場所を変えていた。奴隷小人も100人程度に増えて、快適な学校寮生活を送っていた。しかし、昼間の学校では完全に潜伏先を隠す事はできない。白雪姫に王妃の魔の手が迫っていた。




