D4-3
まどかは静かに怒っていた。
バンパイアに、そして治せぬ程の傷をハンスに負わせてしまった自分に。自分を否定したくなる程の後悔。その心の動きを バンパイアは見逃さなかった。
「どうした?気が荒れているな。幻術の中でも気配がバレバレだぞ!仲間が負傷した事が、そんなに悔しいか?あぁ?」
「煩い!」
まどかはバンパイアにラッシュを打ち込む。だがその腕をバンパイアに掴まれてしまった!
「そんなに乱れていては、簡単に躱せるぞ!」
その時、
「汚い手を離すっす!」
まどかを掴んでいた手が、切り落とされる!
「お返しっすよ。」
「聖茨の鞭!」
「ぎゃあああ!」
そこに立っていたのは、メグミに支えられ、アームカバーに手槍を仕込んだハンスだった。
「まどか様、元はと言えば、役に立ちたいと焦っていた俺のミスっす!まどか様が気に病むのは違うっす!俺まだ、生きてるっす!」
「ハンス……すまない。もう迷わない!一気に行くよ!」
メグミがコバルトを呼ぶ。
「ハンスさんが無茶しないように見張ってて!ジョーカーさん!行きます!」
「「双剣乱舞!」」
師弟コンビの息のあった斬撃。四本の刃がバンパイアを切り付ける!
(くっ、くそ、こうなったらあのハンスに精神を移して……)
「メグミ、ジャン、行くよ!みんなは攻撃を続けて!」
まどかは匣をコバルトに渡すと、封印の術式に入った。
「な、なんだこれは!あれは、あの匣はっ!」
懸命に匣を奪い取ろうとするバンパイア。しかし伸ばした手をチェリーが、ジョーカーが斬り落とす!マリアが糸を絡め、シルバの槍がバンパイアの足を貫き、床に釘付けにする!
「おのれぇ!餌である人間ごときがァ!」
とうとうバンパイアは、肉体を捨て、強引にハンスの身体を奪いに来た!
「コバルト!匣を開けろ!」
匣に吸い寄せられるバンパイアの魂。それでもハンスへと触手のようなものを伸ばす!
「ソウルイーター!」
チェリーの大鎌が、バンパイアの触手を斬り飛ばし、そのまま匣へと魂を叩き込んだ!すかさず匣を押さえ付けるコバルト、だがバンパイアの魂も、隙間から這い出ようと必死に抵抗する!マリアが糸で匣を縛り付ける。ジョーカーが、チェリーが、コバルトと一緒に匣を押さえ付けた。
「今でございます!」
「「「極式封印術!」」」
三人の練り上げたマナが、純氷のように匣を包む。なおも圧縮し、匣を封印していく。だが匣が暴れて、上手く封印出来ない!
「くっ、マナが足りん!このままでは、封印が破られてしまうぞ!」
「絞り出すしかないだろ!みんな、頑張って!」
皆が必死に押さえ付ける!その時、
「マナが足りんのか?これを使え。」
リンドーが魔道具の箱から、魔晶石を取り出し、放り投げる!匣を中心に、まどか、メグミ、ジャン、そして魔晶石で三角錐が出来上がった。
「「「行っけぇーーつっ!!!!」」」
「……」
「ガチャり。」
匣から鍵が締まるような音がした。ジャンが匣に封の札を貼った。
「成功じゃ。もうマナも空っぽじゃわい。」
喜びの声を上げる気力も無かった。みんなその場に膝をついて、へたりこんだ。するとハンスが、
「ジョーカーさん、俺の収納に、まだ少しリュウジュの実が残ってます。みんなで分けるっすよ。」
ジョーカーは手際良く切り分け、みんなに配った。




