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「皆の者聞けぇい!武王邸に潜んでいたバンパイアを討ち取った!武王シンバは、その際相討ちとなって果てた!シンバはその槍を私に託し、民の安寧を願いながら逝かれた!今すぐ争いを辞めよ!」
武王邸のテラスでシルバの掲げた槍から、雷鳴が轟く。やがてそれは、全てを洗い流す雨となって、島に降り注いだ。兵士達は武器を降ろし、雨にうたれながらその場に膝をついた……
武王の真実は、誰にも語られる事は無かった。武王は英雄のまま語り継がれ、島の伝説となるのだった。
それから……三王の島は、聖竜王の島と呼ばれることとなった。シルバは武王を継ぐ事を良しとせず、エミリオの補佐の立場を守った。人々は戦場となった町の復興に努め、穏やかなリゾートの島を次第に取り戻していくだろう。
エミリオの配下となったリンドーは、ハンスのために義手を作った。マナを巡らせることで、指の一本まで自由に動かす事が出来る。ハンスの悪ノリとリンドーの遊び心で、腕に各種の武器が内蔵されている。だが全て使いこなすには、しばらくかかりそうだ。
町の復興の合間を見て、まどかは盛大な宴を催すことにした。さながら夏祭りのように、出店スタイルでたこ焼きや焼きイカ、その他様々な屋台を配置し、バンパイア討伐と、復興の労をねぎらう意味での開催だ。
この時ばかりは王も兵士も漁師もない。あちこちで笑い声が聞こえる、大宴会になった。
「エミリオ、これからが大変だよ?頑張ってね。」
「大丈夫!この笑顔を守ってみせるよ!手伝ってくれるよね、シルバ!」
「もちろん。これでも一応、シンバの意志を継ぐ者ってことになってるからな。」
「シルバ、頼んだよ。」
「まどか、行くのか?」
「あぁ、この町好きだけど、これでも私は冒険者だからな。」
「わかった。」
それ以上は言葉を交わすことなく、みんなで宴を楽しんだ。
-翌日、まどかとメグミは、ジャンを帝都に送り届け、再び神樹の森に来ていた。
「おかげでバンパイアを封印する事が出来た。感謝するよ。それで……実はこの匣、預かって欲しいんだけど。」
「な!やはり貴女と関わると、面倒事に巻き込まれるじゃない!そんな危険な物、預かれないわよ!」
『構わぬ。ユグドラシルの名において、その封印、見張ってやろう。』
「え!し、神樹様!」
『良いでは無いか、エリス。それとも、お前は荷物の番も出来ぬと言うのか?』
「そ、そのようなことは……仕方ありません。神樹様がそう仰るならば、預かりましょう。」
「助かるわ、エリス。」
『匣を預かる代わりに、渡すものがあるのではないか?エリスよ。』
「……わかりました。この弓を返すことにします。勘違いしないでください。私はメグミに返すのですから!」
「分かってるよ。メグミ、良かったな。」
「うん!」
「じゃあ、エリスさんの気が変わらないうちに帰るか。」
「神樹様、エリス、ありがとう。ジーナを大切にします!」
まどかとメグミは、転移で一気に戻った。
「おかえりなさいませ。お嬢様方。」
「「ただいま!」」
「まどかお嬢様、今後はいかがなさいますか?」
「あぁ、帝都に立ち寄った時、王国がまた影でコソコソ動いてるって話を聞いた。調べてみようと思う。」
「では、次は王国へ?」
「あぁ。この島なら、王国行きの船もある。ひとつ王国に乗り込んでやろうじゃないか!」
「かしこまりました。既に支度は整ってございます。」
「さすがだな、ジョーカー。」
「執事の嗜みでございますれば。」
これにて「アイランド編」完結でございます。
次作を書くかどうか、まだ何も考えていません。
たっぷり充電して、
(ついでに滞っている他の作品に力を入れて)
また続けれたら幸いです。
読んで頂いた皆さん、ありがとうございました。
この後、少しおまけがあります。




