表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

最終話 白雪姫は幸せに暮らす

 こうして数年が過ぎ、白雪姫は絶世の美女になっていました。王妃が希望していた17歳になり、結婚して王子様と結ばれる事になります。その美しさは、国民の誰もがうっとりするほどの可愛らしさと可憐さを兼ね備えていました。王妃は、その美しさを興奮して語ります。


「いやあああああああん、滑らかでツヤのある美しいセミロングの黒髪、白い雪のような透き通る肌、ぷるんと弾んで光沢のある瑞々しいピンクの唇、ちょっと赤味がかって野生のケモノを思わせる危険な魅惑を秘めた瞳、どれもが私の理想的だわ!」


 王妃は白雪姫が絶世の美女になった事を知って喜んでいました。自分も彼女の美しさにつられて、同じような美女として磨きをかけていたのです。2人は、共に違う感じの美しさを持っていました。白雪姫でさえ、彼女を自分の双子の姉妹のように感じています。


「お母様もとても美しいわ。私が憧れるブロンドのヘアーに、同じように白い肌、色合いの薄いピンクの唇、ブロンドヘアーとマッチしたような青いルビーのような瞳、私はお母様をもう1人の自分だと思って愛していましたわ」


「嬉しい、白雪姫。本当は、この世界の誰にもあなたを渡したくなんてないの。あなたのお父様だって、私があなたに触れるのを禁止していたわ。たとえイケメンに成長した弟王子様だって、渡したくはないの……」


「お母様、子供を産めない女王は価値が下がりますよ。お母様の美しい遺伝子をもらった私が、その遺伝子を次のお姫様に継承する。そうして、私達の家系は素晴らしい美女達を生み出してきたのです。私の美しい遺伝子も歴史に残させてください♡」


「うう、この国の未来さえも見据えているなんて、なんて凄い女王様なの。私は、白雪姫を産んで世話できて幸せでした。これからは、王子様と末永く幸せに暮らしてください」


「子供ができたら、お母様にも抱かせてあげますよ♡」


「あーん、白雪姫の娘なら絶対に可愛いわ♡」


 白雪姫と王妃は、結婚式で最後の挨拶を交わしていた。白雪姫は確かに大変美しく、その白いウェディングドレスを着た姿は聖女のように輝いて見えた。その彼女の美しい顔が、ある場面になると邪悪な笑顔を見せていた。


「さて、そろそろブタ王子の処刑に移りますか。私を死の淵まで追いやり、絶望を与えた彼には、数年間の牢獄生活を送らせて絶望させ、私の花嫁姿を見せながら苦しませて、苦しませて、苦しませて、殺してあげるわ♡」


「所詮はケダモノ、同情する余地は一切いらないわね。それで白雪姫、どのような処刑法を選択するのかしら?」


「この熱くなった鉄の靴を履かせて、苦痛の叫び声を上げさせながら徐々に死んでもらうわ。足と鉄の靴が一体となり、逃げようにも逃げられない絶望を骨の髄まで堪能させてあげないと! 私が味わった苦しみを、彼にも存分に味わってもらわないと!」


「ふん、それだけでは不十分よ。すべての国民にも彼が必要のない根性無しと思わせて、こんな王子が王位継承しなくて良かったと心の底から思わせなくては……。ここは、お母様のアイデアも一緒に実行しなさい♡」


「さすがはお母様、絶望のどん底にいるブタ王子に、さらなる絶望を与えるなんて……。こんな残酷な処刑法、普通なら考え付かないわ。私、興奮と武者震いで震えてきちゃう♡」


 こうして、白雪姫と王妃の考えたブタ王子の処刑が開始されました。彼は長い牢獄生活で本当にブタのようになっていたのです。まずは、白雪姫が用意した鉄の靴を熱して赤くさせました。周囲には香ばしい香りが漂います。


「ブタ王子様、これは根性を鍛え直す道具なのです。素晴らしい精神を持った人物が履けば、苦痛は一切ありませんが、心の汚らわしい者が履けば、醜い素顔を晒す事になります。

 まずは、美しい心を持った王妃である私が履いてご覧に入れましょう!」


 王妃は、熱くなっている鉄の靴に、美しい足を履き入れました。この靴には仕掛けが付いており、中まで熱が伝わらない仕組みになっていました。見ている群衆には、ただ赤く光っている靴を履いているようにしか見えません。


「ねっ、心が汚れていないのならば、何も恐れる事はありません。あなたが白雪姫を暗殺している事を反省しているのであれば、私達はあなたを釈放する事に決めました。さあ、自ら心が清い事を証明してください!」


 ブタ王子は、王妃に言われるままに赤く熱せられた靴を履きます。熱いと思いましたが、王妃が無事でいる事を見て、自分も大丈夫だと考えたのでしょう。靴を履いた瞬間、自分の考えが間違いである事に気付きました。


「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 ブタ王子の顔は苦痛で歪み、恐ろしい醜悪な顔を群衆に見せ付けていたのです。その顔は、邪悪そのものであり、群衆も彼が極悪人であった事を悟ります。彼は逃げようとしますが、靴が足から離れません。そのうち、ショックで気絶してしまいました。


「あらあら、根性がありませんね。どうやら、彼は本当に心まで汚れきったブタ野郎だったようですね♡」


 王妃は、彼の処刑が成功に終わり、群衆の誰もが彼を極悪人である事を知って喜びました。白雪姫の判決に不平を言う者など1人もいません。そう、処刑されているブタ王子以外は……。その彼が最後の力を振り絞り、鉄の靴から逃れでました。自分の足を切り落とし、なんとか動けるようになっていた。


「はあ、はあ、はあ、王妃の靴には……」


「ほーう、鉄の靴を履いても、まだ動けますか。どうやら少しはマシな部分が残っていたようですね。不本意ですが、彼の釈放を命じましょう。もっとも苦痛に耐え続けて何分生きられるか分かりませんが……」


 王妃は、ブタ王子が死ぬ者と思い油断していました。彼女自身は、未だに鉄に靴を履いていたのです。見た目こそ赤く焼けた鉄の靴ですが、それは真っ赤な偽物でした。熱は一切無く、ただの光るだけの鉄の靴だったのです。


 ブタ王子はその事に気が付き、死ぬ瞬間に彼女を道連れにする恐るべき計画を考え付きました。鉄の靴を履いているということは、動く事自体はできないのです。そして、王妃自体は燃え易い素材のドレスを着ていました。


「白雪姫を僕の物にできないのなら、せめて王妃だけでも……」


「何を……」


 ブタ王子は、城の周りにあった火器を手に取り、王妃の服ごと彼女を燃やし始めました。自分も火に包まれていますが、もはや痛覚も感じなくなっていました。白雪姫に自分の双子とまで言わしめた彼女は、火による苦痛によって無残にも醜い素顔を晒していました。


「いやああああああああああああああああっ、お母様が!」


 他人に拷問をかけて喜んでいた白雪姫が、初めて他人の事を心配して悲鳴を上げていたのです。ブタ王子は当然丸焦げになろうが助ける者などいませんでしたが、王妃を救おうと数人の者が駆け付けました。しかし、彼女の体は半分以上燃えており、素顔も醜いままでした。


「ああああ、お母様、最後はなんて醜い姿に……。私を大切に育ててきた代償が、これだったなんて……。あまりにも酷過ぎるは……」


 王妃は最後の力を振り絞り、白雪姫に話しかけます。ショックで死にそうな苦しみですが、彼女のために笑顔でこう語りかけました。


「他人を傷付けている時は痛みを感じないわ。でも、自分が傷付いて初めて苦痛である事がどれだけ辛い事か分かったわ。白雪姫、あなたはもう少し他人の事を大切にしてあげなさい。そうすれば、美しい姿のままで一生を終える事ができるわ……」


「お母様!」


 こうして、王妃の最後のレクチャーが終わった。人々を白雪姫と共に苦しめてきた彼女だったが、最後の最後でイジメはダメだという事を気付きました。他人が苦しむ姿を見るのは楽しいが、自分が同じ目に遭うと苦しい事を初めて経験したのです。


 こうして、白雪姫は王妃の話を聞き、少しだけ拷問を控えるようになった。奴隷小人の数も著しく減る事はなくなり、この国にも平和が訪れたのである。白雪姫は、犯罪者を使った適度な拷問を楽しみつつ、王子様と一緒に末永く幸せに暮らしました。めでたしめでたし。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ