D4-1
武王の手が、シルバの眼前で止まった。
三叉の槍は、正しく武王の心臓を貫き、シルバの手元に戻った。
「馬鹿な!だがこの程度では、我は死なん!」
だが言葉とは裏腹に、武王は指先から灰のように崩れていく。槍に貫かれた穴から、大量のマナが漏れ出ていたのだ。いつの間にか武王の背後に立つ男が、溢れるマナを吸い取っていた。
「武王を傀儡として国を乗っ取るつもりでしたが、ここまで約立たずだとは……なんの為に力を与えたのか……やはり脳筋では理解出来ないのでしょうね。でもまぁ、この身体に精神が馴染むまでの時間稼ぎにはなりました。いいでしょう。少し遊んであげましょう。」
バンパイアは他には目もくれず、まどかに爪を伸ばす!咄嗟に聖のオーラをまとい、拳で爪を払った。
「どうしました?戦乙女。やはり貴女の力、仮初のようですね!一時的に亜神に近付ける技、やたらと使えないのでしょう?」
「死に損ないのバンパイア、今のお前に、使う必要が無いだけだ。遊びなんて言ってると、火傷じゃ済まないぞ!」
「私を侮辱したこと、あの世で後悔するがいい!」
バンパイアは床に爪を突き刺す。すると床や壁から無数の爪が突き上がる!
「揃って串刺しになるがいい!」
予期せぬ足元の攻撃に、身動きも取れぬまま全員が貫かれた。
「呆気ないのぉ。お前達のマナ、まとめて吸ってやる!」
バンパイアは勝ち誇り、爪からマナを吸い始めた。だが一向にマナの気配が無い。
「なんだ?マナの欠片も無い。そんなはずは……」
すると、部屋中に突き出ていた爪が、尽く切られていく。串刺しになったはずのまどか達は、霞のように姿を消した。
「なんだ、何が起きてる!」
「俺のナイフも、爪切りくらいにはなるっすよ。」
「お前の仕業か!ハンス!」
「俺に気を取られてると、かなり危ないっすよ!」
「なに?」
「聖炎陣、フルスロットル!」
突如目の前に現れたまどかが、その拳をバンパイアの顔面にめり込ませる!バンパイアはそのまま壁に叩きつけられ、瓦礫の中に埋もれた。
「まさかこの程度では死なないよな?バンパイア。」
「……おのれぇ、小賢しい!」
瓦礫を跳ね除け、立ち上がるバンパイア。
「メテオストライク!」「ソウルイーター!」
バンパイアに向け、隕石の如くコバルトの鉄球が降る!続けて魂を切り裂くようなチェリーの斬撃が飛んでくる!
「ぐあぁーーっっ!!」
「双剣乱舞!」
ジョーカーのエストックがバンパイアを切り刻む!そこにシルバの投げた槍が突き刺さる!
「ボルテッカー!」
避雷針のように、槍に稲妻が落ちた!
「ぎゃあああっ!!」
埃の舞う中、六人が立っている。
「なんなのだ……串刺しになったはずでは無いのか!」
「ほう。不死の者とはこういう者か。あまり良いものではないのぅ……興醒めじゃわい。」
「誰だ!」
「儂は帝国魔導師、ジャンと申す。お主が串刺しにしたのは、儂が作った幻影じゃ。残念じゃったの。」
「馬鹿にしおって!!切り刻んでやる!」
バンパイアは爪を揃えると、剣のような形になる。両手を剣に変え、瞬間移動で斬りかかって来た!
「ガキーン!」
まどかが拳で受け止める。その間にジャンが再び幻術を展開した。
「さて、第二幕じゃの。存分に味わうがよかろう。」




