D3-4
「ふんっ!はっ!」
立て続けに二人の首を飛ばす。だが、首を失ってなお攻撃を仕掛けてきた!
「やはりそうですか。」
ジョーカーは首の無い親衛隊の剣を受け止める。その時、背後からナイフが飛んできた!
「ぐはぁっ!」
銀のナイフが心臓を貫き、首の無い親衛隊は、灰のようにその姿を崩した。
「間に合ったっす!」
腰のベルトに、十本の銀のナイフを差したハンスが立っていた。
「ハンス様!」
「ジョーカーさん、手伝うっす!」
チェリーの背後から、三連の鉄球が降り注ぐ!
「ふべらっ!」
チェリーを挟撃しようとしていた親衛隊が、ミンチ肉になっていた。
「コバルト!今わたくしを狙いませんでしたか?」
「チェリー、ここは普通、お礼を言う所ではなくて?」
「ひとまず片付けましょう。この者たち、戦術的に攻めてきますわ。」
「ではこちらも、戦術的に参りましょう。」
コバルトは当たるを幸いに鉄球を振り回す。チェリーが切り飛ばした腕や首、胴体など、片っ端からミンチにしていった。
「ねぇコバルト、これのどこが戦術的なの?」
コバルトは肉片になってなお蠢く親衛隊を 一箇所に集めた。
「これでいい?」
「上出来じゃ。スパイダーネット。」
肉片を覆うように、網を打ち出すリンドー。箱のボタンを押すと、肉片からマナが流れ出る。
「なるほどのぅ。こうするとマナの吸収が早いな。よいデータが取れたぞ。」
肉片の山は、やがてただの砂山へと姿を変えた。
-シルバは、武王に対峙している。全身の傷から血を流しながら、気力だけで立っているという状態だ。武王はそれを涼しげに見ている。
「どうしたシルバ、満身創痍ではないか!我はまだ、半分の力しか出しておらぬぞ!我を止めるのでは無かったのか?ガハハハハ……」
「そうだな。ハァハァ……私もそろそろ、本気を出さねばな。」
「強がりを申すな。どうじゃ、力とは素晴らしいであろう!お主も欲しいとは思わぬか?」
「確かにな。お前が溺れるのも理解出来る。」
「溺れるだと?」
「あぁ、今のお前は、借り物の力で天狗になってる愚か者だ!昔のお前は、強さの中に怖さがあった。尊敬も出来た。王威と言うやつだ。今のお前にはそれが無い。ただの暴威を振るう奴など、私の敵ではない!」
「言わせておけば!暴威に呑み込まれるがよい!」
武王は三叉の槍を 力任せに投げた!轟音を響かせ、火の出るような勢いでシルバに襲い掛かる!シルバは辛うじて身を捩る。脇腹を掠めながら、武王の槍は壁に深々と突き刺さった。
「シンバよ。これが証拠だ。」
シルバはフラフラと壁まで歩き、三叉の槍を掴む。槍は光を放ち、シルバを包んだ。
「そうか、お前も悲しいのだな……」
光に包まれたシルバの傷が、みるみる塞がっていく。シルバが腕に力を込めると、それに従うように槍がするりと抜けた。
「武王の槍は、狙ったものは必ず貫き、どこにいても手元に戻る。そして、その槍を持つに相応しい武人であるか、槍自身が持ち主を選ぶ……その槍が、お前を認めぬと言っている。その悲しみ……その身でしかと受け取るが良い!」
「世迷いごとを!押し潰してやる!」
シルバは槍の意志を感じ、一体となる。槍の命ずるままに、武王に向け投げた。
「全てを貫け!海皇三叉戟!!」




