D3-2
まどかは気弾を放ち、兵士達を押し込んだ所に壁を作る。メグミは蔦を絡ませ、兵士の動きを止めた。無駄な戦闘を避け、最短で武王とバンパイアに向かった。
『まどか様!まずいっす。』
ハンスの念話が届く。どうやらリンドーを救出した後、眷族が待ち伏せて居たらしい。武王邸の中でも、上位に位置する武人を眷族とする事で、少数精鋭を狙ったようだった。
『まどかお嬢様、問題ありません。わたくしが守ります。』
『コバルト、頼んだよ。』
コバルトはスコーピオンテイルを取り出し構えた。
「お嬢様に許可を頂きました。貴方達を排除致します。」
「排除ときたか!笑わせるな!ひねり潰してやる!」
ハンスはリンドーにリュウジュの実を渡す。
「食べるっす。」
「ほう。リュウジュか。」
リンドーは食べながら、コバルトを観察する。
「あの娘……人間ではないな。」
「へ?な、何言ってるんすか……」
「いやいや、警戒せんでもよい。別にどうこうしようと言うのではないぞ。あれは、まどか君が作ったのか?」
「え?ま、まぁ、その……」
「まどか君は、本当に錬金術師では無いのか?彼女の知恵は、もはや人の域を超えとる。確かに戦乙女は亜神だが、知識においては、神の領域と言って良いじゃろ……」
「神……っすか……」
「君にはわからんじゃろ。錬金術には対を成す究極がある。未だ人が到達出来ぬ領域じゃ。一つは金の錬成。錬金術と呼ばれる語源じゃが、誰一人成功した者はおらん。皮肉よのぅ。
もう一つは、人間の錬成じゃ。術の力で人を生み出す。ホムンクルスとも呼ばれるな。あの娘は、それに近い存在じゃろう。神の御業としか、呼びようがないぞ。」
「ハンス様、少しその人間を黙らせてください。気が散ります。」
「あ、お、おぅ。リンドー、おしゃべりは終わりっす。俺達も戦うっすよ!」
「うむ。若いの、君は下がっておれ。実験の邪魔だ。」
「な!」
リンドーは杖を取り出し、関節を外すと、箱に繋げた。
「結界の祠の応用じゃ。娘、一人こちらへ寄越せ。」
コバルトは眷族の一人を掴み、リンドーに向かって投げた。無表情なコバルトだが、少しイラッとしているらしい。リンドーに投げ付け潰す勢いだ。
「手荒いのぅ。スパイダーネット。」
リンドーは杖の先を眷族に向けた。強靱な糸で編まれた網が飛び出し眷族を包み、地面に固定した。
「若いの、箱の丸いのを押せ。」
言われるままにハンスはボタンを押す。すると網から糸を伝い、箱に何か流れて来る。
「コイツは魔晶石を生み出す魔道具じゃ。眷族の身体からマナを吸い取り、箱に貯めて結晶化させる。大気中のマナを吸収循環させる道具を 対魔物用にカスタムしたんじゃ。凄いじゃろ?」
「よく分からないけど、凄そうっす!マナを吸収すると、バンパイアはどうなるんすか?」
「私の計算では、乾涸びるはずじゃ。まぁ、用心の為に、銀のナイフくらいは持っておけ。」
「わかったっす!」
だがハンスのナイフを使うことは無かった。リンドーの計算通り、バンパイアは乾涸び、砂のように崩れていった。
「凄いっす!」
「ふむ。ちと時間がかかるのが難点じゃな……ブツブツ……」
「いつまでそうしているおつもりですか?行きますよ。」
コバルトが急かす。他の眷族は既に壁のシミになっていた。




