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第1話 王妃様は美少女をご所望する

 ある王国の王妃様は、雪が降る天気の中、生まれてくるであろう自分の子供を思って針仕事をしていた。1針1針と、生まれてくる愛くるしい自分の子供を思って裁縫を進めていた。すると、慣れない針仕事のせいか、指に針を刺してしまった。


「うっ、生まれて来る子供は、男の子かしら? それとも、女の子かしら? まだ名前さえも決めていない。私は、女の子が欲しい。もしも生まれてくるのが女の子だったなら、一緒にお買い物したり、恋話したり、お風呂に入ったりしたいわ。


 どんな容姿の子が生まれてくるんだろう。私は、世界一の美女としてもてはやされたけど、その容姿を受け継いで欲しいわ。ううん、欲を言うならもっと綺麗で可愛い子になって欲しい。そして、私と燃えるような恋に落ちて欲しいわ♡」


 王妃は生まれて来る子供の事について陶酔していると、自分が口にしてはいけない単語を口走った。いくら可愛くて美人でも、自分と恋仲になるなどあってはならない事なのだ。いずれは一国の王子様と結婚して、自分と同じように王妃様とならなければならない。


「ふう、ちょっと熱くなりすぎちゃったみたい。窓を開けて、外の空気を吸ったほうがいいわね。生まれて来る子にも、ストレスを溜めすぎるのは悪影響になるわ!」


 王妃様は、黒縁の窓を開けて、雪化粧している庭を眺め始めた。その景色は美しくて、白銀の世界に輝いていたが、どこか物足りなさも感じていた。白い世界は美しいが、殺風景であるという寂しさを感じてナーバスになっていた。


「この世界は美しい。でも、冷た過ぎる。燃えるような情熱が無ければ、春の爽やかさに到達する事はできないわ。あと一色、人間としての暖かい色合いが欲しいわ」


 王妃がそう言って、冷たい風を感じていると、彼女の血が雪の積もった地面に数滴流れ落ちた。ぽとり、ぽとり、ぽとり。白い雪の上に3滴の赤い血が流れると、それを見た王妃はなんとも言えない美しさを感じていた。彼女の脳裏に、黒い窓枠と白い雪、赤い血が刻み込まれる。


「ああ、なんて美しいの……。白い雪化粧の中に、美しさを主張するような赤色、更に、それの全体を際立たせるような真っ黒な窓枠。そうだ、今度生まれて来る子は、こんな素晴らしい調和を持った女の子が良いわ♡」


 王妃様は、雪が再び降ってきて、血によって染まった赤色が消えるまで眺めていた。その景色を見て、更に具体的な美しさを表現し始めていた。まだ生まれてもいないのに、まるで生まれて来る子供が女の子であると分かるような愛情を感じ始めていた。


「ああ、神様、生まれて来る女の子は、雪のように肌が白く、血のように瑞々しい唇を持っており、黒くて触りたくなるような窓枠に近い美しい髪の毛を持っていますように。


 もしもそのような美しい女の子が生まれたら、私は『白雪姫』と名付けて、お嫁に行くまで彼女を大切に養っていきます。どうか、私のささやかな願いを聞き入れてください♡」


 王妃様は、必死でお姫様の誕生を待ち望んでいた。しかし、肝心の王様に対しては、昔ほど愛してもおらず、仕事をしない生きた屍のようになった夫の事を見下していた。王様の愛情は、美しい王妃に魅了されているが、王妃は生まれて来る白雪姫の事しか考えていなかった。


「ああ、可愛い白雪姫早く生まれてきておいで♡ うふふ、私1人の時は雪ちゃんと呼ぼうかしら。私のオッパイにむしゃぶり付くように飲んで欲しいわ。そのために肩凝りに耐えてまで大きなオッパイを維持しているのだから……」


 王妃様は、お腹の中にいる白雪姫を待ち望んでいた。大きなお腹をさすり、生まれてきたこの子にどのように愛情を注ごうかと考えている。美しくも凛々しい、大人のような女性になって欲しいと願っていた。王妃は黒髪ショートの美女が好みだったようだ。


 彼女に似合うであろう服を年齢ごとに丁寧に裁縫していた。最初のうちは苦手だった針仕事も白雪姫を思いながら作業すると、あっという間に時間が過ぎてしまう。彼女のために作った服は100着を超えていた。


 この頃から、王様も兵士達も王妃の異常な愛情に危機感を抱いていた。果たして、白雪姫が生まれたらこの愛情がどのようになってしまうのだろうか? もしも腹心の部下といえども白雪姫を傷付けた場合、処刑されてもおかしくないほどの溺愛ぶりだった。

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