D3-3
武王の部屋の前。
他の国であれば、玉座の間と言える部屋の扉に手をかけているまどか。
「待っておったぞまどか。入るがよい。」
(想定内ってわけか……)
まどかは扉を開け、辺りを見回す。
「心配するな。罠などない。お前達の心理、聞かせて貰おう。」
「心理?こっちが聞きたいくらいだ。どういうつもりだ武王!」
「聞けばお前達は、魔物に加担しておるそうではないか。何をするつもりだ?」
「武王、誰に吹き込まれたか知らないが、私に企みなどない!ただ人も魔物も、善悪はある……という事だ。全てが善ではないが、全てが悪でもない。魔物を脅威と思う人間は多いだろう。
だが片っ端から討伐というのは、違う気がする。互いに歩み寄れば、共存も可能だと私は信じている。」
「ほう。なかなか甘い考えだな。理解した。やはりお前達は危険だ。魔物が結託して力を付ける前に、お前達は討伐する必要があるな。」
「武王、あんたに入れ知恵した者こそ、悪しき魔物だとなぜ気付かない!操られているんだよ!」
「何を言うかと思えば……お前も言ったではないか、魔物との共存。人も魔物も善悪はある。だがなまどかよ、善悪の判断は誰がする?
我は老いた。お前達の力に驚愕した。この先国を守る王として、民を守る力が我には必要だ。老いることなく、増大する力……正に理想だ。それを与える者を 我は善だと判断した。故に敵対するお前達は、悪だ!」
「!……そうか、自ら望んで眷族になったと言うのか……」
「我が配下とならぬか?お前達の力、この国を守るのに必要だ。」
「なるほど。伊達に永く生きてないなバンパイア!人の弱みにつけ込むとは……超めんどくせぇ……」
「さぁ、どうするまどか!」
「……勝手なことを……武王!民を守る為と言えば、大義名分になるとでも思ったのか!力は脅威となり、争いを生み、弱き民は路頭に迷う。
それが分からないのか!お前がやろうとしているのは、力による支配だ!無駄な力など、求めるもんじゃない!」
「それがお前達の答えか。よかろう。成敗してくれる!」
「シンバ……武人の誇りまでバンパイアに売り渡したと言うのか……友として、お前は俺が止める!」
「シルバよ、以前の私ではないぞ。もはやお主と我の差は歴然だ!それでも刃向かうと言うのなら、決着を付けてやる!」
それからは言葉のやり取りは無かった。互いに武器を構え、相対する。眷族となった武王の親衛隊も、間に割って剣を構えた。
まどかは戦乙女装備をしなかった。多大な精神力を消耗するので、封印術に支障をきたすからだ。
「まどかお嬢様、親衛隊共はわたくしめが相手致します。チェリー、行きますよ!」
デスサイズを構えたチェリーが先陣を切った。さすがに武王配下の最強部隊、一撃とはいかなかった。
「少しはやり甲斐がありますね。」
相手は連携で攻めて来る。しばしの間、戦闘は膠着した。
「まさか雑兵に手を妬くとは……」
ジョーカーも最初から全開である。漆黒の二刀を構え、攻防一体であった。さすがに手傷を負わされることは無いが、決め手をかいていた。
「お手伝いします!」
マリアが要所で糸を飛ばす。親衛隊ともなると、さすがに絡め取られることは無い。だが、その一瞬気を取られる隙を ジョーカーは見逃さなかった。




